第168回:アーキテクチュラル・デザイン・ヴィレッジへ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第168回:アーキテクチュラル・デザイン・ヴィレッジへ

デッキにいる学生達が手を振った。カリフォルニア州立工科大学サンルイスオビスポ校の裏手の丘陵地帯には古い建築物が点在している。

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12月最初の日曜日、カリフォルニア州立工科大学裏手のポリ・キャニオンを歩くため、太平洋岸のサンフランシスコとロサンゼルスのほぼ中間地点のセントラルコースト沿いの都市であるサンルイスオビスポへ向かった。ロサンゼルスからサンタバーバラを越えてしばらく走ると、ハイウェイ101は太平洋岸から離れ、かなり急な上りを北上してゆく。急な坂を上り切った後は丘陵地帯が続き、広大なワイン用のブドウ畑が見えてくる。そして再び海沿いに出てから少し北上するとサンルイスオビスポに到着する。自宅から約320kmのドライブは快適で、州立工科大学のパーキング場に車を停め、幅の広いポリ・キャニオンを歩きはじめたのは昼前だった。

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ポリ・キャニオンのクリーク沿いは森になっていた。幅の広いダート道から逸れ、古い橋を渡ってみる。

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石のアーチを潜り、低い石の壁にガードされた道を歩き、アーキテクチュラル・デザイン・ヴィレッジと名付けられ、建築物の墓場とも呼ばれているエリアに入った。点在する建築物は主に州立工科大学の学生が実験的に作ったということだが、中には彫刻作品に見えるものもあった。日曜日ということもあり、訪れる人も多くあちらこちらから声が聞こえ、テーマパークにでも来たような気がした。

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アーキテクチュラル・デザイン・ヴィレッジへの玄関口の石のアーチ。1976年に作られたアーチの中は鉄のフレームでできている。

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デザイン・ヴィレッジへのトレイル。晩秋だが暖かく、最高の気候だった。

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橋(Techite Bridge)は、繊維強化プラスチックモルタルの一種を使用し、土木工学科の学生により建設された。

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玄関口の案内図にFlowerと書かれていたが、1964年に建てられたFlowerは崩壊し、現在の建築物はBlade Structureと題され2008年に建てられた。

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回転ごとに伸縮速度を異なわさせるため、上部と下部に違った素材を使用したと資料にあるPalm Tree。風が吹けば回転するのだろうか?

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Cantilever Deckと題されたデッキは安定感があった。建築科の男子生徒1人と女子生徒1人で作られ、溶接は他の力を借りたそうだ。

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建築家のリチャード・バックミンスター・フラーに触発され、1964年に作られたThe Geodesic Dome。アルミのチューブと、古いボイラーのパイプで出来ている。

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1982年に作られたUnderground House。

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Underground Houseの中。山の斜面に建てられ、地下水が漏れたため、後に掘り起こされたようだ。

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1976年に建てられ2009年に再建されたStick Structureは、元々定期的に解体し再構築する予定だった。ディストーションがほとんどないレンズを活かして撮影した。

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1994年に作られたTimber Truss Bridge。

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Timber Truss Bridgeは、手入れをしなくても長持ちするレッドウッドで作らたSerenity Wallに繋がっている。

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ポリ・キャニオンの丘に作られたウォーター・タンクの後から、周辺の景色を眺める。

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2004年に建てられたFratessa Towerに登る。

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ポリ・キャニオンに残る最も古い建物The Shell House。

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完成はしていないが、かなり画期的なシステムを設置していたGreenhouse。

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美しい丘陵地帯のトレイルは、アーキテクチュラル・デザイン・ヴィレッジのかなり遠くまで続いているようだった。デザイン・ヴィレッジへのトレイルの手前で寝袋を背負った学生のグループとすれ違ったが、彼らは遠くまで歩き山奥で夜を越したようだ。私は少しだけ丘の上まで登り辺りを見下ろした後、パーキング場に戻った。

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トレイル玄関口は午後の光を浴び、行きには気が付かなかったものも発見した。

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南西へ向かいトレイルのスタート地点へ戻る。犬連れの女性が私を追い越して行った。

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ポリ・キャニオンを歩いた後は南下し、農産物直売所に立ち寄った。そこには以前から度々訪れていたが、来る度に活気を増し、農作物以外にもジャムやパイ等が売られ、この辺りの名所になりつつあるようだ。この日はクリスマスツリーも売られ、訪問客はウキウキしていて正にホリデーシーズン到来といった感じだった。私も釣られて果物と自家製パイを買い、その後近くのアビラビーチへ出た。20年前にはじめて来た時は何もない印象だったビーチ沿いには公園ができ、ホテルが建っていた。

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農産物直売所には数種の動物が飼われ、次の客を待つポニーがこちらをちらりと見た。

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クリスマスシーズンが到来していた農産物直売所。

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12月でも日中は暖かいビーチ。

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この辺りは、18世紀にスペインから来た宣教師によってワインが紹介されたと言われ、サンルイスオビスポ南のエドナバレーには有名なワイナリーが点在している。海から近く冷涼な空気が流れ込み、シャルドネやピノノワールには適した気候のようだ。私はエドナバレーのワイナリーには立ち寄らず、海岸からロサンゼルスヘ向けてハイウェイ101を南下した。サンルイスオビスポから80kmほど南へ走ると、広大なぶどう畑は夕方の光に染まっていた。海岸線に再び出ると水平線に太陽が沈んでゆくところだった。

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夕方の光を浴びたケンダル・ジャクソンのシャルドネのぶどう畑。

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サンタバーバラの手前で日没となった。

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美しい丘陵地帯に点在する建築物は、古いものは1960年代に建築され、学生達が修繕を行っているようだ。今後、新しい建築物がポリ・キャニオンに現れることを期待したい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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