第230回:アーチーズ国立公園・Arches National Park
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
1982年、2年の留学予定で渡米。1984年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更し広告写真スタジオで働き始める。1991年フォトグラファーとして独立。1995年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移しエンターテインメント関係の撮影中心に活動。2018年より日本とアメリカの二重生活。近年は旅写真にも力を入れている。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第230回:アーチーズ国立公園・Arches National Park

日の出前、ユタ州東部に位置するアーチーズ国立公園内にあるデリケート・アーチ(Delicate Arch)に登り着いた。トレイルから誤って外れ、危ない思いをしてここまでたどり着いたが、東の空は雲に覆われ、「残念だが朝陽が当たることはないだろう」とこの時思った。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/40 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:14mm

6月下旬、ユタ州にあるアーチーズ国立公園を訪問した。アメリカの学校は既に夏休みに入り人気のある国立公園は大混雑が予想されたが、この時期しか時間が取れなかったので、混雑を覚悟してアーチーズへ向かった。朝2時半にLA出発、州間高速道路15号線で北東へ走る。カリフォルニア州から、ネバダ州を越え、アリゾナ州の北西端を少し走り、ユタ州に入ると空に雲が多くなり、15号線から州間高速道路70号線に乗り換え、東へ進むに連れ雲が厚くなった。

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ユタ州に来て州間高速道路70号線沿いのレストエリアに立ち寄る。広大な景色は霞んで写真撮影にはいい条件ではなかったが、犬連れの男性がいたのでいいアクセントになってくれた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 28mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:28mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:22.57MB

LAから約1,150kmの距離を走り、暗くなる前にアーチーズ国立公園に到着した。エントランスのパークレンジャーはもう帰り、公園から出て行く車が次々と下りて来る。私は少しだけ公園内に入った後、翌日時間があったら撮影に行こうと思っていたアーチーズの西に位置するキャニオンランズ国立公園(Canyonlands National Park)へ雰囲気を掴みに入った後、モアブ(Moab)で夕食を取り、アーチーズに戻った。公園内のキャンプ場はフルだったので、翌朝に撮影したかったデリケート・アーチまでのトレイルヘッドであるウルフ・ランチのパーキング場に車を停めた。その夜は小雨が降り強風で車が揺れ、よく眠れなかった。日が昇る前、私と同じように車内で夜を越した車から出てきた人の話し声が聞こえた。すでに目が覚めていた私は車から出て、カナダから来た若者二人に続き、往復4.8km、高低差146m、Difficultと書かれたトレイルを歩き始めた。途中までライトを照らして歩いていた二人を見失い、トレイルが何処だか分からなくなった私は、自分の勘を信じて登って行き、デリケート・アーチが見える所までたどり着いた。デリケート・アーチ周辺には既に数人が到達していたが、そこからアーチまですり鉢のような岩の斜面を進まなければならない。ナショナル・パークで、滑って転げ落ちそうなこんな危険な所を、鎖などの手がかりなしに歩かせるはずもなく、私はトレイルから逸れてしまったことにようやく気がついた。しかし、そこからまた引き返す時間がもったいなかったので、すり鉢のような斜面の右手からデリケート・アーチに近づいた。

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すり鉢のような岩の斜面は、滑って転げ落ちそうな危険な場所だった。ここからアーチに歩いて行ったら大怪我をしたかもしれない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60 秒 | 絞り値:F3.5 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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すり鉢のような岩の斜面を避け、デリケート・アーチの裏に出たが、ここも安全とは言えない場所だった。

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やっと平らな場所に出て、2,000以上のストーン・アーチの中で最も人気のあるデリケート・アーチをやっと目の前にした。

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諦めかけた朝陽がデリケート・アーチを照らし、赤いサンドストーンがさらに赤くなった。全体の高さは18m、開口部は14m。

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帰りは歩きやすい正規のトレイルを下った。

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朝陽が差してはいたが、北の空は真っ暗だった。

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前夜降った雨で水たまりができていた。ここを歩くだけでも貴重な体験だ。

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赤い岩の隙間から生えるジュニパーツリーに朝陽が当たる。

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トレイルから少し逸れた所に、1650年から1850年の間に彫られたユテ族(Ute)のペトログリフが見られる。

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トレイルヘッドのウルフ・ランチ。ここには、1900年代初頭、ジョン・ウェスレー・ウルフ(John Wesley Wolfe)により建てられたワンルームキャビンが残されている。 6人の家族が5.2m×4.6mの小さな家に住んでいた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:ものが | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:36mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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トレイルヘッドに戻ると、雨が一時的に強く降って来たので車で一休みしたが、公園内で一番見たかったデリケート・アーチに朝陽が当たった写真が撮れたのはラッキーだった。その後、ウルフ・ランチから公園内のメインロードのアーチーズ・シーニック・ドライブを北上しながら、幾つかのアーチに立ち寄った。シーニック・ドライブの北端まで行くと、パーキング場がフルで、かなり待ってから車を停め、デビルズ・ガーデン・トレイルを途中まで登ったが、雨が強くなった時点で引き返した。シーニック・ドライブの北端からは南下し、ザ・ウインドウズ・セクションと呼ばれるエリアに立ち寄った。ここも車が一杯で少し離れた路肩に車を停め、ノース・ウインドウと、サウス・ウインドウを撮影し、混雑する公園から逃れる様に出た。

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サンド・デューン・アーチへの短いトレイル入り口。

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サンド・デューン・アーチへは、ビーチのような赤い砂の上を歩いて行く。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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サンド・デューン・アーチは、周辺のビーチのような赤い砂が特徴だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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サンド・デューン・アーチを見た後は、歩いてブロークン・アーチへ。片道1,000mと少しの歩き。

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ブロークン・アーチは、崩れているわけではなかった。大きな洞穴の下から見上げているような気になった。

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ブロークン・アーチの裏側から。大人も子供もここに来るとはしゃいでいた。

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スカイライン・アーチまでパーキング場から往復650mほど。

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トンネル・アーチは、アーチというより岩に空いた空洞のように見え、その向こうに見える岩にフォーカスした。

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パインツリー・アーチ。その名の通り、パインツリーを手前に入れて撮影。

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長さ88.4mとされるランドスケープ・アーチ。

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ランドスケープ・アーチからは、急な岩場を登った。

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岩場を登り切ると雨が強くなってきたのでここで引き返した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 70-200mm F2.8 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:120mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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ノース・ウインドウとサウス・ウインドウ。二つの大きなアーチを同時に撮影。その大きさは、周辺にいる人を見れば分かるが巨大だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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覚悟はしていたが、この日のアーチーズ国立公園は大混雑だった。夏休み期間中は、朝9時を過ぎると公園に入るのに30分ぐらい待つようだから、デリケート・アーチ等の人気のある場所へは、日が昇る前に到着しておかないと人を避けた写真の撮影は難しい。この日は思った以上に動き回れ、周辺の景色も堪能したので、キャニオンランズ国立公園には立ち寄らずにユタを後にした。次に来る機会があれば訪問客の少ない冬にしたい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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