押本龍一 ― 私の出会う光景 ― : 第7回:モニュメント・バレーへ

アリゾナ州のフラッグスタッフ( Flagstaff)から、眺めがいい道に添えられる緑の点が地図上に続くUS ルート 89を約50マイル(80km)ほど北へ走り、グランドキャニオン国立公園の南側に繋がる道(SR64 )を左手に通り過ぎ、レストランや工芸品店を見かけるキャメロン(Cameron)を通過しリトルコロラド川を渡ったところで、私は赤土の路肩に車を停めた。
少し手前で、「本物のナバホ工芸品」と書かれたサインを見かけ、この土地と同じ色の赤い川を見ていると、特別な土地に足を踏み入れた気がする。US ルート 89を少し北に走りUS ルート 160に入ると、大きくはないが地層が見える崖を右手に見ながら道は左にカーブし、緩やかに上っていた。私はこの先から大きな崖がそばに迫る風景を予測したが、上り坂を上がりきると意外にも平坦な土地が続いていた。

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シーズンオフなのか、週末なのに店には誰もいなかった。
ワイドレンズで、雲ひとつない青い空、緑色の看板、赤土を鮮明に記録し、この場所のこの日の空気感を切り取った。

使用機材:SIGMA SD14 + 10-20mm F3.5 EX DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/320秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:12 mm

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手前の岩肌から、川の向こうの遠くまで同じ色の風景だった。

使用機材:SIGMA DP1s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:16.6 mm

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US ルート 160沿いに2つの岩を見つけた。
そのふたつの岩をワイドレンズでシャープに写した。

使用機材:SIGMA SD14 + 10-20mm F3.5 EX DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F11.0 | 焦点距離:10 mm

テューバ・シティー(Tuba City)を通り抜け、しばらく行くといつの間にか左手に線路が道と並行して走っている。西日が照らすコンクリートの枕木が白く光っていて、踏み切りの向こうには人家がポツンポツンと建っていた。その遠く向こうには、横に長く続く崖が見えていた。
しばらく走ると縦長の箱のような建物から、ローラーコースターのようなものが道を越えて遠くに長く伸びていて、この建物の前に撮影禁止のサインを見る。後に地図で確認すると道に並行して走っていた線路はこの建物から北西のぺージ(Page)まで伸びていて、ここは石炭の鉱山だったことを知った。

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店跡と思われる木の枠組みを、道路と線路の間の何もない場所に見つけた。
太陽のフレアーに邪魔されることなく、荒涼とした土地と大きな空を背景に、フィッシュアイレンズで、小さな木の枠組を大きく写した。

使用機材:SIGMA SD14 + 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F9.0 | 焦点距離:10 mm

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道路に並行した線路、踏み切りの向この人家、さらに遠くの崖。
標準ズームは肉眼で見た風景の距離感を忠実に記録した。

使用機材:SIGMA SD14 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F11.0 | 焦点距離:40 mm

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何のためにどこまで繋がっているのか分からない線路。
そんな私の気持ちを大口径望遠レンズで遠くをぼかし、モノクロにして表現した。

使用機材:SIGMA SD14 + SIGMA APO 70-200mm F2.8 II EX DG MACRO HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッタースピード:1/500秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:200 mm

そこからほんの少し走ると、ナバホ・ナショナル・モニュメントまで伸びている道、SR564に入いる。北へ約9マイル(14.5km)を走り、モニュメントに到着すると夕方の5時を少し過ぎていたビジターセンターはすでに閉まっていた。私が到着したすぐあとに一組のカップルが訪れたが、訪れる人はこの後いそうもなかった。二つあるうちの一つのキャンプ場はオープンしていたが、まだ雪が残るサイトに人影は見なかった。US ルート 160に戻り、カエンタ(kayenta)からUS ルート 163に入ると、メサ(Mesa)と呼ばれるテーブルのような形をした台地とビュート(Butte)と呼ばれる岩山が赤い夕陽に照らされ、赤い岩肌がさらに赤く地平線に染まっていた。
車を大きな路肩に停めて赤い土地の上に立つと、太陽の光がみるみるうちに弱くなり、すぐに日没となった。さらに北へ走りユタ州に入る頃、辺りはすっかり暗くなり夜になった。暗い道を30分ほど走り、サンファン川(San Juan)に架かる小さな橋を渡ると道は右へ直角にカーブしていた。さらに左にカーブした先に、黄色い灯りが煌々と輝くガソリンスタンドがあった。私は給油をし、その夜の寝酒とスナックを買った。ナバホインディアンの血を引いていると思われる小柄な若い女性が、そのガソリンスタンドで働いていて、私は彼女が推薦した川沿いの宿にその夜泊まった。そして、この場所がメキシカン・ハット(Mexican Hat)と呼ばれていることは地図を見て知っていた。

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岩の上に雪がまだ残っていた3月。
夜は冷え込み、キャンプサイトに人影を見なかった。

使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F11.0 | 焦点距離:24.2 mm

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カエンタからUS ルート 163に入ると映画で見たことがある風景だった。
温度が下がった路肩に車を停めてデジタルカメラですばやく撮影した。

使用機材:SIGMA DP1s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:16.6 mm

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日没寸前のモニュメント・バレーは、赤かった。

使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:24.2 mm

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メサと美しいサンセット。

使用機材:SIGMA SD14 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F5.0 | 焦点距離:29 mm

