使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:17 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:12.32 MB
押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。
オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:モノクローム (ex-晴れ) | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:9 mm
標高1,700mから3,400mの地域、森林限界のすぐ下の低温で乾燥した土壌に生息し、短い生育期のためゆっくりと成長し、非常に密で樹脂質のため昆虫、菌類、他の害虫の侵入に耐久性が強く、樹齢4,800年以上の木も存在すると言われるブリッスルコーン・パインの森を歩いた。ビジターセンターに戻ると、「じっくり時間をかけて戻って来たのね、いい写真撮れましたか?」と、案内係りのフレンドリーな女性が微笑む。「ブリッスルコーン・パインは、どうしてそんなに長く生きられるのですか?」と訊くと、「競争相手がいないから」と、シンプルな答えが返ってくる。そして、彼女は雪にカバーされた冬のホワイト山脈が一番好きだと言う。「冬はホワイトマウンテン・ロードが通行止めになりますね。いつからですか?」と訊くと、「お昼までに溶けないぐらいの雪が積もったら」と言う。本格的に雪が積もる前、雪化粧をしたホワイト山脈のブリッスルコーン・パインの森をタイミングよく見に来るのは、山麓近くに住んでいないと難しそうだ。もう一つの長いトレールを歩くには疲れすぎていた私に、「ビジターセンターから少し車を移動させ、そこから徒歩で15分の距離にブリッスルコーン・パインの森の中に鉱山跡があるから行ってみたら?」と彼女は提案した。
ビジターセンターから南へほんの少し下った道沿いに駐車場のサインがある小さなスポットに車を停め、鉱山跡を目指して歩き出す。空の雲は流れがとても速く、晴れたり曇ったりを繰り返えし、山の色はその度変わった。雷雲だけは来ないで欲しいと願いながらトレールを歩いて行くと、西日が当る斜面に鉱山跡のキャビンが見えてくる。金と銀を求めた人々によって1863年に開かれた鉱山は、標高3,000mの高地の厳しい気候下で、成功はしなかった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-150mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:118 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.93 MB
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.42 MB
鉱山跡から南に約8km下ってキャンプ場に戻ると、半分近くのサイトはまだ空いている。西の空は厚い雲に覆われ夕焼けは望めそうもない。夕飯の支度をしながら乾いた喉にビールを流し込み、今日の活動は終了!あとは食べて飲んで眠くなるのを待つだけだと思う。夕食が出来上がると、西の空の下の方だけ雲が切れはじめ、山の下に沈んだ陽の光で赤と黄色に染まった夕焼けが見え出した。私は、慌ててキャンプ場を抜け出し、眺めのいい場所まで車で北に上った。神秘的な夕焼けをカメラに収めた後キャンプ場に戻ると、薪に火を付け少し遅れた夕食にありつく。高地のため軽い頭痛を感じた私は、2本目の缶ビールを飲みきれずに早い時間から寝袋に潜った。夜中、テントに当たるパラパラという雨の音で目が醒め、時計を見ると午前1時だった。テントから外に出ると、空は雲に覆われ月も星も見えない。予報ではこの夜晴れだったので、これ以上雨は強くならいと信じ再び寝袋に潜る。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.58 MB
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:4.75 MB
翌朝、ビジターセンターの先を北に行った風景を見ようと、一気にテントをたたみキャンプ場から出て暗い山道を北に上がる。ビジターセンターを通り越すと、ホワイトマウンテン・ロードはダート道に変わった。陽が昇る前、東の空には雲がかかり、きれいな朝焼けは見られなかったが、陽が昇って少しすると東の空を覆っていた雲は動き出した。ダート道を北へ8kmほど走った地点で、朝の陽の光が差し込み、シルエットになった岩山斜面に立つ一本のブリッスルコーン・パインに惹かれ、ごろごろした岩山に車を寄せる。
使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:4.82 MB
使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.81 MB
使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.95 MB
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:11 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.32 MB
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム (ex-晴れ) | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:4.64 MB
