押本龍一－私の出会う光景－第146回：ヨセミテのクリスマス

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

前日の積雪でヨセミテバレーはきれいなホワイト・クリスマスになった。この日の空は雲に覆われている時間が長かったが、私が教会の前に来た時、雪が眩しいぐらいに陽光が差し込んだ。

12月24日のクリスマス・イブのヨセミテは午後から雪が降り、夜までに20cmの積雪だと数日前の予報は伝えた。クリスマスをヨセミテバレーで過ごすのが長年の夢だった私は、大した支度もせずに24日の朝、犬と家族を連れてヨセミテへ向かった。ロサンゼルスとサンフランシスコの都市群の中間地点であるフレズノから州道41号を北上し始めると雨が降り出し、シエラネバダ山脈麓のタウン、オークハーストの手前で雪に変わり、少し上って行くと「チェーン必須」と書かれたサインが現れた。チェーンを装填して車の中に戻るとしばらく寒さで指が動かない。シエラ国立森林公園の手前でチェーンの検問があり、急に雪が激しくなり視界が悪くなった。気温が急激に下がり道路が凍結し始めて、木に激突したり山の斜面に突っ込んだり走行不能になる車が続出し、ニューヨーク州のバッファローから来た若者は「こんなに急激に凍結した道は見たことがない」と言っていた。私の車も滑って回転し、車の後方が山の斜面に突っ込んだが、幸い大したダメージもなく済んだ。ヨセミテ国立公園南の入り口に何とかたどり着いたが、公園の外に宿を取っていた私は、公園内に入ってすぐに来た道を引き返し宿へ向かった。

ヨセミテ国立公園の南の入口「Wawona」で引き返す。

州道41号線は凍結して公園の入口付近は何箇所か通行不可能になり、この日宿にたどり着けるか不安になった。

宿は公園外の西側にあった。南の入口「Wawona」で、パークレンジャーが公園内に入って行くより引き返した方が1時間はやく着くと言うので来た道を引き返したが、オークハーストでチェーンの取り外しに問題が生じて1時間のロスタイム。そこからマリポサに北上する州道49号線は吹雪となり再びチェーンを装填し低速度で走る。夜9時に宿へ到着すると駐車場への坂道には雪はなく再びチェーンを取り外す。翌朝は道路が凍結しているので少し遅いスタートだった。前日と違うマーセド川沿いの州道140号を走り公園に向かったが雪があまりなく公園の少し手前でチェーンを装填しながら「前日もこの道で来れば吹雪の公園内を散策できたかもしれない」と思った。

予報に反して朝陽が差したコテージ周辺。

公園内に入ると銀世界になりマーセド川を見下ろす。

公園内に入ると周囲はきれいな雪景色になったが、道は除雪されて凍結もなく走行には全く不安がなかった。ヨセミテ国立公園で最も人気の高い場所のトンネルビューに行くと、前日に凍結して事故が多発した公園南の入り口からもトンネルを潜って車が続々と到着していた。私は沢山の訪問客で賑わうクリスマスのヨセミテバレーをのんびりと散策した。

天気予報では曇り時々雪だったが、少しだけ晴れ間が見えたトンネルビュウ。

ぴょんぴょん跳ねるように歩いていたキツネが一瞬止まった瞬間を捉える。

アワニチ族は「ポホノ」という守り神いると信じた高さ188mのブライダルベール滝。

ヨセミテバレーで私が一番好きな場所「バレービュー」。予報通り曇ってきたが微かな光がエル・キャピタンに差した。

シエラネバダ山脈の一部を成すクラーク山脈の標高2,444m付近から流れてきたマーセド川。川岸に近い部分は薄い氷が張っていた。

花崗岩の一枚岩であるエル・キャピタンにスポットライトが当たる。

樹の枝に積もった雪が落ちる音が賑やかしくそこら中から聞こえてきた。

3段から成っているヨセミテ滝の上段を眺めるとマーセド川にも滝が映り込んでいた。

落差440mのヨセミテ滝上段の滝。虹が出ている部分を切り取る。

クリスマスのヨセミテバレーは、晴れたり曇ったり。

氷が張ったマーセド川に雪が積もっていた。水深が浅いので心配がないのだろうか、若者が張った氷を割ろうとしていた。

1879年に建てられたヨセミテバレーチャペル。

マーセド川を渡るノースサイドドライブからハーフ・ドームを眺める。ヨセミテバレーの谷底からの高さは約1,225mで標高約2,680m。

陽を失いかけたヨセミテ滝（上段）を見上げる。

雪だるまにこの日最後の光が差していた。

予報では曇り時々雪だったので明るい写真は撮れないだろうと思っていたが、雲が切れてヨセミテバレーに光が届いたのはラッキーだった。きれいな夕焼けも期待したが、午後3時頃には空は雲に覆われてしまった。

雲は低く幻想的なエル・キャピタン。微かに陽の光が届いていたので雲が切れるかと期待したがこの後すぐに暗くなった。

陽の光が雲に遮られて幻想的なトンネルビューの夕暮れ。

今回は家族も犬も同行し、期待していなかった晴れ間もあったのでそれなりに満足した。しかし、クリスマス・イブには雪が降り急激に気温が下がって道路が凍結して事故が多発し、苦労して乗り込んだので、欲を言えばもう少し雪が積もっていて欲しかった。雪のヨセミテを撮るには、大雪が降る前にヨセミテバレーに入って備えるのがいいと思う。次回は周到に準備して訪れたい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ（X3F）を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。