5月の中旬、アリゾナ州フェニックスからインターステート・ハイウェイ10 (通称I-10)を南東に走ると、灰色の雲の切れ目から太陽が顔を出す。朝から時より小雨混じりの曇り空の下、ロサンゼルスから車を飛ばして来た私は、例年、4月の後半から6月のはじめにかけて咲くサワロサボテンの白い花を見るために、アリゾナ州のツーソンにあるサワロ国立公園に向かっていた。フェニックスから約100マイル(160km)ほど走ると、サワロ国立公園へのサインが見え、そのサインに従ってハイウェイ10を出る。この日は風が強く、トラクターが土煙を上げている農場を見ながら、アブラ・バレー・ロード(Avra Valley Rd)を西に少し行くと右手に小さな飛行場が見える。そこから、サワロ国立公園と書かれたサインに誘導されるままに左に曲がり、ノース・サンダリオ・ロード(N.Sandario Rd)をまっすぐ走り公園内に入いると、ビジターセンターまでの道は工事中で、20分以上も道で待たされる。雲が多く強い日差しは照りつけていないが、気温は華氏90度(32.2℃)を超え、道路工事のストップサインを持つ若者は、暑さで顔が真っ赤になっていた。車の中でただ待つのに飽きた私は、車から外に出てそばに見えていた白いサワロの花にカメラを向けた。カリフォルニア州からアリゾナ州に入ってすぐに所々に生息しているいくつかのサワロに白い花を見ていたが、今年は花を見るのにまだ少し早いかもしいれないという情報もあったので、近くで白い花を見られたことにまずは満足する。
使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:24.2 mm
使用機材:SIGMA SD14 + MACRO 70mm F2.8 EX DG | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/320秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:70 mm
米国のカリフォルニア州の南東部とアリゾナ州の南西部、メキシコのソノラ州にサワロサボテンは生息している。成長は遅く、はじめの8年で1インチから1.5インチ(25.4mmから38.1mm)ほどしか伸びず、生息している環境にもよるが、50年から70年で人間の腕のような枝が出はじめ、125年で成熟したサボテンになると考えられている。平均寿命は150年から175年の間で、200年以上も生息することもある。大きいものでは、重さは6トン、高さは50フィート(15m)にまでになるサワロ。35年目ぐらいで白い花が咲き始め、生涯、その花は咲き続ける。
1933年にナショナル・モニュメントに指定され1994年に国立公園となったサワロサボテンが密集しているサワロ国立公園は、ツーソンの街を挟んで東と西の地区に分かれている。私がこの日訪れた地区は、北のフェニックスから来ると近い方の西側に位置するツーソン・マウンテン・ディストリクトで、生息しているサワロサボテンは、こちらの方が密集しているとビジターセンターのパークレンジャーが教えてくれた。ビジターセンター (Red Hills Visitor Center) に到着したのは午後2時だった。今日の午後から日が暮れるまで西の公園を探索するつもりだと、私の行動予定をパークレンジャーに告げると、6マイル (9.7 km)のバハダ・ループ・ドライブ(Bajada Loop Drive)を車で走ることを勧めてくれた。勧められたループは、ホホカム・ロード(Hohokam Rd)という道からはじまり、サワロサボテンが密集して生息し、アメリカンウエストならではの大きな風景の中を走るダート道だった。道沿いにはよく整備された幾つかのトレールの入り口があり、私はワイルド・ドッグ(Wild Dog)というトレールを少しだけ歩いてみた。多くの資料に、サワロ国立公園での夏のハイキングは薦められないと書いてあるが、サワロが密集していても日陰はほとんどない。曇りぎみの5月のこの日でも歩き出すとすぐに汗が出てきてすぐに水を喉から流し込んだ私には、夏のハイキングはとても無理だと感じた。
使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/250秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:24.2 mm
使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/800秒 | 絞り:F2.8 | 焦点距離:24.2 mm
使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F9.0 | 焦点距離:24.2 mm
ダート道をゆっくり車で進むと、ゴールデン・ゲイト・ロード(Golden Gate Rd)に突き当たりループの通りに左へ曲がり少し走り、シグナルヒル・ピクニックエリア(Signal Hill Picnic Area)に立ち寄る。バーベキュー設備もあり、公園内のピクニックエリアはよく整備されている。そこからジグザグに緩やかに上っている短いトレール(Signal Hill Petroglyphs Trail)を歩き、サワロが生息している光景が一望できる丘に立ってみる。そこには、ホホカム族によって500年から1300年前に描かれたと考えられているペトログリフ(岩絵)が、その存在を岩で覆われている丘に示していた。
使用機材:SIGMA SD14 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/320秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:29 mm
使用機材:SIGMA SD14 + APO 70-200mm F2.8 II EX DG MACRO HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/320秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:118 mm
