押本龍一－私の出会う光景－第236回：呪われたオールド・ズー・トレイル / Haunted Old Zoo Trail

押本龍一、東京品川生まれ。
1982年、2年の留学予定で渡米。1984年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更し広告写真スタジオで働き始める。1991年フォトグラファーとして独立。1995年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移しエンターテインメント関係の撮影中心に活動。2018年より日本とアメリカの二重生活。近年は旅写真にも力を入れている。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

ロサンゼルス市最大の市営公園であるグリフィスパークのほぼ真ん中に位置するオールド・ズー・トレイルを歩きに来ると、ホーンテッド・ヘイライド（Haunted Hayride）と呼ばれるハロウィン・イベントの飾り付けが既に始まっていた。

9月末のロサンゼルスの朝は清々しく、私は運動を兼ね、グリフィスパークにあるオールド・ズー・トレイルへカメラを持って出かけた。パーク南東の入り口からクリスタル・スプリング・ドライブを北上して行きパーク内のゴルフ場南に差し掛かかると、そこから西へ走りスプリング・キャニオンという駐車場に車を停めた。4,210エーカー（1,704ヘクタール）と言われる大きなパークにあって、私が穴場だと思う駐車場の南には、1912年に開園し1966年に閉園した動物園跡が残され、ピクニック・エリアと地図上で記されている。私はピクニック・エリアを通り抜け、南の丘陵地帯にあるループトレイルのオールド・ズー・トレイルを歩く予定だった。カメラリュックを背負いピクニック・エリアに足を踏み入れると、ハロウィン・イベントであるホーンテッド・ヘイライドの飾り付けが始まっていた。ここには5年前の10月中旬、イベント中の昼間に来たことがあったが、9月中にハロウィン・イベントの準備が始まっていたのだ。私はピクニック・エリア付近からしばらく抜け出せず、5年前見た飾り付けと比較しながら写真を撮った。

スプリング・キャニオンという駐車場からハロウィン・イベントの舞台裏が見えた。

10月になるとハロウィン一色となるなーと思ったステージ。

LAの青い空の下、何でも色鮮やかに見える。

朝の光を浴びたジャック・オー・ランタンの人形と標識。シグマのHPで、「望遠レンズの醍醐味」が味わえるレンズと紹介されているレンズには、天候も良く撮影環境が良すぎたかもしれない。

イベントでは、暗くなってからここを潜って会場に入る。

ここはハロウィン・イベントと言うよりルート66沿いの再現のようで、カラーモードはシネマを選び、古き良き時代風に現像してみた。

この辺からホーンテッド・ヘイライドらしくなる。

イベント中の夜はライトアップされ、雰囲気が全く違ってくるだろう。

ホーンテッド・ヘイライドが半周するピクニック・エリアは舞台裏になる。

小さな子どもが怖がっていた木漏れ日で存在感を増した人形。

朝の太陽がキャッチライトになった人形の瞳にフォーカスした。等倍で見ると久しぶりに多用した24mmの切れ味に驚く。

大部分が影になった人形の顔は、窪んだ目の回りがよく見えないのがおもしろい。持参したストロボで影を起こすことはせず、光が当たっている前歯にフォーカスした。

テントから顔を出す人形の目にはキャッチライトが描かれ、木漏れ日が差し込むこの光景をさらに印象的にしていた。

小さな家は、ライトアップされた夜にはかなり怖いかもしれない。

かつて動物が飼われていた場所。夜にライトアップされると熊が飛びかかって来るように見えそうだ。

イベントでは見られない角度から撮影できるのも楽しい。

連なる檻の横は、この手前から下ってくるローワー・オールド・ズー・トレイルの一部になっている。

私は、オールド・ズー・トレイルから一旦逸れ、ホーンテッド・ヘイライドの最終地点まで歩いてみた。

実存する動物ではないようだが、人間を襲った巨大な生き物の人形に迫力を感じた。

パーク内で見かけるから何とも思わないが、何処かの森の中で遭遇したら奇妙だろう。

ホーンテッド・ヘイライドの最終地点は、車を停めたスプリング・キャニオンの駐車場近くだった。

ホーンテッド・ヘイライドの最終地点まで下った後、私は連なる檻まで引き返し、ローワー・オールド・ズー・トレイルを登った。

ローワー・オールド・ズー・トレイルを登って行くと大きな独立した檻がありその中に入り、トレイルに向かって撮影。

ローワー・オールド・ズー・トレイルに大きな木が立っていた。ここからさらに登ってアッパー・オールド・ズー・トレイルを歩く予定だったが、ここら引き返した。

トレイルを下りピクニック・エリアに戻ると、日影だったので撮影を後回しにした人形に光が当たっていた。

この日、予想外の光景に出会った私は、トレイルの一部と見なされるピクニック・エリアに捕まり、沢山の小道具が使用された撮影所の様なハロウィン・イベントの仕掛けを撮影した。1912年に開園した動物園のプロデューサーには動物テーマパークをつくる夢があり、入場者数は年間200万人に達したが、動物園の施設環境への批判により1966年に閉園した。今日、動物園跡に動物はいないが、毎年ハロウィン・シーズンには大勢の訪問客が訪れる。公園内において隠れ家的な場所だと私が思っていた場所は、多くの映画等の撮影が行われ、人を惹き付ける何かがあるようだ。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ（X3F）を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。