押本龍一－私の出会う光景－第235回：ザ・グレート・ウォール・オブ・ロサンゼルス・THE GREAT WALL OF LOS ANGELES

押本龍一、東京品川生まれ。
1982年、2年の留学予定で渡米。1984年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更し広告写真スタジオで働き始める。1991年フォトグラファーとして独立。1995年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移しエンターテインメント関係の撮影中心に活動。2018年より日本とアメリカの二重生活。近年は旅写真にも力を入れている。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

ロサンゼルス郡ノースハリウッド地区にある洪水制御水路の西側の壁に、ハーフマイル(805m)に渡り、民族の多様性を反映した壁画が描かれている。「カリフォルニア移民」と題されたこの壁画にも多様な民族性が見て取れる。

ロサンゼルス郡のサンフェルナンド・バレーに構築された長さ13マイル(20.9 km)のタハンガ・ウォッシュ（Tujunga Wash）は、ロサンゼルス川に注いでいる洪水制御水路で、Wash（涸れ川）と名付けられているのは、雨が大量に降った後だけ水が流れ普段は乾いているからだ。ノースハリウッド地区では水路の西側の壁に壁画が描かれ、その区間は、ザ・グレート・ウォール・オブ・ロサンゼルス（正式名称は、The History of California）と呼ばれている。1974年、洪水制御水路を管轄するアメリカ陸軍工兵司令部は、水路の壁面に壁画を描く（水路脇の公園と自転車道の整備を含む）美化計画を、アーティストのジュディ・バカに持ちかけた。2年後、アーティストと地元の若者たちのチーム（Mural Makers）が結成され、1976年夏にグレート・ウォールの制作が行われた。壁画は恐竜時代から1910年までが描かれ、その長さは300mに達し、その時点ですでに世界最長の壁画になった。その後、1978年、1980年、1981年、1983年の夏に再び壁画が描かれ、長さは805mに達した。

最後に描かれた壁画の北端部分から、南を見て脚立に乗り水路を撮影。

「障壁を破るオリンピックチャンピオン」と題された1948年から1964年のカリフォルニアを描いた区間の壁画の状態をチェックする作業員。

「障壁を破るオリンピックチャンピオン」に「市民権と財産を得るアジア人」、「インディアンの同化」、「芸術と科学におけるユダヤ人の業績」と題された壁画が続く。

黒人の音楽とロックンロールが生まれた時代が描かれた壁画。

高速道路とドジャース・スタジアム等の建設による立ち退きに抵抗したメキシコ系アメリカ人を描いた壁画。水路西側の高校の敷地に生息する木の影になっていたが色鮮やかだった。

平日のこの日、バイクパスを通る自転車は見なかった。

メッセージ性が強い壁画が目に焼き付く。

点検の車が洪水制御水路を走る。

1981年に描かれた1940年代のセクション。

日系アメリカ人とマンザナー強制収容所の壁画は、私の好きなシエラネバダ山脈が背景に描かれている。

1930年代を描いた壁画の向こうに授業が終リ帰宅する高校生達が見える。

アメリカの無声映画俳優、脚本家、監督、プロデューサーだったウィリアムS.ハートの世界初の西部劇映画といわれる「大列車強盗」（The Great Train Robbery）が描かれている壁。排水溝が空いた部分にあり、強盗犯がここに潜んでいるような気がした。

ウィリアムS.ハートの隣には、電球なしには映画はなかったということで、フイルムを持ったトーマス・アルバ・エジソンが描かれている。水路沿いの公園からフェンス越しに撮影。

第一次世界対戦がアメリカ人の生活に影響し、サイレント映画コメディアンであり一般市民の象徴であるチャーリー・チャップリンが全国キャンペーンに関与した時代の壁画。

壁画が描かれた洪水制御水路に沿って続く公園を歩き下校する高校生たち。

カラフルな壁画を見て木陰で一休みした。

1846年から1848年の間の米墨戦争（Mexican-American War）が描かれた壁画は、カリフォルニアはメキシコだったことを再確認させる。

最初の黒人新聞の発行者であるミフリン・W・ギブス、公民権運動家のメアリー・エレン・プレザントの肖像が描かれた洪水制御水路の南端辺りから水路の北側を撮影。

アメリカンリバーで金が発見されゴールドラッシュがはじまった。

ザ・グレート・ウォール・オブ・ロサンゼルスの北端をクロスするオックスナード・ストリートから洪水制御水路を見る。

乾いた洪水制御水路を見下ろす。テニスボールにフォーカスした写真は、モノクロにしてクリスピーに仕上げた。

洪水制御水路沿いの公園は手入れがよくされ、芝生にも水が注がれている。

犬と散歩に来た女性が立ち止まり壁画を眺めていたが、犬は画壁には興味がないようだった。

私は、1983年の夏に描かれた壁画付近の道路沿いの木陰に車を停め、オリンピックチャンピオンの壁画から気に入った壁画を撮りながら南端へ移動した。そしてスタート地点に戻り、オックスナード・ストリートから洪水制御水路を見下ろした。描かれた年代順に見て歩くには南端からスタートすべきだったが、駐車禁止区間もあり車を停めるには北端が便利だった。1976年の夏に描かれた壁画は、その後、1978年、1980年、1981年、1983年の夏に再び壁画が描かれ、長さは805mに達した。このプロジェクトはこれで終わりでなく、今後は、現在だけでなく、未来まで描かれていく計画があるようだ。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ（X3F）を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。