第138回:ロシアン・リバー下流の夏
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第138回:ロシアン・リバー下流の夏

夕方、太平洋に注ぐロシアン・リバーの河口から内陸へ向って川沿いを14 kmほど走り、小さな集落モンティ・リオの橋から川を見下ろす。川辺のビーチには水遊びをする人々の姿がまだあり、夏の日は長かった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm |

サンフランシスコ湾と太平洋が面するゴールデンゲート海峡に架かるゴールデンゲートブリッジを渡って北へ80 km走り、ソノマ郡の郡庁所在地であるサンタローザ(英:Santa Rosa)に宿を取った。 宿の側にあるスーパーマーケットに行くと、ワインカントリーとして知られるソノマ郡最大の街らしく値の張るワインが沢山置かれている。「お買い得」のサインが付けられた地元産のピノ・ノワールとシャルドネ、それに摘みを買い込み、宿の部屋で夕食を取る。翌朝、太平洋に注ぐ長さ177 kmのロシアン・リバー沿いを散策するため、サンタローザから少し北上し、道沿いにワイン畑が広がっているリバー・ロードという道を西へ向って走りだす。

large
thumbnail-02

リバー・ロード沿いにはいくつものワイナリーがあり、このワイナリーのブドウ畑は収穫の日だったようで、掛声と共にブドウ狩りが一斉に始まった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:302mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:13.22MB

large
thumbnail-03

ワインに詳しくない私の目にはシャルドネのように見えたが、このブドウ畑の収穫はいつだろうか。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:10.48MB

9月最初の週末はレイバーデーで3連休になるためか、リバー・ロードは走る車は後を絶たない。川沿いを西へ走り、シャンペンで知られる「コーベル・ シャンパーニュ ・セラーズ」 を通り過ぎるとロシアン・リバーは大きく曲がっていた。川沿いを走る車も速度を落として曲がり、ガーンビル(Guerneville)のタウンに到着する。ロシアン・リバーの川辺にはボートとカヤックが置かれ、幾つかの映画が撮られた自然豊かなタウンは観光客で賑わいを見せていた。小さな観光案内所でボランティアらしき若い女性が「このタウンは自由で安全です」と言って笑顔で出迎えてくれる。確かに住民と思われる人々は自由な服装と格好をし、開放的な雰囲気が漂っていた。何度か洪水が起きても住人がこの地から立ち去らなかったのは、気候も含めてこの地が心地よいからだろう。

large
thumbnail-04

川には二つの橋が架けられ、車が通れない古い橋(Old Russian River Bridge)からロシアン・リバーを見下ろす。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:8.87MB

large
thumbnail-05

川辺のビーチ(Johnson's Beach)に置かれたスチール製のボートが光っていた。モノクロームにして調色で温黒調を選び、スチールの質感と朝の光を表現した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:8.57MB

私は観光案内所で勧められたタウンから少し北に位置するレッドウッドの森(Armstrong Redwoods State Natural Reserve)へ向った。ロシアン・リバー周辺にも豊かな森が広がり背の高いレッドウッドも見られたが、オレゴン州に近い北のレッドウッド国立公園以外にもこれだけのレッドウッドが生息していることは想像すらしていなかった。

large
thumbnail-06

中央の木は高さ94 mにもなるレッドウッドの森。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/30 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:9.21MB

large
thumbnail-07

レッドウッドの根元に陽が差し込む。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:17.30MB

森林浴を満喫したレッドウッドの森からロシアン・リバー沿いに戻り、西へ走り河口付近で川を渡って川辺に出た。川辺は非常に強い陽射しで眩しかったが、汗ひとつかかない爽やかな空気感に包まれていた。川辺からは河口が見下ろせるジュナー(Jenner)まで移動し、海風に吹かれた。

large
thumbnail-08

川辺には小さなキャンプ場もあり水遊びをする家族がいたが、週末のわりに人は少なかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:12.08MB

large
thumbnail-09

河口から漕いできたのだろうか。キラキラと光る川にカヤックが現れ、超望遠ズームレンズを最大にして撮影した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:600mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:12.89MB

