押本龍一 ― 私の出会う光景 ― 第14回:夏のキングス・キャニオン景観道路(Kings Canyon Scenic Byway)

ロサンゼルスからインターステート・ハイウェイ5を北上し、ハイウェイ99に乗り継ぎ、ベーカースフィールド(Bakersfield)を経て、ビセーリア(Visalia)で198を少し東に走り、ビセーリアの町でハイウェイ198を出る。静かな街を通り抜け、州道63を北上し、小さなタウンを通りすぎ、大きなカリフォルニアの農場が広がっている風景を北に走る。シェラネバタ山脈に刻まれたキングス・キャニオンへ続く州道180(SR180)に突き当たると、右に曲がり東へ向かう。
道は山岳地帯に入って行く気配を感じさせる上り坂になり、夏の強い日差しが照りつけ、乾燥した山道をどんどん上がる。州道180は、キングス・キャニオン景観道路となり、キングス・キャニオン国立公園のエントランスに到着する。

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大きな農場を見ながら走る州道63沿いに咲いていたヒマワリ。
長い焦点距離のマクロレンズで、正面の黄色い花をシャープに、背景を美しくぼかす。

使用機材:SIGMA SD15 + APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150 mm

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強い日差しが照りつけ、暑く乾燥していた夏の草原。
彩度を落とし、乾燥した夏を表現。

使用機材:SIGMA DP2s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24.2 mm

キングス・キャニオン国立公園に入るとすぐに道は、二股に分かれ、右に曲がると南のセコイア国立公園へ繋がっている。私は、左に曲がりSR180を北に少し進み、標高6500 ft(1980m)のグラント・グローブ・ビレッジ(Grant Grove Village)に到着した。ビジターセンターには、夏休みのため子供をたくさん見かける。私は、ビレッジ周辺にある3つのキャンプ場のひとつ(Azalea)に、テントを張った。独立記念日の週末明け、キャンプ場は空いていて、気に入ったサイトを決めるのに迷うほどだった。私は、今夜の寝床を確保した後、キャンプ場から数分の距離に位置するセコイア杉の森であるジェネラル・グラント・グローブ(General Grant Grove)に移動した。この巨木の森には、「この木がクリスマスツリーならいいのに」と言った女の子の言葉がきっかけになり、1926年に国のクリスマスツリーに認定された巨木、グラント将軍の木(The General Grant Tree)が生息している。この木の名前は、南北戦争中は将軍で、第18代アメリカ合衆国大統領でもあったユリシーズ・シンプソン・グラント(Ulysses Simpson Grant)に由来する。

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大きな石の横にテントを張る。
明暗の差がとても大きい光景だったが、
テントとテーブルに木漏れ日が当たる明るい部分の表面と、影になった暗い大きな石の表面の様子も、しっかりと読み取れる。

使用機材:SIGMA SD15 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/100秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

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ジェネラル・グラント・グローブに着くと、
黄色い花が迎えてくれた。
超広角ズームレンズを向けると、
蝶が飛んできた。

使用機材:SIGMA SD15 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

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倒れたセコィアの木の中が歩けるように
展示されていた。
その木の中から森の空を見上げる。

使用機材:SIGMA SD15 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

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1876年に開催されたフィラデルフィアでの展示会に送るため、1875年に、二人の男が9日間で切り倒した切り株。Centennia Stumと名付けられた切り株の根元の直径は24ft(7.2m)。

使用機材:SIGMA SD15 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:31 mm

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The General Grant Treeと周囲の木を超広角ズームレンズで見上げる。
樹高267.4ft(81.5m、根本の周囲107.6ft(32.8m)、根本の直径40.3ft(12.3m)、体積46,608 cu ft(1.320 m3)

使用機材:SIGMA SD15 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

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樹齢は、推定1800年から2000年のThe General Grant Treeの表面。
その年輪を重ねた生命体の表面をマクロレンズはシャープに捉え、派手な色ではないが深みのある色をカメラは忠実に描写した。

使用機材:SIGMA SD15 + APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150 mm

グラント・グローブで、ジャイアントセコイアを見た私は、州道180(キングス・キャニオン景観道路)を東に走った。目の前に迫る迫力のある景色が誰の管轄下であるか、私には余り関心がなかったが、地図で見ると景観道路の半分以上は、公園の管轄外になっていた。
数年前に訪れた5月のキングス・キャニオンは、雪も降り、空はグレーだったが、強い日差しのこの日、春の訪れが一月も遅かった渓谷の空には、元気な夏の雲が広がっていた。
景観道路は、下りながらキングス川に少しずつ近づいた。雪解け水が流れ込んだ川の流れは激しく、所々に川に入ることを禁じるサインを見る。公園のサイトには、「危険な川」と、赤い文字で書かれ、「この時期、川の水位は標準の3倍から4倍に達しているから注意するように」と書かれている。

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ほとんど垂直で険しい崖になっているキャニオン。
強い太陽光が崖を力強く描写し、
その光景をカメラは、忠実に捉える。

