押本龍一－私の出会う光景－第212回：嵐が去った海岸

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

台風が通り過ぎた翌朝、神奈川県三浦郡の森戸海岸はまだ高波が押し寄せ、相模湾の向こうに見える富士山がいつもより身近に感じた。

夜中、台風でなかなか寝付けなかったが、早朝目を覚ますと雨は上がっていた。日の出前、私はサンダルを履きカメラバックを背負い海岸に出た。台風が通り抜けた海岸はまだ風が強く高波が押し寄せ、色々な物が打上げられていた。相模湾越しには富士山が見え、陽が昇ると快晴の日となった。今年の夏は暑くて日中ほとんど海岸に出なかった私は、この日はカメラと共に海岸を散歩することにした。

台風が去った森戸海岸の早朝。

高波が押し寄せた跡が残るボート。

高波で霞む葉山港。葉山港防波堤赤灯台の光が微かに見える。

防波堤に高波が押し寄せる海岸。朝陽が届くと富士山が鮮明に見えてきた。

老人が台風の去った森戸海岸を眺めていた。

冬にはたくさんのワカメが吊るされる場所にも海水が押し寄せていた。

私と犬の散歩コースの海岸の道も海水に満たされ、この朝はまだ台風の影響下だった。

森戸神社の御神木である飛柏槙（びびゃくしん）が生える森戸川河口に普段より強い波が押し寄せていた。この飛柏槙は元暦元年（1184年）、源頼朝が参拝時、三島明神から種子が飛来し発芽したものと伝えられる。

朝陽が差し込む森戸川河口付近に掛かるみそぎ橋まで強い波が押し寄せる。

この時期海岸に置かれていた各大学のヨットが台風を避け、森戸神社の駐車場に移されていたが、数時間後ヨットは海岸に戻された。

森戸神社から一旦自宅に戻り朝食を取った後、森戸海岸から海岸線を南へ歩いた。近くに住んでいてもほとんど立ち寄らない真名瀬（しんなせ）漁港へ下り、晴天下、堤防に押し寄せる高波の音に耳をしばらく傾けた。岩礁が広がり天然記念物指定エリアに指定されている柴崎海岸沿いの道路は海水で濡れ、時より押し寄せる高波を避けて歩いた。柴崎海岸からは人の少ない一色海岸を経て小磯の鼻と呼ばれる小さな岬まで歩き、岬の先端の葉山スコリアと呼ばれる岩場で、押し寄せる高潮を見ながら風に吹かれ富士山をしばらく眺めた。