サンタバーバラ海峡線を走って来た私は、ガヴィオタ州立公園内にある桟橋を丘の上から見下ろすように撮影した後、太陽が沈まないうちにLAに戻るつもりだった。車に戻り周辺の地形を地図で確認していると、サーフ(Surf)という地名が目に入る。いい光景に出会えそうだ、そんな確信的な期待を抱かせる地名を目にした私は、さらにその先の海岸を目指すことにした。
この辺りまでしばらくフリーウェイ101と重なり合って走っていたパシフィック・コーストハイウェイ(通称PCH)は、少し北に行くとフリーウェイから分かれて西に曲がりカブリロ・ハイウェイと重リ合った。その道を30分ほど走るとヴァンデンバーグ空軍基地で知られるロンポック(Lompoc)に到着する。日曜日の午後3時、人影をあまり見かけない静かな町で、壁画の写真を撮るために車を数分間停めた以外、どこにも立ち止まることなかった。PCH から離れ、町中で重なり合っていたウエスト・オーシャン・アベニュー(246号線)を西へ走る。大きな畑が左右に見える田舎の風景の中をゆっくりと走り抜ける午後のドライブ、出会う車はほとんどなかった。
使用機材:SIGMA DP1s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:16.6 mm
西にひたすら走ればサーフに繋がるはずの道を走っていると、オーシャン・パーク・ロードと書かれたサインが右手に見える。私は少し寄り道をするつもりでその道に入る。その道は舗装されていて、湿地帯を数回曲がりながら海岸まで繋がっていた。道と湿地帯の間には、境となる土手はなく、少しの雨でもすぐに水の中に潜ってしまいそうなどこか心細い道だった。その細い道を数百メートル走ると、ピクニック・テーブルが数個並んでいる駐車場に行き着く。太平洋に流れ込む川が、海岸付近ではその流れを感じない池のような川となり、その周辺に湿地帯をつくる。海と川との境目が分からない水面の上に、アムトラックが走る鉄橋がかけられている。鉄橋の周りには、高波から守るためか、大きな石が積まれている。その鉄橋の下を通るビーチまでのアクセスは、満ち潮のため海水に潜っている。この時間帯にこのパークを訪れていた人たちと同じように、私は線路を横断しビーチまで歩いて行った。チドリの保護のためビーチのアクセスが禁止になる期間があるこのビーチは、ところどころ海霧で覆われていた。霞んで遠くまで見えない幻想的なビーチは、終りがなくどこまでも遠くへ続いている砂の迷路に迷い込んでしまった、そんな不思議な気持ちにさせた。
使用機材:SIGMA APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/400秒 | 絞り:F6.3 | 焦点距離:500 mm
使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F6.3 | 焦点距離:24.2 mm
使用機材:SIGMA APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/500秒 | 絞り:F9.0 | 焦点距離:403 mm
使用機材:SIGMA APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/200秒 | 絞り:F6.3 | 焦点距離:500 mm
使用機材:SIGMA 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/100秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:10 mm
サーフという地名に魅力を感じここまでやって来た私は、少しの寄り道のつもりで立ち寄ったオーシャンビーチパークで時間を使い過ぎ、湿地帯を通り抜けパークを後にする時はもう日没寸前だった。ウエスト・オーシャン・アベニューに戻り、暗くなりかけた丘を少し上がるとサーフビーチという太平洋が一望できる無人駅に行き着いたが、サーフという地名のサインは見かけなかった。駅のベンチに腰掛ける男女、線路を渡り砂の上で犬と遊ぶ若い女性、写真を撮り合う家族だと思われるグループ、皆、日没を見に来ていた。この日の夕暮れは、水平線に雲がかかり太陽が水平線に沈む瞬間を見ることはなかったが、赤く染まった西の空と太平洋は、日没を見に来ていた10人ほどの来客を十分に満足させた。家路に着いた私は、大きな太平洋とその水平線に沈みゆく太陽、その壮大な光景を目撃できる無人駅に出会えて満足だったが、ロンポックで見かけた壁画、そこに描かれていた灯台(ポイント・コンセプション)が目に焼き付いて離れなかった。
使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/80秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:24.2 mm
使用機材:SIGMA DP1s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/80秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:16.6 mm
それから2週間後、その灯台をこの目で見るために私は再びロンポックを訪れた。地図で確認した通り、灯台までの海岸の道を走り始めるとすぐにゲートに行き着く。そのゲートにいるガードの若い女性が、ポイント・コンセプションまではプライベートの土地を通らないとたどり着けないので、灯台を見ることは出来ないと、私に告げる。ちょうどその時このゲートを通った男性が、アムトラックに乗れば灯台が良く見えると教えてくれた。今から電車に乗る気もなく、灯台を見るという望みを絶たれてしまった私は、地図上で美しい景色が見られる道に記される黒い点が長く続くカブリロ・ハイウェイを再び走ることにした。この日は激しい雨を伴う冬の嵐が去り、久し振りの快晴だった。空気は澄み渡り、丘陵地帯の草は雨の恩恵を受け、生き生きとした緑を輝かせている。その美しい風景と爽快な空気の中を走り抜け、再びオーシャンビーチパークを訪れた。この日訪れた時間帯、海は引き潮で大きなビーチはさらに大きく感じ、2週間前見なかった大きなペリカンをこの日は多く見かけた。
目的だった灯台まではたどり着けなかったが、目にする全ての光景に大きな広がりを感じ、澄み切った空気の中、美しい緑の丘陵地帯を走り抜け快晴のビーチに立っていると、このまま海風に乗ってどこかに飛んで行けそうな気がした。
使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F11 | 焦点距離:24.2 mm
使用機材:SIGMA APO 120-300mm F2.8 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/640秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:300 mm
※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。
押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。
84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、
広告写真スタジオで働き始める。
91年フォトグラファーとして独立。
95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。
エンターテインメント関係の撮影中心。
近年はライフワークである旅写真に力を入れている。
趣味は旅と山歩き。
オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/