岩の斜面を上がり下りすると多少息は切れたが、高い標高にも体が馴れてきて頭痛も消えていた。「長く生きる木、特にブリッスルコーン・パインは常に人々を魅了してきた。多くの先住民文化では、古い木が宗教儀式の中で重要な役割を持っていた。長く生きる古い木は、世界の普遍的なシンボルである。今日まで、ブリッスルコーン・パインのような古く雄大な木は、永遠の自然力、長寿、困難を乗り切る能力の生命の象徴とされてきた。」とある資料に書かれているが、朝陽を浴びたブリッスルコーン・パインは、いくら眺めていても飽きることはなく、一本の木に魅せられ、2時間半も誰も来ない岩の斜面にいた私は、9km先の北にあるもうひとつのブリッスルコーン・パインの森に行くのを諦め、キャンプ場に引き返した。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F13.0 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.60 MB
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-150mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:150 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.82 MB
キャンプ場に戻ると奥に続くダート道に車で入って行く。ビジターセンターで、鉱山跡がキャンプ場の奥にもあると聞き、その道沿いは自由勝手にキャンプができるとも聞いたので、その辺りを散策しようと思ったのだ。山道に入ってすぐ大きな石が狭い道の真ん中にある。いったんは引き返そうと考えたが、何とか乗り越え、歩くより遅い速度で車一台がやっと通れる山道を下って行く。山道沿いにキャンプが出来るサイトがいくつかあり、その一つのサイトにトラックが停まっている。帽子をかぶり椅子に座った中年男性が手を上げるので、私も手を上げてその場をゆっくりと通り過ぎる。こんな山奥でキャンプをする人間は、本物のアウトドアー派だと思う。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-150mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:76 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.51 MB
使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:23.35 MB
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 12-24mm F4.5-5.6 II DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:12 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.45 MB
山道はさらにラフになり、数メートルごとにブレーキを踏んで止り、また下り進むが、鉱山跡がなかなか見えて来ない。山道はさらに狭くなり、これ以上下ると戻れない危険性を感じ、鉱山跡を見るのを諦めて後向きで引き返しはじめる。後ろ向き運転で戻りはじめると、間もなく山道から少し出てしまい、そこから車が出れなくなった。山道に上がろうと奮闘するが、砂地でどうにもならない。手を上げて挨拶を交わした男性に助けを求めて20分ほど山道を登って行くと体中汗びっしょりだった。男性はダンと名乗り、気軽に力を貸してくれた。ダンの大型トラックで私の車が山道から砂地に落ちた地点まで下る。ダンの行動は見事だった。タイヤの空気を少し抜き、大柄な彼が車を押し、私がアクセルを一杯に踏むと、山道に戻ることが出来た。トラックで引っ張らずに砂地から脱出し出来た。タイヤの空気圧を下げることで砂地から出やすくなるのだ。抜いたタイヤの空気は、車のバッテリーから電気を取るポンプで空気圧を戻した。彼は、アラスカのユーコン川をカヤックで一人旅をした時の経験も話してくれ、アウトドアーの知識と経験が豊富な男だった。車は、アクセルを目一杯踏み続けて砂地から脱出したので、制御装置が働いてしばらくエンジンが動かせず、私は、エンジンが冷える間に鉱山跡に行ってみた。鉱山跡の場所もダンが教えてくれ、この辺りには幾つもの鉱山跡があり、彼は、北カリフォルニアで3年間鉱山を保有していたことがあると言った。
使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:モノクローム (ex-晴れ) | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.69 MB
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.17 MB
森から無事キャンプ場まで戻ると、たたんでテントのないサイトで、この日はじめての簡単な食事を取る。丁度昼時だった。車が山道から外れ砂地から出れなくなった直後、この夜、鉱山跡近くの森での宿泊も脳裏に浮かんだ。ダンに出会わなければ、私のこの日の午後は、かなり惨めなものになったはずだ。標高3,000m以上の地で、朝陽を浴びたブリッスルコーン・パインは美しかったが、森での一人の男とのに出会いも美しい思い出となった。
※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。