この土地にかつて住んだホホカム族の生活様式を想像しながら、たくさんのペトログリフを岩の丘に目にした後、引き返すようにゴールデン・ゲイト・ロードを走りループから抜けてさらに先に進むと、サワロに囲まれたピクニックエリア(Ez-Kim-In-Zin Picnic Area)が左手に見えてくる。自然の中にいる感覚を肌で感じられるように、よく整備されているこのピクニックエリアに立ち寄ることは、この道を走る者にとって自然な流れだった。小高い丘に建てられ小屋にはテーブルと椅子があり、大きく開いた窓を風が通り抜けていくのを感じ、そこにしばらく動かず休憩をする。ピクニックエリアからさらに先に進むとダート道はかなりのデコボコ道になり、サワロも少なくなったので、再びループに引き返した。シグナルヒル・ピクニックエリアに戻った頃、それまで雲に阻まれていた陽の光が直接射しはじめ、あまり期待していなかった夕焼けを背景にしたサワロの姿を見ることができた。
使用機材:SIGMA SD14 + 30mm F1.4 EX DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/320秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:30 mm
使用機材:SIGMA DP1s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:16.6 mm
使用機材:SIGMA SD14 + APO 120-300mm F2.8 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/1000秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:209 mm
その後、公園に来た道を引き返しハイウェイ10に乗り、ツーソンに向けて少し走ると、大きなサインを掲げた宿屋がハイウェイから数多く見え、宿泊先を探すのは難しいことではなかった。泊まった宿の夜は5月だったが、冷房を入れないと少し暑かった。翌朝、西のツーソン・マウンテン・ディストリクトから約30マイル(48 km)離れたサワロ国立公園の東の地区、リンコン・マウンテン・ディスリクト(Rincon Mountain )に向う。朝5時半に宿を出るが、思ったより時間がかかり公園に到着すると、この日の快晴を約束する強い朝日が既に白いサワロの花を照らしていた。まだオープンしていないビジターセンターからは、8マイル(12.8km)の舗装されたループ(Cactus Forest Drive)を走った。起伏があり変化に富んだ景色に囲まれた道には、サワロを見下ろせるようなスポットに車を停めることもでき、人の背より高いところに咲く花を見るのにいいループだった。写真を撮りながらゆっくり走る私を追い越す車は数台で、朝の空気の中を気持ちよさそうに走るサイクリストの数は、その倍以上だった。
使用機材:SIGMA SD14 + APO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/160秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:214 mm
使用機材:SIGMA SD14 + 30mm F1.4 EX DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:30 mm
使用機材:SIGMA SD14 + APO 70-200mm F2.8 II EX DG MACRO HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/1250秒 | 絞り:F4.0 | 焦点距離:200 mm
使用機材:SIGMA SD14 + APO 70-200mm F2.8 II EX DG MACRO HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/1250秒 | 絞り:F3.5 | 焦点距離:144 mm
使用機材:SIGMA SD14 + APO 120-300mm F2.8 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/500秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:300 mm
使用機材:SIGMA SD14 + APO 70-200mm F2.8 II EX DG MACRO HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/1000秒 | 絞り:F3.5 | 焦点距離:154 mm
昼間でもまだ暑さがさほど厳しくない5月中旬のサワロ国立公園で、たくさんのサワロを見た後、西へ戻る道中の所々にもサワロを見る。給油のため立ち止まったカリフォルニア州との州境の小さなタウン、クオーツ・サイト(Quartzsite)で見たサワロにも、白い花が咲いていた。ここで見たサワロの白い花が見納めとなったが、LAに戻ってもアリゾナ州の州花に認定されているサワロの白い花が、どこにでも咲いているような気がした。
使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F10.0 | 焦点距離:24.2 mm
※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。
押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。
84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、
広告写真スタジオで働き始める。
91年フォトグラファーとして独立。
95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。
エンターテインメント関係の撮影中心。
近年はライフワークである旅写真に力を入れている。
趣味は旅と山歩き。
オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/