large
thumbnail-10

ロシアン・リバーが太平洋に注ぐ河口は、この時刻には海水が押し寄せてきていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:11.02MB

large
thumbnail-11

海水で満たされた河口にカヤックが浮び、ビーチの向こうは太平洋。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:3136 × 4704ファイルサイズ:17.28MB

large
thumbnail-12

川と海の境目にHarbor Seal(ゼニガタアザラシ)の群れがいた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:500mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:11.28MB

large
thumbnail-13

眩しくて長くは見ていられない海面を背景に、絵を描く青年にフォーカスした。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1600 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:9.88MB

河口から朝走ってきた川沿いの同じ道をゆっくりと戻った。朝と夕方の時間差に加え、走る方向が違うと目の中に入ってくる景色の印象は変わり、私は別の土地に来たような気がして宿へ戻った。

large
thumbnail-14

河口からさほど離れていない丘陵地帯の牧場。放牧された牛が私に気がついたらしく、しばらくこちらを見ていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:20.58MB

large
thumbnail-15

西に傾いた陽光が当たるロデオグラウンド入口のサイン。サインの正面からストレートにレンズを向ける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:15.47MB

large
thumbnail-16

小さなタウン、モンティ・リオ(Monte Rio)のボヘミアン・ハイウェイ沿いに建つ古い映画館の横に、服とアクセサリーを売る老夫婦がいたが、ボヘミアンという言葉がぴったりの二人だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:10.64MB

large
thumbnail-17

ボヘミアン・ハイウェイから山の陰になったロシアン・リバーを見る。海抜13mの土地を流れる川の流れはとても穏やかだった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:9.74MB

翌日も前日と同じ道を西へ向い、前日走った川の対岸も少し走ってみた。鬱蒼とした川沿いの森の中には何軒もの家が建っていたが、その多くは別荘なのかもしれない。夏の間、この地に滞在した先住民族のポモ族が「日陰の土地」と呼んだように、森の木は高さがあり晴天でも太陽の光がほとんど届かず、昼間でも照明が必要だと思われる家が多かった。私は陽がよく当たるリバー・ロードに戻ると、一気に太平洋沿いに出た。ロシアン・リバー河口付近の南側は、海岸から美しい丘陵地帯にかけてソノマ・コースト州立公園に指定されている。よく整備されたトレイルもあり、さわやかな海風に吹かれて歩くハイカーも多く見かけた。

large
thumbnail-18

広大なブドウ畑の上に気球が浮いていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:302mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:10.61MB

large
thumbnail-19

鬱蒼とした川沿いの森からやっと光が届く場所に出る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/25 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:20.24MB

large
thumbnail-20

河口が近くなったロシアン・リバー。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:18.44MB

large
thumbnail-21

ロシアン・リバーと川を渡るパシフィックコーストハイウェイ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:19.03MB

large
thumbnail-22

ソノマ・コースト州立公園内のコータム・トレイル(Kortum Trail)。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:9mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:12.53MB

large
thumbnail-23

コータム・トレイル沿いに咲くBull Thistle(アメリカオニアザミ)。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150mm | ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:8.29MB

ドライブしたロシアン・リバー沿いにワイナリーを沢山見かけたが、涼しい気候と太平洋から発生する霧で良質のピノ・ノワールとシャルドネが育つようで、サンタローザのスーパーマーケットで購入したピノ・ノワールとシャルドネは美味かった。レッドウッドの森があり、太平洋からの涼しい海風が流れてくるロシアン・リバーの下流沿いは、夏を過ごすには最適な場所のひとつだと思う。ロシアン・リバーの河口付近の路肩で、車で引っ張ってきた小さな屋台で自家製のスモークサーモンを売る年配の男性がいた。サーモンを獲る時間はないから、フィッシュマーケットで仕入れて自宅でスモークするそうだ。帰宅した夜にさっそく食べてみると、白ワインの摘みにぴったりだった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

Page Top