第141回:オレゴン・アウトバック・シーニック・バイウェイを南下する
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第141回:オレゴン・アウトバック・シーニック・バイウェイを南下する

大きなタイヤにある餌を求め、黒い牛が集まっていた。背景には古い火山であるフォート・ロックが少し霞んで見える。両足を広げて大地に立ち、オレゴン州中部の広大な風景をしっかり切り取る。自分も大きな風景の一部になったような気がする瞬間だった。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 1735 | ファイルサイズ:5.85MB

オレゴン州中部の小さな集落・ラ・パイン(La Pine)に宿泊した私は、ロッキー山脈とシエラネバダ山脈の間、大いなる盆地・グレートベースン(Great Basin)の北の一部分であり、起伏の多い乾燥した大地を走る「オレゴン・アウトバック・シーニック・バイウェイ」を南下してカリフォルニア州に戻ることにした。翌朝、オレゴン・ルート31を南東へ下る。「抜けるような青い空と澄んだ空気の中、強烈な陽射しを浴び、未開発の広大な大地をダイナミックに走行」、そんなイメージを持って走りだした。しかし、空は雲に覆われ、ロッジポール松とポンデローサ松が生息するデシューツ国立森林公園が思った以上に長く続き、はっきりしない天気に影響され、気分もすっきりせずに走る。

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バイウェイから逸れて森の中に入る。森では動物の白骨をよく見かけ、特別な感情は沸いてこない。曇の日の静かな森の空気感を伝えるため、彩度を控えめにした。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/40 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:19.64MB

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森が開けた所に木の切り株が点在している。咲いた花もなく派手な色がない森だったが、木の温もりは感じた。モノクロームにして色調は温黒調を選択。

SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/40 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:19.26MB

「オレゴン・アウトバック・シーニック・バイウェイ」は、ラ・パインの少し南のUSハイウェイ97とオレゴン・ルート31のジャンクションを北端とし、南下してUSハイウェイ 395にジョイントし、カリフォルニアとの州境を南端とした全長約275kmのシーニック・バイウェイだ。オレゴン・ルート31を50kmほど南下し、森林地帯からようやく抜け出し大地が広がる辺りから一旦オレゴン・ルート31から逸れ、11kmほど東に位置する古い火山、フォート・ロックへの道もシーニック・バイウェイの一部としている。フォート・ロックについては下調べもしていなかったが、ローカルな道が大好きな私は、迷わずオレゴン・ルート31から逸れてフォート・ロックへ向った。雲に覆われていた空からは陽の光が差し始め、快晴とは言えなかったが、まずまずのドライブ日和となった。

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オレゴン・ルート31からフォート・ロックへ向い東へ行く。広大な土地と放牧された牛の群れ。牛が移動すると土煙が上がる。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:16.43MB

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フォート・ロックを背景にし、牛達が道端に立つ私を見ていた。手前の有刺鉄線を大胆に入れ込んで撮ると大地の広大さも写った。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.41MB

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昔からこのエリアは放牧が盛んだった。電柱や牧場の囲い等、木材でつくられたものがある風景は、温黒調のモノクロームが似合う。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.36MB

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第一次世界大戦前まで栄えたフォート・ロックの集落。今日ではほとんどの建物がミュージアム(Fort Rock Valley Historical Homestead Museum)のものになって保存されている。

SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:17.50MB

フォート・ロックに近づくと大きな岩山に見えた古い火山は、周囲の大地から高さ100mの岩の壁に囲まれ、正にFort(城砦)のように見える。火口の南には岩壁はなく、火口内は周辺の大地から20mから50mほど高いようで、外から見るより周りを囲む岩壁の高さは感じない。太古の昔、この地は湖底だった。湖底から湖面を飛び出して吹き上がった玄武岩を含んだマグマによってできた火口の壁は、南からの波風で削られた。湖の面積は2,300km²(琵琶湖の3.6倍)、岩壁がつくられた時点の湖の深さは46m、岩壁の上の方だけが湖面から出ていた時代もあった。州立公園となっているフォート・ロックは、地質や生態系の移り変わりがよく分かる土地を守るプログラム「National Natural Landmarks (NNL)」に指定されている。火口の南東部にある小さなパーキング場に到着すると、訪問客の姿はなく、パーク・レンジャーが住むモーターホームだけがパーキング場の横に停まり、海抜1,400mの大地に心地よい秋風が吹いていた。