使用機材:SIGMA SD15 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:23 mm

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川の流れは激しいが、川の流れから生じる音もまた激しかった。
高速シャッターで撮影し、水の動きを止めると、
肉眼では見えない世界が体験できる。

使用機材:SIGMA SD15 + APO 70-200mm F2.8 II EX DG MACRO HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/2000秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:144 mm

川沿いを東に走るとさらに大きな水の音を発するグリズリー滝(Grizzly Falls)に立ち寄った。州道180を走る者のほとんどはこの滝に立ち寄るらしく、夏の暑さを一時忘れさせてくれる滝には人影ができていた。シダー・グローブ・ビジターセンターを通り過ぎると、もうひとつ、滝(Roaring River Falls)を見ることができた。エメラルドグリーンが美しいこの滝も、道からさほど離れていなく、近づきやすかった。滝を見てすぐ立ち去る人もいたが、岩陰に隠れてのんびりと休憩したくなるこの滝は、水の音に包まれ、なかなかその場から離れない人が多かった。

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高さ75ft(23m)の滝に人が集まっていた。
コントラストを強め、白い滝の存在を強調。
強い太陽光を浴びた滝は、その質感も失うことなく力強く写し出された。

使用機材:SIGMA SD15 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:31 mm

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流れ落ちる水を眺めていると、自然と心が泰然としてくる。
大口径レンズで、固定されたように動かない木にフォーカスし、高速シャッターで撮影すると、水の神秘性を感じる写真が写っていた。

使用機材:SIGMA SD15 + APO 120-300mm F2.8 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1600秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:166 mm

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滝に行き着く道から高速シャッターで撮影。
淡いエメラルドグリーンの滝は、繊細に描写された。

使用機材:SIGMA SD15 + APO 70-200mm F2.8 II EX DG MACRO HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:135 mm

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Roaring Fallsは、高さはないが、その名の通り(Roaringは、ほえる、うなるの意)、激しい滝の音がしていた。
滝の向こう見える雲の質感も忠実に描写できた。

使用機材:SIGMA SD15 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20 mm

2つの滝を見た後、さらに東に進み、美しい草地(Zumwalt Meadow)へ足を伸ばした。下流で見た川と比べると、止まって見えるほど穏やかな流れの川に、頑丈そうな橋が掛かっている。
その橋を渡り、よく整備された川沿いのトレールを歩き、湿地帯に囲まれた草地に到着すると、夕立もありそうなぐらい雲が多くなり、風も少し吹いてきた。しかし、しばらくすると、ふたたび青空が広がり、風も収まった。そこから景観道路を少し東に行くと、道は行き止まりになった。歩いてこの先の深い山の中に入る人のための大きな駐車場があったが、この日、車を数台しか見なかった。そこから私は、来た道を西に向かい引き返した。夕方になり、太陽の光を受ける渓谷の影は長くなり始めていた。

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穏やかな川に、頑丈な橋が掛かっていた。
超広角ズームレンズで風景を大きく写しこむと、
手間のワイヤーの質感から、川の向こうの山までリアルにかつシャープに記録されていた。

使用機材:SIGMA SD15 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

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川沿いの湿地帯に濃い緑の草が生息している。
デジタルカメラは、豊かな描写力で、深みのある緑を写し出す。

使用機材:SIGMA SD15 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

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Zumwalt Meadowをワイドレンズで撮影。
デジタルカメラで、活発だった雲の動きもリアルに描写。

使用機材:SIGMA SD15 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm

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西へ戻る帰り道、シダー・グローブ(Cedar Grove)に夕方の光が射す。
巨木もすばらしいが、よく見る普通サイズの杉や松ノ木もまたその大きな存在感を感じた。

使用機材:SIGMA SD15 + APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:150 mm

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西日にコントラストを増す白い花の木。
デジタルカメラは、シャドーは潰さず、木全体をシャープに描写した。

使用機材:SIGMA SD15 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm

景観道路から、ほとんど逸れずにいた私は、多くのジャイアントセコイアが生息していたが、1892から1918年の間にほとんどのジャイアントセコイアが切り倒されたコンバース・ベイズン・グローブ(Converse Basin Grove)の中に入ってみた。陽の光は刻々と弱くなり、土煙に車が包まれながらダート道を走って行くと、大きな切り株(stump)がたくさん存在するStump Meadow と呼ばれる草原にたどり着いた。巨木が切り倒され、残された大きな切り株があちらこちらに見える光景を、日没近い陽の光が、照らしている。大きな切り株と向かい合っていると、切り倒された当時の木を取り戻し、切り株の上に戻してあげられたらと、不可能な願望を抱いた。

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どのくらい前に切り倒された巨木だろうか。
辺りにはこんな切り株がたくさん存在している。
彩度を抑え、感慨深い気持を表現。

使用機材:SIGMA SD15 + 18-50mm F2.8 EX DC MACRO | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:50 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:18 mm

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

押本 龍一
プロフィール

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。
84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、 広告写真スタジオで働き始める。
91年フォトグラファーとして独立。
95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。
エンターテインメント関係の撮影中心。
近年はライフワークである旅写真に力を入れている。
趣味は旅と山歩き。
オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

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