第96回:ロスパドレス国立森林公園(Los Padres National Forest)の冬
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第96回:ロスパドレス国立森林公園(Los Padres National Forest)の冬

海岸から山道を70㎞あまり上って行ったロスパドレス国立森林公園から南西方向を眺める。陸から35㎞ほど離れた太平洋上に位置するサンタクルース島(Santa Cruz Island)が、実際の距離より近くに見える。白く霞んだ海は雲海に見え、島は陸続きだと錯覚した雄大な光景だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:85 mm

101フリーウェイを西へ走り、山を下って平野部に出る。まだ暗い早朝、海岸線まで来るとすぐにフリーウェイからカリフォルニア州道33に入り北上した。小高い山に囲まれたオーハイ・バレー(Ojai Valley)に入り、ガソリンスタンドで給油をしてコーヒーを買い、小さな町オーハイ(Ojai)まで来ると、ようやく東の空が白々と明るくなりはじめた。車を停め、薄いコーヒーを片手に人影のない町を少し歩く。気がつくと東の空は鮮やかな朝焼けに変わり始めた。

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スパニッシュ・コロニアル風の建物が特徴のオーハイの町。塔は郵便局の一部。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/8秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:25 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:7.82 MB

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朝焼けが美しいゴルフ場。すでに数台の車がクラブハウス前に停まっていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/50秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:22 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.91 MB

カリフォルニアの海岸線は海を眺めて走るのが自然だが、海岸部の近くから内陸部の奥まで深く連なっている山々もまた美しい風景だ。この日、私は海岸から離れ、ロスパドレス国立森林公園に入った。美しい朝焼けを見たオーハイを超えて州道33を北上し、マティリア・キャニオン(Matilija Canyon)へ続く細い道に入る。地図上では、以前に行ったことがある大きな湖に続いている道は、小さな冒険心を抱かせてくれたが、奥に入って行くとランチに突き当たった。リーシュをつけない犬と散歩をする若者が、この先はプライベートだから行き止まりだと教えてくれる。私はこの先も探求したかったが、潔く諦めて来た道を戻った。

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マティリア・キャニオンに入るとすぐに朝陽が差し始める。 大きなテントが見えたマティリア・クリークに近づきたかったが、ゲートには鍵がかけられ、リトリートセンター的な組織が管轄しているようだ。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:200ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.52 MB

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硫黄の匂いがしてきた付近。マティリア・クリークは温泉が湧き出し、以前は自由に出入りできた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.66 MB

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行き止まりから引き返すと、路面が朝陽に染まっていた。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:17.92 MB

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小さなダムにせき止められたマティリア湖。鳥の鳴き声が賑やかに聞こえてくる湿地帯が広がっている。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:200ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:19.28 MB

マティリア・キャニオンから州道に戻り北上して行くと、険しい山岳地帯ではないが、少しずつ標高を増し、海岸付近よりだいぶ高い所に来たと周りの風景から感じとれる。

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青い空と枯れたユッカは、私には冬の景色の一部だが、この斜面を雪が覆うことは普通考えられない。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:22.34 MB

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穏やかな山が連なるロスパドレスの典型的な森林の風景を、大口径望遠ズームレンズで切りとる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-150mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:200ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:150 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.24 MB

くねくねと曲がる州道を上って行くと、「ローズ・バレー(Rose Valley)へ」と書かれたサインが立ち、東へ下って行く道が出てくる。あまり変化のない風景に少し飽きていた私は、ローズ・バレーへ向った。

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枯れても存在感があった花が、微風に揺れていた。大口径中望遠マクロレンズで花の一点にフォーカスする。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:200ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:105 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.09 MB

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12月になっても緑が濃い草が、道端に壁のように生えている。大口径望遠マクロレンズで、冬らしからぬ光景を切りとる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:150 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:16.02 MB

道は東に下って行き、馬が自由に動きまわるランチまで来ると、そこには冬と言うより秋の光景があった。白い2頭の馬にレンズを向けていると、ローズ・バレーの方から1台のピックアップ・トラックが走って来て私の目の前で止まり、ハンターらしき2人組が「鹿でも撮っているの?」と訊いてくるので、「きれいな風景をカメラに記録しているだけですよ」と返すと、「いい撮影を!」と言い、大きなエンジン音を残して消えて行った。

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高倍率超望遠ズームレンズを持ち、黄葉した葉越しに2頭の馬にフォーカスする。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:200ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:500 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.10 MB

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冷え込んで朝から気温が上がり、秋晴れのような天気にコットンウッドが映える。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F13.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:16.87 MB

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道端に何かがキラキラと光る光景が目を引き、低木にフォーカスし背景をぼかし、その時の気持ちを残した。キラキラと光っているのはマナー違反である割れたビンの欠片。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-150mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:200ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:150 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.39 MB

ローズ・バレーに到着するとまだ秋の色が残っていた。2つのキャンプ場に立ち寄った後、ローズ・バレーの先に進み、セスプ・クリーク(Sespe Creek)沿いのトレールを少し歩く。トレール・ヘッドに2台の車が停まっていたが、トレールを歩く人の姿はなく、冷え込んだ朝の気温は汗をかくまで上がった。

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小さなキャンプ場には、1組のキャンパーがいるだけだった。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:21.97 MB

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セスプ・クリークの支流、ミドル・ライオン・キャンプグランド付近に、全く予想しなかった秋の風景が見られた。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:19.05 MB

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誰もいなかったミドル・ライオン・キャンプグランド。絞り開け気味にして、輝く落ち葉を強調。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F2.2 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:6.64 MB

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水のないセスプ・クリーク。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F13.0 | 焦点距離:20 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:19.15 MB

ローズ・バレーに戻り、ローワー・ローズ湖と書かれたサインの方向に進む。湖は見えてこないが、水のない少し窪んで低くなった土地が湖だとサインで知る。水のない湖周辺は、草木が枯れ、紅葉した木はなかった。銃声が時より響く。近くに射撃場があるがそこには人影はないので、この辺りは狩りが許可されているのだろうか、あまり好きな音ではない。雲が空を覆い始め気温も下がってくると、ローズ・バレーは一気に冬らしくなり、美しい夕焼けも期待できそうもないので、私は山を下ることにした。

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ローワー・ローズ湖から、枯れたコットンウッドにレンズを向ける。冬らしい光景がやっと撮れた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.28 MB

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水のない湖底の表面を上からシャープに切りとる。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出ISO感度:100ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:27.94 MB

1542年、探検家フアン・カブリロ(Juan Cabrillo)が、カリフォルニアに到着した頃、この辺りの海岸線と内陸部の森林を占領していたチュマシュ(Chumash)族は、海と陸から恵みを得ていた。森林公園に指定されている緩やかな山岳地帯には、クリークが流れ美しい樹木が生息している。この日、私は冬の景色を見に来たが、紅葉が見られたのは予想外だった。海と山の風景を一日で体験できる森林は、まだまだ奥が深そうだ。いつか花が咲く春にテントを持参して訪れてみたい。キャンプ場で夜空を眺めると、天文学の知識を持っていたチュマシュ族の心に触れられるかもしれない。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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