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フォート・ロックの南東部手前、雄大な景色の中に小さな墓地があった。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.57MB

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火口の南東部から火口内へ登って行く。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:16.10MB

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火口内の東の岩壁近くまで登る。直径1,360mの火口の南には岩壁がないので、巨大なステージにも見える。大きな湖が広がり、岩壁の上の方が湖面に突き出した風景をイメージした。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:14.62MB

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苔癬(Lichen)が生えている溶岩。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:17.87MB

フォート・ロックからは西へ戻り再び南下する。馬や牛がいる大きな牧場が広がり、乾燥した盆地を走り、しばらく行くと溶岩が転がる山岳地に入る。バイウェイの東側は乾燥した広大な砂漠で西側はフレモント国有林になり、森と砂漠の境目を走る。私はバイウェイから逸れて国有林の中、標高2,300mまでダート道を上がったが、目に付くものがあまりなくホコリまみれでバイウェイに引き返した。そこから少し南下すると、水深は平均30cm、最高でも61cmの浅いアルカリ湖であるサマー湖の北端に出た。湿地帯だが、地図上では縦長の湖(24kmx8km)の一部となっている。250 種の鳥が見られるこの湖では狩りが盛んなようで、ダート道を走って行くと狩りに来た人々が大きなテントを張っている広場があった。「Snow Goose(ハクガン)は撃ってOK、Swan(白鳥)は、撃つな」とのサインをどこかの湖で見たことがあるが、この湖でも撃っていい鳥と駄目な鳥のサインがあるはずだが、見当たらなかった。

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独自の雰囲気を持った牧場のフェンス。

SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:19.06MB

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私を見つけると馬達が寄ってきた。馬の体の質感を強調するにはモノクロームが良かった。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.64MB

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成熟したコーンを付けたジュニパーが生息し、溶岩が転がる山を越える。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:13.78MB

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サマー湖の北岸は、ハンターのために距離を示したサインが立っている。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:275mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.93MB

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秋の色になったサマー湖の湿地帯。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:20.69MB

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砂漠地帯のあって貴重な湿原には、背の高い草がどこまでも生えている。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:13.85MB

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サマー湖南の乾燥湖。アウトバック・シーニック・バイウェイの路肩から徒歩で入って行ける。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.88MB

サマー湖を越えて南東へ走って行き、USルート395にジョイントし、米国で最大の断層崖の一つアルバート・リム(Abert Rim)を東に見ながら南下する。ダイナミックな景色は続き、太陽が西に沈んでゆき草原が西日に染まる。夕暮れが近くなり、日没寸前にオレゴン州からカリフォルニア州に入った。

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アルバート・リム(Abert Rim)は50kmに渡り続いている。バイウェイから見ると750mほどの高さだ。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:17.15MB

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西に沈む太陽が、長い影をつくる。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:200mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:18.83MB

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カリフォルニア州に入ると紅葉したコットンウッドが迎えてくれた。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60 秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:15.32MB

オレゴン・アウトバック・シーニック・バイウェイを北から南へ下り、カリフォルニア州に入って間もなく日が暮れた。かつて湖だった跡が残る乾燥した土地、森林地帯、砂漠地帯、砂漠盆地の湿地帯、断層崖等を含む自然豊かなOutback(未開発の地)を行くバイウェイは、一日で走り抜けてしまうには中味が濃すぎたようだ。もう少し時間をかけ、カリフォルニアから入って北上してみたい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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