第201回:春の鳩ノ巣渓谷から数馬峡谷を歩く
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第201回:春の鳩ノ巣渓谷から数馬峡谷を歩く

昭和橋から多摩川を見下ろす。天気に恵まれた子供の日、奥多摩駅から近い氷川渓谷には大勢の人が訪れていた。この日は温度も上がり、水面に太陽が反射した眩しい光景は初夏のようだった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm

5月5日の子供の日、大多摩ウォーキングトレイルの鳩ノ巣渓谷から数馬峡谷を歩くため、一番バスに乗り、電車を3回乗り換えて青梅線の鳩ノ巣駅へ到着したのは午前9時過ぎだった。立川から奥多摩行きの青梅線車内は大混雑していたが、途中の駅でかなりの人が下車し、無人駅の鳩ノ巣まで来ると乗客の殆どは座っていた。鳩ノ巣駅では20人程の人が下り、それぞれの方向へ消えて行った。私は多摩川に掛かる雲仙橋を渡り周辺を散策した後、橋を引き返して西へ歩き始めた。江戸時代、大火事で荒廃した江戸復興のため奥多摩から大量の木が伐採され木材が多摩川を通し江戸に運ばれた。「江戸期、ここには上流から一本流しで来る丸太の貯木場があり、飯場小屋があった。 魚留滝(ナルタキ)の上の飯場に祭った水神社の森に、二羽の鳩が仲睦まじく巣を営んだ様子が人々の心を和ませ、いつしか鳩の巣の飯場と呼ぶようになり、これが地名になったという。魚留滝は江戸末期の大洪水で崩壊した。」と奥多摩観光局の大多摩ウォーキングトレイル案内に書かれている。

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緑が濃くなった鳩ノ巣渓谷に掛かる雲仙橋。一駅手前で下車するとこの橋を渡って鳩ノ巣渓谷に差し掛かる。晴天だったので橋の白いフェンスの質感を失わないように注意した。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:15.87MB

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雲仙橋から鳩ノ巣渓谷を見る。広角レンズを活かし、橋のすぐ下から空まで入れて写せたので、奥深く続く渓谷を表現出来た。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:15mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:30.75MB

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雲仙橋を渡り切ると古い看板があった。現在この地図を見る人はほとんどいないと思う。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.5 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:17.69MB

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多摩川へ流れ込むクリークに掛かるレトロな感じがする水神橋。カラーモードはシネマを選びレトロな感じを表現した。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:20.33MB

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水神橋を渡ると小山があり鳥居をくぐって登って行くと「鳩ノ巣」という地名の由来である「玉川水神社」がある。小高くなったここは岩場で、木の根っこが岩場を這うように伸びている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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水神社越しに鳩ノ巣渓谷を眺める。シャドーになった祠を必要以上に明るくせず、この場の空気感を忠実に表現してみた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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水神社が建つすぐ横から多摩川を見下ろし、木漏れ日が当たる葉にフォーカスした。大洪水で崩落した魚留滝(ナルタキ)は下辺りに存在したのだろうか?いずれにしても危険な所だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:16mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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大きくはなないが神秘的な双竜の滝。木漏れ日が滝壺と滝をより美しく見せていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:19.06MB

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鳩ノ巣小橋を渡り西へ向かって歩き東の方へ振り返ると、渡って来た鳩ノ巣小橋が右奥に見える。多摩川の南岸の岩場に釣り人が一人いたが、ウォーキングトレイルからは釣り人はほとんど見なかった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:26.54MB

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鳩ノ巣小橋を渡るとウォーキングトレイルは森の中を歩く感じだった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:30.67MB

鳩ノ巣渓谷を歩いて行くと堤高30.3mの白丸ダムに到達する。このダムは調整池からの維持放流・観光放流を利用する発電所で、発電機はダム下にあり見えないが、ダムによって阻まれた魚の遡上(そじょう)を可能にする目的で平成13年に設けられた魚道を見学することが出来た。

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白丸ダム下を除き込む。魚道の一部が左奥に見える。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:26.06MB

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外部の魚道をアップで撮影。軽量でコンパクトな望遠ズームレンズを一本持って行くと写真の幅が広がる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:202mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:27.52MB

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昭和38年、下流にある東京都の多摩川第三発電所の調整池として建設された白丸ダムの全景。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:26.15MB

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螺旋階段を下りて施設の中に入り、螺旋階段を見上げて撮影。ディーテールは克明に写り、グラデーション豊かに仕上がった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:モノクロ-ム | シャッター速度:1.6 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:14.58MB

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魚が遡上する魚道。対象魚はアユ・サクラマス・ヤマメで、くぼんだ所は魚の休憩場。調色で青のモノクロームを選び、ヒンヤリとした空気感を表現した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1.6 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:16mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:16.43MB

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直射日光が当たる定礎版を正面から撮影。少しカリッと現像した。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:22.62MB

白丸ダムから西の、数馬峡と呼ばれる区域に入った。ダムによってせき止められできた部分の貯水池は白丸湖と呼ばれ、カヤックやスタンドアップパドルを楽しむ人の姿があった。木々に囲まれた遊歩道を歩き、舗装された多摩川西岸道路まで来ると太陽の照り返しで暑く、歩くのに飽きてきた頃、多摩川に掛かる昭和橋に到達した。電車の発車時刻まで時間があったので、奥多摩駅に近い奥氷川神社境内で休憩をした後、帰路に付いた。

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遊歩道はよく整備されていた。明暗の強い光景だったが、F値を開けて少しふんわりとした休日の雰囲気を出してみた。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F3.2 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:15.60MB

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光が届く範囲が限られている森にカヤックが積まれていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:17.52MB

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ウォーキングトレイルから白丸湖でカヤックやスタンドアップパドルを楽しむ人々が見えた。視界がもう少し開けた所もあったが、木陰から撮影した方がトレイルを歩いて来た雰囲気が出せた。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:17.14MB

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遊歩道を歩いて来る途中、ちょっとしたアクセントになった数馬西トンネル。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:12.38MB

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ウォーキングトレイルから逸れてしまい出会った石像。木漏れ日が差し込む部分にフォーカスした。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:15.53MB

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東京電力氷川発電所に流れ込むと思われる巨大なパイプ施設。自然の中にある人工物の不思議な存在感をコントラストを上げ強調した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:39mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:19.15MB

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終点地に近づいた昭和橋から多摩川を見下ろす。気温も高く川の中に入る人もいて、夏かと思う天候だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:30.81MB

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奥氷川神社境内の都指定天然記念物の氷川三本スギは、幹周7.5m、樹高50m 樹齢は700年。東京都で一番背の高い杉と言われているそうだが、注連縄が見えない位置から森の中に静かに生息する名のない杉のように撮影した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:59mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:26.86MB

この日は鳩ノ巣駅から奥多摩駅まで緩やかな上りのウォーキングトレイルを歩いたが、もう一つ手前の古里駅で下車しても良かったなと思った。ガイドマップによると8.3kmになるが、この日持参した機材(カメラ2台、レンズ4本、小さめの三脚)なら日帰りだったので問題なかった。夏場は持参する水分の重さもあるから奥多摩駅から下って来る方が楽でいいだろう。いずれにしても歩きの多い旅は機材選択をよく考えることが大切だが、それもカメラ好きには楽しいことではある。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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