押本龍一－私の出会う光景－第89回：オレゴン州バチェラー山（Mount Bachelor）周辺の夏

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

7月の暑い日、女性がボートを漕ぎ湖に出て行く。カスケード山脈（Cascade Range）の山々が迫るオレゴン州デシューツ(Deschutes)群に位置するスパークス湖（Sparks Lake）の水深は浅く、夏場の水遊びには最適な湖だ。

クルックド川（Crooked River）の浸食によって形成された鋭い岩峰で、ロッククライマーを魅了するスミス・ロック州立公園(Smith Rock State Park)を訪れた後、42㎞ほど南下してベンド（Bend）という街に宿泊した。愛犬を連れて旅する私がベンドを宿泊先に選んだのは、この街がドッグ・フレンドリーとの情報を得ていたからだった。

7時半を過ぎても陽は沈まず暑かったオレゴン州のモーテルでプールに浸かる。夕方の光を浴びた赤い椅子が、プールの水面に揺れて映っていた。

強い陽射しで日中はかなりの暑さとなったオレゴン州の内陸部は、陽が落ちると気温が下がりモーテルの角部屋の窓からは心地良い風が流れ込み、快適な夜にぐっすりと眠る。翌朝、オレゴン州では珍しい南から北へ流れるデシューツ川（Deschutes River）沿いにあるオールド・ミル・ドッグ・パーク（Old Mill Dog Park）に愛犬と向かった。パークに到着すると飼い主が川に投げ込んだボールを追い、川岸から犬たちが川に飛び込みボールをくわえて川岸に戻る行動を繰り返していた。

ドッグ・パークに向う途中に見た花畑は、どこにレンズを向けても美しかった。

デシューツ川沿いに咲くヒマワリ。川の向こうはバチェラー山。

デシューツ川から上がって来た犬が、体を大きく振って水を切る。ドッグ・フレンドリーの街らしい光景だった。

デシューツ川を上手に泳ぐ犬。

ドッグ・パークからモーテルに戻ると、愛犬を部屋に残し朝食を調達しにフロントデスクに行く。宿泊したモーテルは朝食付きで、コーヒーとジュース、ドーナツと数種類のパン、それに果物がフロントデスクの横に用意され、そこに置かれていた3個の小さなテーブルはヨーロッパからの旅行者に占領されていた。私はコーヒーとドーナツを部屋に持ち帰るとすぐにチェック・アウトを済ませ、ベンドからカスケード・レイク・シーニック・バイウェイ（Cascade Lakes Scenic Byway）を西へ走った。よく舗装されたバイウェイには自転車が快走し、空気は澄み渡って万年雪が眩しいバチェラー山が鮮明に見え、何をするにも最高の天気だった。

スキー・リゾートとして有名な標高2,764 mのバチェラー山（Mount Bachelor）に向うようにして、カスケード・レイク・シーニック・バイウェイを走る。

冬季は通行止めとなる辺りで、マウンテンバイクの長距離レースが行われていた。

南西にバチェラー山を見ながら、カスケード・レイク・シーニック・バイウェイの冬場は通行止めとなる辺りに差し掛かるとスパークス湖が見え、湖に近づくと色鮮やかなボートが湖に浮かんでいた。

水深平均30 cm、最も深いところでも水深2 mのスパークス湖。

犬を乗せたボートが、湖周16 kmの湖に出て行く。

スパークス湖から離れていくと、道は大きくカーブして南に向かい、6.5 kmほど走ると大きなエルク湖（Elk Lake）が左手に現れる。私は湖の東岸に移動してランチを取り、湖岸の光景をカメラに記録しながらしばらく夏の湖を楽しんだ。

スパークス湖近くのデビルズ湖（Devils Lake）。美しい青緑色に惹かれ車を停る。

エルク湖の水深は深く平均で3.7 m、深いところは19 m。ライフジャケットを着て元気に遊ぶ子供にデジタル専用大口径望遠ズームレンズを向ける。

同系色の石ですぐには気がつかなかったカエル。

Crayfish（ザリガニ）！と湖畔で遊ぶ子供達が叫んでいた。大口径中望遠マクロレンズで小さな目にフォーカスしてシャッターを押す。

大口径望遠ズームレンズを持ち、湖岸を飛び回る小さなトンボを追う。画像を良く見ると交尾するトンボが写り、肉眼では全く見えなかった小さな世界がセンサーに焼きついていた。

湖岸を走り、湖を出たり入ったりを繰り返す犬。

エルク湖でしばらく過ごした後、カスケード・レイク・シーニック・バイウェイを南に走り、U.S.ルート97に入りさらに南下してオレゴンを後にした。

シーニック・バイウェイから少し逸れると緑色の川が勢いよく流れていた。

山火事の影響だろうか。木が大量に倒れて死んだようにも見える光景をモノクロにした。

長さ32 km、幅12.9 kmのオレゴン州最大の淡水湖であるアッパー・クラマス湖（Upper Klamath Lake）沿いを走る線路の上に立つ。

オレゴン州南部の街クラマス・フォールズ（Klamath Falls）周辺は林業の盛んな地域。

バチェラー山は、北に位置するスリー・シスターズと呼ばれる連なる3つの火山から離れて単独で存在していることから、その名前の由来があるようだ。火口からの噴火で溶岩や火山砕屑物（かざんさいせつぶつ）が積み重り形成された円錐状の成層火山周辺には多くの湖がありクリークが流れ、豊かな自然が味わえる。冬は雪によって道が閉ざされる区間も多いが、周囲を雪に覆われたバチェラー山周辺も散策したい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ（X3F）を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。