トレイルの歩きはじめには山陰ができ、朝陽に照らされた枯れ草が浮き上がっていた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:65mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704
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押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。
オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/
斜面にある鉱山跡に朝陽が差し込む光景は、アメリカンウエストそのものだった。ロスト・ホース鉱山(Lost Horse Mine)は、1894年から1931年の間に 10,000 オンス(283.4952kg)以上の金と、16,000 オンス(453.59237 kg)以上の銀 を産出した。現在の貨幣価値で500万ドル以上に値し、成功した鉱山だった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:91mm
家を出てフリーウェイを東へ80kmほど走った辺りで、事故のために午前3時から約1時間半、通行止めに巻き込まれた。寝てしまって前方のトラックに軽く突っ込んだ車、遊び足らず車から下りてフリーウェイでしばらく踊る若者、フリーウェイが開通するまで色々な光景があった。私は、ジョシュア・ツリー国立公園内にある鉱山跡へ日の出前から歩く予定だった。この遅れでスタート地点から陽を浴びての歩きとなり、機材をどう減らして水を余分に持とうか、エンジンを切った車中で考えていた。太陽は国立公園に入る前に昇り、外の空気は既に生温く感じた。西口から公園内に入り舗装された道を21㎞南下、ダート道を1.6㎞走りLost Horse Mine Loop Trail へ到着する。日曜日にも関わらず、トレイル・ヘッドには一台の車も停まっていない。誰にも邪魔されることなく鉱山跡を散策できそうな朝、乾いたトレイルを独り歩きはじめた。
歩き始めて陽射しはすぐに強くなり、歩いてきたトレイルを振り返る。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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鉱山跡に近づくと朽ちた道具を見かけ始めた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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錆びた生活用品が散らばり、朝陽はそれらの物の質感を強調する。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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日焼け止めクリームをたっぷりと顔に塗り3.2㎞を歩いていくと、大部分が山の西斜面にある鉱山跡にたどり着いた。岩をつぶして金を取り出すスタンプミルに朝陽が丁度届き始め、フリーウェイでの1時間半の遅れは、私とって絶妙な時間調整だった。
陰になった斜面の西の高台に上ってみた。石の壁に囲まれていた中を覗いたが何もなかった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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山陰になった斜面を登る。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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朝陽にスタンプミルが姿を現す。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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さらに斜面を登り鉱山跡を見下ろす。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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言い伝えによると、ジョニー・ラング(Johnny Lang)は、ニューメキシコで兄と6人のカウボーイを銃撃戦で亡くした後西へ移動し、1890年に父親とこの辺りにたどり着いた。ある晩、馬がいなくなり探しに行くとメカニー(McHaney)兄弟のキャンプへ行き着いた。ラングは、家畜泥棒のメカニーから馬はいないと言われ退去を命じられた。その後もこの地に残ったラングはメカニーから脅されていたダッチ・フランク(“Dutch” Frank)が発見した鉱脈を1000ドルで購入し、Lost Horseと名付けた。ラングはメカニーからの殺害を恐れ、3人のパートナーを得て鉱山を開発し始めた。1895年、裕福な牧場主J.D. Ryanが鉱山の共同権を購入した。ライアンはスチームエンジンのスタンプミルを10台設置し、彼の牧場の井戸から230m高い鉱山まで、5.6㎞間をパイプでつなぎ水を引き上げた。スチームエンジン用の燃料は、周辺の山で伐採された木が使われ、今でも伐採した跡が牧場跡と鉱山跡の両方に見られる。
結構急な斜面に建つスタンプミル。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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仕組みがよく分からなかったスチームエンジンを見下ろす。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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山陰がなくなり気温が上がった鉱山跡。歩いてきたトレイルも見える。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:18mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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錆びて穴が空いたタンク越しに、ユッカとジョシュア・ツリーが生息する斜面を見る。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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作業は以下のように行われた。金を含む岩を掘り出し、押しつぶして水を加え泥状にする。それを薄い水銀の膜に覆われた銅板上で洗い流すと金が水銀に付いて残る。そこから金と水銀を分離すため精錬する。水銀は再利用され、金はレンガの形に残された。金のレンガは16頭の馬が引く馬車に隠し、西のバーニング(Banning)まで運ばれた。帰りに生活用品を調達する旅(往復209㎞、5日間)は毎週行われた。鉱山では、昼間は野球のボールサイズ合金が得られたが、ラング監督下の夜間はゴルフのボールサイズに留まった。J.D. Ryanは調査員を雇い、ラングが銅板から合金を集める際に半分を隠したことを発見した。J.D. Ryanはラングに刑務所行きか、鉱山全てを売り渡すか迫った。ラングは全てを売り渡し、近くの谷で金脈探しを続けた。
何かを固定するためだったのか、山の斜面にある岩に太いワイヤーが繋がれ、鉱山まで伸びていた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704
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谷底から枯れたジョシュア・ツリー越しに鉱山を見上げる。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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鉱山の北にJ.D. Ryanの牧場から水を引き上げたパイプがきれいに残っている。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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帰り道は誰にも会わず、強い陽射しに何度も立ち止まり大量の水を飲んだ。鉱山跡からはJ.D. Ryanの牧場跡に立ち寄った。ここでは一組のカップルに出会い手を上げたが、暑さのため、会話をする気力がなかった。気温は40℃を超えていたかもしれず、近くのキャンプ場は暑さのためか締まっていた。
J.D. Ryanの牧場跡まで1000m弱だったが、暑さでその倍ぐらいの距離に感じた。
使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 x 3616
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青い空の下で見るJ.D.Ryanの住宅跡。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:25mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:8.96MB
粘土、砂、水で作ったアドベハウス。
使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 x 3616
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ここから鉱山まで水を引き上げた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:18mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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強い陽射しに輝いていた錆びたタンク。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:59mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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鉱山は断層線に突き当る1905年までフルタイムで発掘された。その後ライアンは牧場経営に専念し、1931年に完全に廃坑となった。鉱山が休業状態に陥るとラングは鉱山に戻り、1925年の冬、独り倒れて亡くなった。しばらくしてラングは鉱山近くに埋葬されたが、墓はその後何者かによって掘り起こされた。金が隠されていると信じた者の仕業だという話もあるようだが、ラングは安らかに眠っているのだろうか。
※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。