押本龍一－私の出会う光景－第183回：オレゴン州南部から南の海岸へ

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

オレゴン州にある淡水湖のアッパー・クラマス・レイクはニジマス釣りが盛んだ。湖西岸の入り組んだ地形には幾つかのクリークがあり、そこはカヌートレイルになっている。周辺には深い森が控え、湖岸にいると澄んだ空気と水に癒やされ夏の暑さを忘れる。

暑い日照りが続いていた7月中旬、私は澄んだ空気と青い水を求め、犬を連れてオレゴン州のクレーターレイクへ向かった。LAの自宅を午前3時に出て最短距離（1200 km）を走り、湖南岸に到着したのは午後5時だった。太陽はまだ高かったが、半袖では少し寒く薄手のジャケットを着た。カルデラ湖であるクレーターレイクはオレゴン州中南部に位置し、1902年に設立されたクレーターレイク国立公園内にある。公園（面積741 km²）において湖（面積53 km²）の締める面積は10%に満たないが、公園内のメインアトラクションだ。約40万年前に誕生し高さ約3400mに達したマザマ山は一時期火山活動を休止していたが、今から約7700年前に大噴火を起こし、その際山の上部が崩れてカルデラが形成された。そこに雨水や雪解け水が溜まり湖になった。

透明度が高いクレーターレイクの湖面の標高は1883m 。最深部は655m、アメリカ国内で一番深い湖だ。

6年前の夏至の日に来たときは雪に覆われていたが、湖周辺は所々に雪が残っているものの元気のいい草が生え、夏山の風景があった。

湖南岸から見ると湖の西端にウィザーズ島が見える。島の頂上は標高2113mで湖の水面からの高さは230m。ここからは見えないが噴石丘で火口もある。

Flycatcher(ヒタキ科)だろうか。リストを調べてみると湖周辺は多種類の鳥が生息し、目立った特徴がないと私には鳥の種類がよく判別できない。

湖の周りには古い松が生えている。この木は枯れていると思うが、根っ子の部分がむき出しになって非常に存在感があり、単焦点レンズで正面からしっかりと撮りたくなる被写体だった。

翌日、オレゴン州の中南部から海岸へ向かう私は、クレーターレイクには長居はせず、湖南岸から100km南下したクラマスフォールズにあるモーテルに向かった。本来は湖から30km南のフォートクラマスに宿を取りたかったのだが、ペットも一緒に泊まれる宿はどこも満室だった。フォートクラマスは、先住民族モードック（Modoc）族が合衆国の民族浄化に反抗したモードック戦争（1872年から1873年）中、アメリカ陸軍の砦が築かれた場所で美しい草原が広がっている。

クレーターレイク国立公園の南には広大な放牧地が広がっている。

夕陽を浴びた一頭の馬が草を食んでいた。レンズを向けるとこちらを見たが、邪魔をしたくなかったのですぐにこの場を去った。

5年前に立ち寄リ、コーヒーとドーナツを買ったフォートクラマスにあるストアーは閉まっていた。隣のガソリンスタンドもその時は営業していたと記憶するが、その記憶に100%の自信はない。

7月の平均気温は最高気温29.9度、最低気温10.3度と温度差が激しい標高約1250mのクラマスフォールズの夜は暑くも寒くもなく、湿度が低いので爽やかだった。前日のロングドライブの疲れがあったので翌朝は遅めにスタートし、南北に長いアッパー・クラマス・レイクの南岸から西岸を北上し、国有林内に含まれるリゾート地であるロッキーポイントまで上った。

アッパー・クラマス・レイク西岸の朝。暑くも寒くもなく非常に爽やかだった。水面の標高は1200mで水面はとても穏やか。平均水深は4.5mに満たず浅い湖だ。

アッパー・クラマス・レイクに注ぐクリーク沿い。旅に連れて行ったハスキー犬をしばらく遊ばせる。

親子がカヤックを漕ぎ、カヌートレイルを進んで行った。

ボートに乗る二人は父親と息子に見えた。

オフリーシュの犬は好きなように動き回り、何とも平和な光景だった。

ロッキーポイントの周辺は国有林が広がり、森と湖の澄んだ空気が嬉しい。

森からカヌートレイルになっているクリークを見下ろすと、クリークから心地よい風が吹いてきた。

アッパー・クラマス・レイク西岸のクリーク沿いから西へ276kmを走り、カリフォルニアとの州境に位置する海岸線の街ブルッキングスへ移動した。一旦カリフォルニア州に入り、スミス川沿いを走る道はカーブが多く時間がかったが、川沿いで遊ぶ人々の楽しそうな姿が見え、何度か車を停めた。

スミス川にかかる橋から撮影。川岸の砂地をビーチと呼び、地図上でここもMyrtle Beachと表記されていた。

ハイウェイ101号線に出会うとそこから北上して再びオレゴン州に戻り、目的地ブルッキングスに到着した。チェトコ川を渡ったハイウェイ沿いのモーテルでチェツクインを済ませた後、チェトコ・ポイントという太平洋に突き出した岬とチェトコ川の河口にある港へ行ってみた。チェトコという地名は、チェトコ川の河口から下流に住んでいたチェトコ族に由来する。

ここから太平洋に突き出した岬の先端まで短いトレイルを歩く。

岬下の海岸と岬の上へ行く分かれ道に「危険地帯、ここからは自己責任で」と書かれた警告のサインが立っていた。私は右手のトレイルを登リ岬の上まで行った。

岬に向かうトレイルには小さな橋がかけられ、釣り人が海岸を見下ろしていた。この後釣り人はここから引き返し、岬の下の岩場に向かった。

岬の先端に到達。岬の先は大きな岩の島があった。かなりの高さがあり、ここから岩場に落ちたら命がないと思う。

岬から南にあるブルッキングス港へ移動した。

ブルッキングス港はとても静かだった。海岸には霧もなく、私は美しい日没をどこで迎えるか考えていた。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ（X3F）を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。