第152回:カリゾ平原南部の春
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第152回:カリゾ平原南部の春

孫と犬を連れた老夫婦が春の草原を楽しんでいる。長さ約80km、最大幅24kmの大平原の春は、色鮮やかなワイルドフラワーが咲き、暑くも寒くもなく訪れるには一番いい季節だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:105mm

4月初頭、カリフォルニア州最大の草原、カリゾ平原(Carrizo Plain)へ向かった。過去に数回訪れ、強烈な日差しで乾燥した荒野という印象を持っていたが、この日は花が咲く緑濃い平原を期待して暗いうちに家を出た。ロサンゼルスからフリーウェイ5号を北上し、サン・エミディゴ山地(San Emigdio Mountains)北東とテハチャピ山地(Tehachapi Mountains)南西端の間にある標高1,275m のテホン峠を超え、広大なセントラル・バレーに下りる。フリーウェイ5号から州道166号を西へ行き、南北に細長く縦30km、幅5~6kmと巨大なミッドウェイ・サンセット油田(Midway-Sunset Oil Field)南部の小さなタウン、マリコパ(Maricopa)を過ぎて平原南部に入る少し手前で太陽が昇った。東はテンブロー山脈(Temblor Range)、西はカリエンテ山脈(Caliente Range)に囲まれたカリゾ平原の南部に入ると緑の丘の一部に朝陽が当たりはじめていた。

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カリゾ平原の南に入ったばかりの場所から北の方を見る。陽が当たらない草原はまだ肌寒かった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:62mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.93MB

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西の丘に朝陽が当たりはじめる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:26mm
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平原南部の牧場まで来ると朝陽は平原の底まで届き、朝の光に染まった草や花が美しく輝きだした。強い朝陽を受け、さわやかな空気を吸い込むと自然と笑顔になってゆく。草の匂いがぷんぷんする平原の春は強いエネルギーに満ち溢れていた。

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朝陽に染まる平原南部。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
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人も家畜も見ない納屋とさわやかな朝の空気感を同時に切りとる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:32mm
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朝陽でゴールドフィールドがさらに黄色く輝く。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:300mm
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Fremont Phacelia(ハゼリソウ)が咲く丘に立つ。 この空気感に浸ると誰でも心が晴れると思う。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:38mm
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密集して咲いていたFremont Phacelia。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:105mm
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花が枯れ始めたFiddleneckだと思われるが、朝陽は全てを美しく見せてくれる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:62mm
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キク科の黄色い花(Monolopia)がさらに黄色く輝く。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill +SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150mm
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平原南の入口付近のアルカリ性の乾燥湖は最近の雨でぬかるみ、周辺の草や花は元気だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
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平原南の入口から少し北へ入った人も家畜もいない二つ目の牧場には黄色い花(Monolopia)が一面に咲いていた。気温が上がり、私はジャケットを脱いで子供のように歩きまわった。

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平原南の入口付近の牧場跡。家畜を追い込む所だと思うが、物音ひとつしない静かな朝だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:24mm
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家畜がいない牧場跡の丘は黄色に染まり、しばらく腰を下ろした。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm
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長さ約80km、最大幅24kmの大平原を南北に走るソーダ・レイク・ロードを北上してゆくと草や花が少なくなってきた。気温も徐々に上がり、先に行っても春らしい景色がないように思われたので、平原の真ん中辺りまで北上し南へ引き返した。

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平原の中央辺りで見かけた農機具周辺に黄色い花が咲く。背景にサンアンドレアス断層(San Andreas Fault)の影響で隆起した(Dragon's Back Pressure Ridge)が見え、広大な風景だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:46mm
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花を観察していると一時も休まず動きまわるBlister beetleだと思われる昆虫がこちらを見たように感じた。等倍にすると手前の花びらに非常に小さな虫も見える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:150mm
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かつてこの地にたくさん生息していたが、狩りと農場開発のため絶滅状態になったプロングホーン2頭が彷徨い歩く光景は、気温が上がり陽炎で揺れ霞んでいた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:403mm
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白く見えた花に近づくと黄色が混ざった花だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:260mm
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平原では数少ない木は陽射しを避けるには貴重な存在だ。 遠くに見える木の下に車が停まっている所はキャンプ場になっている。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:9mm
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暑くはなかったが強い陽射のため、この辺りで体力を少し奪われはじめた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:105mm
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平原の中央部から引き返し南の入口付近まで戻って来ると雲が出てきた。朝、抜けるような青い空が広がっていた平原はどんよりとした天気に変わった。

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断層ではなく水の流れでできた溝にもワイルドフラワーが咲いていた。 この辺りからどこからともなく雲が流れてきた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
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あまり見なかったルピナスにフォーカスする。 平原南の入口付近の乾燥湖が霞んで見える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:51mm
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メインロードから逸れて上り、断層の影響で突起した谷間を見下ろす。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm
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早朝、強い朝陽に見た乾燥湖はどんよりとした空の下では全く違った土地に見えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100|ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:42mm
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カリゾ平原を出てからは、平原南の保護区(Bitter Creek National Wildlife Refuge)内を走り、フリーウェイ5号に入った。

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黒い鳥が横切る保護区内を走る。 鳥はRed-winged blackbirdと思われる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200|ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:275mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.93MB

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最も高いところで標高2,284mに達するサン・エミディゴ山地を走って帰路に付く。 山の斜面はワイルドフラワーで色づいていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:62mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:16.90MB

この日、2001年1月にナショナル・モニュメントに指定されたカリフォルニア最大の平原、カリゾ平原の南部を少しだけ散策したが、ワイルドフラワーが咲く光景は目に焼き付いた。もう一月もすると気温が急激に上がり花もなくなるだろう。大平原を訪れるには春が一番いい季節だと思う。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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