第203回:沖縄本島北端へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第203回:沖縄本島北端へ

細長い沖縄本島の最北端である辺戸岬(へどみさき)に来ると突き出した岩の先に青い海が広がっていた。隆起したサンゴ礁の断崖に打ち寄せる荒波、地面から突き出した鋭い岩、被っていた帽子が飛ばされそうになる強風、沖縄本島の持つ自然エネルギーを感じた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm

5月下旬、羽田発那覇行きの飛行機は定刻より30分遅れで飛び立った。日本で国内便に乗るのはおよそ15年振りのことで、清潔な機内とフライトアテンダントの親切な対応は、アメリカの国内便を多用する私には感動ものだった。那覇空港に無事到着し、空港の外に出ると36年振りの沖縄本島はとても蒸し暑かった。レンタカーを借り、空港から14km北の浦添市にある宿泊先の一軒家へ向かった。空港近辺の道は広くて走る車も多く、ロサンゼルス空港周辺の景色に少し似ていると思った。長い滞在予定のために借りた一軒家は、私が長年住んだLAの家と築年数がほぼ同じで造りも良く似ていてアメリカに戻ったような気になった。この日の夕食は近所の居酒屋で地元料理と泡盛を楽しんだ。翌朝、直線距離で長さ110kmほどの沖縄本島の最北端へ向かった。借りた家から島の最北端である辺戸岬までは、高速道路を使わず約105kmを2時間半かけて走った。岬の駐車場に到達すると数台の車が停まり、観光客はまばらだった。かつてこの地は沖縄海岸国定公園に含まれていたが、2016年に33番目の国立公園として指定された「やんばる国立公園」に編入された。「やんばる」とは「山々が連なり森の広がる地域」を意味する。

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辺戸岬から東岸の岩壁を望む。その向こうには「やんばる」の意味である「山々が連なり森の広がる地域」が見える。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:62mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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険しい地形の岬に数体の仏像を見かける。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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岬先端は岩が突き出しその先は断崖絶壁だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:16mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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険しい地形にあって、その容貌に心が和む「ヨロン島・国頭村友好記念碑」。日差しは強烈だったが、白い記念碑の質感がよく描写された。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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1972年沖縄返還を記念して建てられた「祖国復帰闘争碑」。沖縄が日本に復帰する前、ここは日本に一番近い場所だった。

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辺戸岬からは、「やんばる国立公園」で一番の人気スポットだと思われる大石林山(だいせきりんざん)へ向かった。ここは琉球の国土創成神のアマミキヨが最初に作った聖地といわれ、安須杜(アシムイ)と呼ばれている。駐車場に着くと車を停め、まだ新しい建物で入場料を払いマイクロバスに乗り込み山を上り、トレイルのスタート地点でバスを下りよく整備されたトレイルを歩き始める。2億年前の石灰岩層が隆起し雨や風で侵食された岩山と亜熱帯の森は、気温が高かったせいもあるが、足元に熱い地球のエネルギーを感じ、眠っていた体内のエネルギーが呼び起こされてゆく気がした。

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大石林山のトレイルでまずガジュマルにレンズを向けた。

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孫悟空が生まれた岩山をイメージして「悟空岩」と名付けられた岩山は、2億年前の地殻変動で隆起した石灰岩が長い年月をかけて侵食されて今の形になった。

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人の顔のように見える岩。モノクロームにして岩の質感を強調した。

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太陽の光が岩壁にあたりパワーが集まるといわれる「石林の壁」と呼ばれるパワースポットに石が置かれていた。

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岩の上から森を見渡しているように見える岩は、「守り猫」と呼ばれる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:400mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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トレイルから辺戸岬、太平洋と東シナ海が一望出来た。

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彫刻作品のような「骨盤石」と呼ばれる岩。

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トレイルから見えた祈りの場所は侵入禁止だった。

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常緑のつるぎ性樹木、ガガイモ科のサクラランの花。

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強い生命力を感じる岩間から林立するソテツの群落。

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薄暗い亜熱帯の森に生息するガジュマル。中心部に木漏れ日が差し込み、神秘的だった。

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亜熱帯の森から視界が開けた部分から青い空と海が見えた。

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日本最大級の巨大ガジュマルである御願(うがん)ガジュマル。御願とは沖縄の方言で願いや祈りの意味。

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2億年前の石灰岩層が隆起し侵食されたシノクセ、アフリ、シジャラ、イヘヤの4つの岩山が連なる聖地、大石林山には40箇所以上の御願所(拝所)があり、それらの一部を見るには専門ガイドによるガイドツアーに参加する必要がある。今回はガイドなしで歩いたが、専門ガイドに案内してもらうとさらに深い世界が見えたかもしれない。私は施設内のレストランでランチを取った後、特徴のあるセメント瓦が目を引いた集落に立ち寄った。沖縄は台風が多く、戦後、被害が多い茅葺き家からセメント瓦が多くなったが、最近はフラットな屋根も増えているようだ。

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古い民家は人が住んでいるのか分からなかった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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黄色に塗られた屋根の頂上が集落で一際目立っていた。

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集落には建物も壁もコンクリート製が多く見られた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:28mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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辺戸岬からはゆっくり南下し、日没は宿泊した家の約9km手前にあり、アメリカンビレッジと呼ばれる大きな商業施設の先にあるサンセットビーチで迎えた。北の嘉手納基地と南の普天間基地の間に位置するアメリカンビレッジは、埋め立てた土地に広がり、アメリカによく見かけるような建物と大きな駐車場がある。ビーチには米軍基地の関係者も多く、日本と言うよりアメリカのイメージに近い場所に見えた。同時に、自然豊かな島の北端から来たのでアメリカンビレッジ周辺はとても人工的に感じたが、サンセットは美しかった。

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午後の西岸を南下した。潮の匂いがする眩しい光景はモノクロにして調色は青を選んだ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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夕陽が輝く水面とシルエットになった少女達は、周辺に人工的な施設があることを忘れさせてくれた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/2500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:227mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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水平線に雲がかかっていたが、まずまずのサンセットになった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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36年ぶりの沖縄本島、関東地方から来るとやはり蒸し暑く感じた。もう梅雨に入っていたが、しばらく雨の心配もなさそうなので今回はゆっくり時間をかけて島を巡れそうだと思った。そして、この日の夕食も地元料理に泡盛だと決めた。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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