第211回:強風の観音崎へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第211回:強風の観音崎へ

フランス人のF.L.ヴェルニーの設計により建設された観音埼灯台(1868年9月に完成)は日本で初の洋式灯台だ。現在の灯台(1925年6月1日に完成)は3代目だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:35mm

朝から風が強く雨が降るのも時間の問題だった9月下旬、東京湾に突き出した三浦半島の東端である観音崎へ向かった。強風が吹き抜ける馴染みのない横須賀海岸通りを東へ走り、道が大きく右に曲がると左手に小さな漁港があり、右手に「走水神社」と書かれた小さな看板が立っていた。そろそろ休憩したかった私は看板に誘われ、日本武尊(やまとたけるのみこと)と弟橘媛命(おとたちばなひめのみこと)を御祭神とする走水神社(はしりみずじんじゃ)に立ち寄った。昔は斜面だった土地と考えられる境内は三段になり、本殿は1番上の小さな土地に建ち、駐車場は2段目の横にあったので、車を停めた後境内の正面まで下りて境内の石段を登った。

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雨が降り出しそうなどんよりとした灰色の空、境内の入り口となる鳥居が切れ味よくシャープに写ってくれた。

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本殿が木々に隠れてよく見えないので大きくはないが奥行きを感じさせる境内。

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石段を登っていくと本殿前の斜面にご神木が立っている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:曇り | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F2.8 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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本殿は強風が吹き抜けていた。

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本殿の裏横にある色鮮やかな水神社。走水は水との縁が深く水の化身水神として河童伝説もある。

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水神社がある本殿裏は岩壁で神秘的な空気感が漂う。

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本殿が建つ境内の左横から境内の裏山へ通じる小道を登った。裏山には西暦110年10月、日本武尊一行が東征の途中、上総国に渡る際、東征成功の祈願をしたと伝えられる祠の跡地があり、更にその上には、諏訪神社、神明社、須賀神社の祠が建ち並んでいる。そこに至るまでの登り道は鬱蒼とした森の中の鎮守の森という感じで、天候に恵まれなかったこの日、境内で数人の女性を見かけたが裏山に人気はなく地方の山奥に来たような気がした。

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古代稲荷社跡。

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左から諏訪神社、神明社、須賀神社の祠が建ち並んでいる。

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3社が建つ同じレベルから撮影。

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細い注連縄が風に揺れていた。

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2段目の境内にもご神木があった。

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裏山から境内へ戻ると一匹の猫がいたが、神社に住み着いているようだった。

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神社の前の住宅街を抜けると漁港だ。

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漁港で見かけたレトロな建物。

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走水神社からは3分ほど車で南東へ走り、観音埼灯台の駐車場に車を停め灯台まで上った。観音埼灯台は1868年9月(明治元年)に完成し翌年1月1日に点灯されて以来、浦賀水道を照らし続けてきた。初代灯台は1922年4月(大正11年)の地震により亀裂が生じ、翌年3月に2代目が再建されたが5ヶ月半後の9月1日の関東大震災で崩壊し、現在の灯台は1925年6月1日に完成した3代目になる。この日は強風のためか、この時間帯に灯台へ上る人はいなかった。

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観音埼灯台へ上る道。

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3代目の灯台の高さは19m。

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灯台内部につながる入り口の壁にしっかりと刻まれた文字。

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灯台の螺旋階段。

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霧や雪により視界が不良になった場合、音を発する霧信号に使用された霧信号吹鳴器。

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灯台のライトは緑色に見えた。観音埼灯台は1989年5月より遠隔監視に切り換えられ、灯台守はいない。

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灯台から顔を出したが物凄い強風で周辺に人は見えなかった。

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誰にも会わなかった観音埼灯台から東京湾沿いを南へ走り、道が大きく右へ曲がった所にあった東叶神社の駐車場に車を停めた。神社に立ち寄るつもりはなかったが、境内前に立つ看板に、幕末に勝海舟が断食した場所があると書かれてあったので、境内を通り裏山に登ってみた。神社前は入江になっていて対岸には西叶神社があり、立ち寄ってみたが本殿は大規模な修繕工事中だった。

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御祭神は誉田別命(第15代応神天皇)の東叶神社、鳥居を潜り境内に入り振り返る。入江の対岸には西叶神社がある。

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日本の使節団が太平洋を渡るための船、咸臨丸が浦賀造船所で修理されている間、乗船予定の勝海舟が待っている間断食をしたと言われる場所。ヤブ蚊が多く長くはいられなかった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:曇り | シャッター速度:1/4 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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大規模な修繕工事中だった西叶神社周辺はレトロな店舗が建ち並ぶ。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
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レトロな建物がある浦賀まで来ると雨が降り出した。この日は天荒に恵まれなかったが、晴れの日は東京湾も違って見えるに違いない。また機会を見つけてこの周辺を散策したいと思う。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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