第224回:神武寺-鷹取山ハイキングコース/Jimmuji-Takatori Yama Hiking Course
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
1982年、2年の留学予定で渡米。1984年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更し広告写真スタジオで働き始める。1991年フォトグラファーとして独立。1995年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移しエンターテインメント関係の撮影中心に活動。2018年より日本とアメリカの二重生活。近年は旅写真にも力を入れている。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第224回:神武寺-鷹取山ハイキングコース/Jimmuji-Takatori Yama Hiking Course

神奈川県横須賀市にある鷹取山は垂直に切り立った岩石が特徴で、群馬県の妙義山にたとえられ、「湘南妙義」の別名がある。辺り一帯の鷹取山公園にはいくつかの岩石がありロッククライミングの練習場としても知られ、岩に登るには鷹取山安全登山協議会への登録が必要だ。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:30mm

関東の桜が見頃になった4月初旬、桜を見ながら登れる低山を探し、日本在住アメリカ人のブログから逗子市と横須賀市にまたがる「神武寺-鷹取山ハイキングコース」を知った。そして、神武寺の表参道に桜並木があることを確認した翌日、私は鷹取山へ出かけた。当日、神武寺の表参道の桜並木を通り鷹取山公園まで登りたかったので、表参道に近いJR東逗子駅で下車をすることにした。初めて下りる駅のホームからは桜の木に張られた紐から垂れて泳ぐ鯉のぼりが見え、鯉のぼりと桜を撮影してから神武寺の表参道へ向かった。この朝、空は雲に覆われ森の中を登る神武寺の表参道はとても暗かった。期待した桜並木にほとんど桜はなかったが、神武寺境内までの表参道は深い山奥にいるようで周辺が開けた住宅地であることを忘れさせてくれ、神武寺まででも十分魅力的なハイキングコースだった。

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地図上で「東逗子ふれあい広場」と記されているJR東逗子駅横の広場。この朝、空は雲に覆われ天気は今ひとつだったが、空に微かな青色が見えるアングルを見つけて撮影した。コンバージョンレンズ(FT-1201)を使用。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:60mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:19.28MB

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表参道を登り始めるとすぐに竹藪が広がり、最近イノシシが多く出ると聞いていたので、竹藪から出て来そうな気配を感じた。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:19mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:19.53MB

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参道脇の少し高い位置に鎮座する約300年前に作られた車地蔵。周囲の自然環境を伝えたかったので、右画面に木漏れ日が当たる木を入れた。カメラを三脚に据えドライブモードをセルフタイマー2秒で撮影。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/50 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:19.80MB

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どこが桜並木なのか分からなかったが、桜の花が落ちていた区間は深い森だった。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:16.91MB

ハイキングコースは表参道を登ると、神武寺境内の横を通っても境内を通り抜けても先へ登れ、私は境内に入ってみた。境内は表参道と同様に鬱蒼とした森の中にあって神秘的な空間だったが、この日のゴールである鷹取山公園へ少しでも早く到達したかったので長居はしなかった。神武寺境内を通り抜けると傾斜はきつくなり、本格的な登山道のような区間が続いた。岩が突き出た山道を登ると視界が開けた場所に出て、ハイキングコース下の東逗子トンネルを通る横浜横須賀道路が見え、そこで反対方向から歩いて来たアメリカ人3人組と出会った。彼らは「ブッタを探している」と言い、京急の神武寺駅から登って来て、方向を間違えたと思い引き返して来たのだった。私は「僕もここは初めてだけどその方向へ行来ますよ」と告げ、彼らに方向を教えた。先に歩き出した彼らとは鷹取山の頂上で再会し、彼らの呼ぶ「ブッタ」である弥勒菩薩尊像の前まで少しの時間差で移動し、「お互い目的地に到達出来てよかったね」と称え合って別れた。横須賀米海軍施設が近いこのハイキングコースはアメリカ人が多く来るようで、出会った3人のうちの1人は横須賀在住で奥さんがベースで働いていると言っていた。

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境内にある何の木だか分からなかったので、「なんじゃもんじゃ」と名付けられた神奈川の名木100選に選ばれたホルトノキ。樹齢は推定400年。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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神武寺境内を過ぎると登りがきつくなる。足を止め、落ちていた一輪の赤い椿の花にフォーカスした。この頃から晴れ間が出てきて木漏れ日に強さが出てきた。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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岩が突き出たワイルドなトレイルから遠くの景色を眺めるアメリカ人3人組。出会った3人のうち1人は横須賀在住で、あとの2人はアーカンソー州から遊びに来たそうだ。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:22.18MB