翌朝5時に宿を出て、暗闇の中、昨夜走ってきた道を南に下る。気が付くとユタ州からアリゾナ州に入っていた私は、ユタ州にすぐに引き返してモニュメント・バレー・ロードという道に入る。目を凝らしてよく見ないと見過ごしてしまう、まだ弱くかすかな明かりが地平線に見え、日が昇る方角を知る。東へ少し走ると、モニュメント・バレー・ナバホトライバル・パーク(Monument Valley Navajo Tribal Park) に行き着く。細かい旅の予定をたてず、その土地の下調べもほとんどせず、その時の気分に任せて旅をする私でも、この辺りがモニュメント・バレーの中心だと感じた。東の空が白々と明るくなってくると、一台の車が停まり一人の女性が三脚をたてた。彼女からさほど遠くない場所に私もカメラを三脚に乗せて日の出を待った。この朝の冷え込みは厳しく、手袋をしていた私の指は寒さでうまく動かず、体の芯まで冷え切っていたが、大きな風景から昇る朝日を目撃するために両手をこすり合わせながらその時を待った。この朝は地平線に少しだけ雲が掛かっていたが、この日の快晴を約束するほぼ完璧な日の出だった。

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東の地平線が明るくなり、黒かった空に色が付いてきた。
なんとも言えない神秘的な光景だった。

使用機材:SIGMA DP1s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1.0秒 | 絞り:F4.0 | 焦点距離:16.6 mm

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陽が昇ると東の空が赤くなった。
日の出を撮っていた女性のカメラの後ろから、標準ズームレンズでモニュメント・バレーをすばやく撮った。

使用機材:SIGMA SD14 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/500秒 | 絞り:F5.6 | 焦点距離:40 mm

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肉眼では眩しく直視できない朝日にカメラを向けて撮影した。
デジタルカメラは、この朝の光景の美しさを最大限に描写した。

使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/500秒 | 絞り:F11.0 | 焦点距離:24.2 mm

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太陽が岩山に隠れて、影絵のような光景をつくりだす。
シンプルだが強烈なイメージだった。

使用機材:SIGMA SD14 + SIGMA APO 70-200mm F2.8 II EX DG MACRO HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/2000秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:70 mm

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朝日を受けた岩肌が赤く輝く。
デジタルカメラは岩肌の質感を限りなくシャープに捉え、日陰になった赤い土地のディテールを繊細に描写した。

使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F6.3 | 焦点距離:24.2 mm

朝日を十分に享受した私は、メサとビュートを身近に感じ、朝のUS ルート 163を北に走った。まっすぐ伸びた道が下って上がった場所に「FAMOUS VIEW」と書かれた看板を立てた露店が1件建っている。
道から20メートルほど離れていた店はまだ開店前で、店から道へ戻る路肩にストップサインが立ち、買い物客が道に戻る際に、1本道を飛ばしてくる車に対しての警告サインに違いないと思う。私はそこに車を停めて南に広がる壮大なモニュメント・バレーの風景を何も考えずしばらく眺めていた。日の出から2時間、車から外に出ると手袋も帽子も必要がなくなっていて、風もほとんどない朝、旅にはいい一日になりそうだった。

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モニュメント・バレーを走る1本の道の真ん中に立ち、望遠ズームレンズで撮影。
写し出された写真を見ると実際にドライブしているような錯覚を覚える。

使用機材:SIGMA SD14 + SIGMA APO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/250秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:251 mm

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ストップサインにフォーカスし、必要な風景だけを切り取る。

使用機材:SIGMA DP2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/200秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:24.2 mm

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朝の空気が残るモニュメント・バレー。
有名な景色をコンパクトなデジタルカメラで大きく切り取る。

使用機材:SIGMA DP1s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F7.1 | 焦点距離:16.6 mm

壮大な風景の中をさらに北に行きサンファン川の前で車を停めると、昨夜泊まった宿が、赤い岩を背に川向こうによく見えていた。振り向くと文字が消えかかった看板にNAVOJO LANDの文字を見る。サンファン川に架かる橋の影が、粘土色した川に映しだされ、その橋の影にこの先の旅路を想う。川を渡り少し行くと、この場所の名前(メキシカン・ハット)の由来だとすぐに分かる高さ60フィート(18m)のメキシカン・ハット・ロックが右手に見える。地図で見るとサンファン川から北はサンファン・カウンティーとなり、ナバホカントリーとモニュメント・バレーではない。しかし、私の眼には、川を渡る前の土地の色と何の変わりがなく写っていた。

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ナバホランドに別れを告げる。もうよく読めない看板は、この土地の色に染まっていた。
その繊細な色と質感がよく感じ取れる写真となった。

使用機材:SIGMA DP1s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F8.0 | 焦点距離:16.6 mm

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朝日が当たる岩陰に昨夜泊まった宿が見え、サンファン川に掛かる橋の影に朝を感じる。

使用機材:SIGMA DP1s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F6.3 | 焦点距離:16.6 mm

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草が少し生える赤い土の向こうの小さな岩山に、誰かが意図して岩を置いたように見えるメキシカン・ハット・ロック。
眼で見た印象通りの写真にしたかったので、ロックを大きくは写さなかった。

使用機材:SIGMA 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッタースピード:1/125秒 | 絞り:F11.0 | 焦点距離:28 mm

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

押本 龍一
プロフィール

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。
84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、 広告写真スタジオで働き始める。
91年フォトグラファーとして独立。
95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。
エンターテインメント関係の撮影中心。
近年はライフワークである旅写真に力を入れている。
趣味は旅と山歩き。
オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

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