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鷹取山へ近づくと鎖を頼りにする区間もあり、低山と甘く見ないほうがいいハイキングコースだ。ここまで肩に担いでいた三脚をカメラリュックに外付けし、dp2を首にかけて鎖場を通り越した。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F4.5 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:16.11MB

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見上げると木々の間から岩石の壁が見え、鷹取山へ近づいたと思う。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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鷹取山公園に到達するとまずその見晴らしの良さにびっくりする。標高僅か139mの鷹取山には展望台が建っていて、この日は風が非常に強くのんびりと景色を眺める雰囲気ではなかったが、東京湾、相模湾、その間に突き出た三浦半島を見渡す360度の景色は絶景だ。鷹取山は明治中期から昭和初期まで石材を採取し、垂直に切り立った岩石が形作られた。切り出された凝灰岩は柔らかく加工しやすく、又耐火性もあり建築土木用材に利用された。名前の由来は、室町時代の武将・大田道灌が、鎌倉から訪れて鷹狩りをしたことによるという言い伝えや、高い所を示す語「タカットー」の原意が「タカトリ」となり、鷹取の文字をあてたという考えもある。横須賀市の彫刻家、藤島茂氏が昭和35年から約1年かけて製作した高さ約8m、幅約4.5mの弥勒菩薩尊像も期待以上の石像だった。石像前の桜は見頃で、参道に期待した桜が見られなかった分、感動的な美しさだった。

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森の中から出るといきなり垂直に切り立った岩石の壁が聳え立ち、そこを登る独りのクライマーがいた。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:34.19MB

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標高139mの鷹取山に登る。平日だったのでクライマーは少なかったが、週末はいたる所にクライマーの姿が見られそうだ。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:27.90MB

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練習には丁度いい高さの岩石。コントラストを上げ彩度を少し落として岩石の質感を描写した。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:32.04MB

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インカ帝国の遺跡にでも来たような気がする空間があった。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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岩石の横を通り、弥勒菩薩尊像を探す。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:22.66MB

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青い空と桜、そして弥勒菩薩尊像。青空と桜の色を損なわないように露出を決めると石像にできた影が強すぎた。1台のフラッシュをカメラにつけ(制御用フラッシュ)、三脚に据え付けたもう1台のフラッシュ(発光用フラッシュ)を石像の正面に置きフルパワーで発光させた。(ワイヤレスマニュアル撮影)

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:25.42MB

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見上げると青空と見頃の桜、思わず撮影した。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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この日は風が強く、風が吹き抜ける度に桜の花びらが落ちてきた。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F4.5 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:25.80MB

弥勒菩薩尊像前で花見をした私は、グーグルマップで見つけた「鷹取山仏像壁画群」を探し、桜並木がある北側から鷹取公園へ登る舗装された道を少し下り、鷹取山の北の森へ入った。そこには誰が刻んだのか分からないが、なかなかいい仏像壁画が存在していた。鷹取山の下山コースは、京急の追浜駅へ向かうか神武寺駅を考えたが、朝見た鯉のぼりを青空の下で撮りたくなり登って来た表参道を下りJR東逗子駅へ向かった。

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鷹取山はシダ植物が多く生息している。白い花びらが落ちずにシダの上に乗っていた光景を風で飛ぶ前に撮影。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:15.84MB

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落書禁止のサインを見たが、この仏像壁画は落書きとは思えない。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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午後の日差しが差し込む鷹取山の北側は神秘的な雰囲気があった。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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温かい午後の光が差し込む神武寺薬師堂越しに境内を見る。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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阿弥陀三尊が安置されている神武寺の客殿宝珠殿は立入禁止区域に建つ。表参道でもあるハイキングコースから見下ろすと、午後の光に青い葉が輝いていた。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:24.15MB

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この辺りの林業は聞かないが、表参道脇に玉切り丸太が積み上げられている。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:19.71MB

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JR東逗子駅前の広場に戻リ、青空を見上げて広角レンズで鯉のぼりを撮影。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:13.10MB

凝灰岩から成る鷹取山は、かつて女人禁制の山岳信仰の霊場だった。今はアクセスの良いハイキングコースで夜景スポットとしても知られているが、今でも大きな岩が突き出た区間を歩いた後は、昔の山道はとかなり歩きづらかったことが容易に想像できる。次回来る機会があれば違うルートから登り下りしてみるつもりだ。この日持参したカメラ機材は、焦点距離の異なる単焦点レンズをもつdpシリーズから全てのカメラボディ(4台)と2台のフラッシュ(ELECTRONIC FLASH EF-630)、それに三脚。軽快な山歩きと撮影を楽しんだ。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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