第84回:カーン・リバー(Kern River)
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第84回:カーン・リバー(Kern River)

シエラネヴァダ山脈南部の標高約4,000mに水源を発し、マウント・ホイットニー(Mount Whitney)付近の雪解け水を得て南へ流れるカーン・リバーは、カーン盆地で川幅を広げ流れも緩やかになっていた。砂地の川岸へ近づくと、夕方の陽光を背中に浴びた女性が釣りをしている。私は望遠ズームレンズをしっかりと持ち、夏の到来を感じる光景を切りとり夏本番に備えた。

使用機材:SIGMA SD1 + 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:300 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:8.1 MP (4698 x 1724 | ファイルサイズ:5.34 MB

6月中旬、ロサンゼルスから180kmほど北に位置するベーカーズフィールド(Bakersfield)から、州道178号を北東へ向かった。シエラネヴァダ山脈の雪解け水で勢いよく流れるカーン・リバー沿いを少しずつ上って行くと、上から下って来る対向車の中には制限速度をはるかに越え、流れ落ちるように走って来る車とすれ違う。日頃から安全運転を心がけていると信じる私は、「川下りと勘違いしているのかー」と心の中で叫んだが、カーン・リバーの川下りは釣りと共にこの地域の大きなアトラクションとなっている。

thumbnail-02

大きな石が散乱しているカーン・リバー沿いを走る。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 3136 x 4704 | ファイルサイズ:19.17 MB

thumbnail-03

丘の中腹まで登るとヘリポートに出た。太陽を入れ込み、強い陽射を受けるヘリポートにフィッシュアイレンズを向ける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:10 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.13 MB

thumbnail-04

カーン・キャニオン・ロード沿いの乾燥した丘に、吹流しがひときわ目立っていた。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.97 MB

ダムによってせき止められたイザベラ湖(Lake Isabella)に来ると標高約760mの湖畔に出た。砂地の湖畔に人影はほとんどなく風の音だけが聞え、大きな貯水湖は海と同じ色に見える。

thumbnail-05

土でつくられている堤防ダムのイザベラ•ダムは二つのダムから成っている。写真はメインダムで、農業用水を提供し洪水を防いでいる。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:17.19 MB

thumbnail-06

非常に乾燥した土地で、海と変わらない青い湖は見るだけで心を潤してくれた。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.91 MB

thumbnail-07

ビールを飲んでボート事故を起こす人も多いと聞くが、この時、昼から開いている湖岸のバーに客はいないようだった。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:16.63 MB

イザベラ・ダムの少し手前で東へ向う州道178号と分かれ、イザベラ湖の西岸沿いを北へ行くと、川下りのラフティング (rafting)の中心地であるカーンビル(Kernville)に到着する。レストランや宿泊施設が整いラフティングのサインを見かける標高813 mの小さなタウンの観光客はまばらだった。カーンビルを過ぎてさらに北上するとすれ違う車がほとんどなくなり、幾つかある川縁のキャンプ場もがら空きで、地区によって学校はすでに夏休みに入っていたが、まだ夏のシーズンが始まってはいなかった。

thumbnail-08

カーンビルを過ぎるとカーン・リバー周辺には山しかなく、川に足を浸けて超広角ズームレンズを覗き込む。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.87 MB

川沿いの道、カーン・リバー・ハイウェイを北上して行くと、カーン・リバーに短い橋が架かっていた。橋から見下ろす川の色が色鮮やかで、橋を渡るとすぐの駐車場に車を停め川沿いのトレイルを歩いた。トレールに下りる地点に立つ看板には「人工のルアーのみ、マス2匹まで、ミニマム14インチ」と書かれ、釣り人には人気の場所のようだったが、この時釣りをしている人は見なかった。トレールには、川を見下ろしながら歩くすばらしい景色が広がっていたが、強い陽射しのせいか頭痛がしたので遠くまでは歩いて行かなかった。

thumbnail-09

車が入り込めないように大きな石が置いてある歩行者用の橋を渡り、川沿いに下りて行く。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.14 MB

thumbnail-10

橋から川を見下ろすと川で遊ぶ人達がいた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:22.87 MB

thumbnail-11

川を見下ろしながら歩くトレイル。超広角ズームレンズで、川が曲がる地点を大きく写しこむ、

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:17.12 MB

橋からさらに北上すると道はどんどん上り、標高1,500mぐらいまで上った地点で引き返し、橋の手前から東へ行く道に少し入った。標高2,000mにも満たない山中で標高3,000mぐらいに感じたのは、乾燥した夏山からしばらく遠ざかり、水分補給を怠って行動していたのが頭痛の原因だったと思う。

thumbnail-12

東に大きく傾いていた木。根元の周りが崩れていたがこのまま倒れてしまうのだろうか。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.38 MB

thumbnail-13

カーン・リバーに流れ込むサウス・クリークが小さな滝(South Creek Fall)となっていた部分。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 3136 x 4704 | ファイルサイズ:17.42 MB

thumbnail-14

パイン・コーンが沢山落ちていたセコイア国有林(Sequoia National Forest)。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-150mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F3.5 | 焦点距離:150 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.21 MB

thumbnail-15

乾燥した山肌。山火事の危険度を示す表示は、この日最大だった。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:27.35 MB

thumbnail-16

セコイア国有林の夏は非常に乾燥し、指定された場所以外で火を起こすことは通常禁じられている。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.63 MB

カーン・リバー沿いを上って来た同じ道を今度は下って行くと、傾きかけた太陽によって渓谷は違う世界に変わっていた。

thumbnail-17

非常にドライな砂漠地帯でもよく見かけるWhite Prickly Poppy。陽の光がスポットライトとなり、白い花を浮び上がらせていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1600秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.25 MB

thumbnail-18

午後の光が差し込むカーン・リバーと釣りをする少年。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:22.61 MB

thumbnail-18b

カーン・リバーに光と影の世界を見た。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 3136 x 4704 | ファイルサイズ:13.89 MB

thumbnail-19

岩場に生息する松の木を日陰になった川縁から撮る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-150mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:88 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.79 MB

thumbnail-20

夕方になると渓谷に光は届かず、山から風が吹き下りてきた。三脚にカメラを据えつけ、スローシャッターで川の流れを捉える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:0.3秒 | 絞り値:F16.0 | 焦点距離:9 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.10 MB

イザベラ湖付近まで戻って来ると、カーン盆地が見下ろせた。川周辺の砂地に1台の車が見えたので川に近づくことにした。砂地に出ると、車が通る部分は砂が固まっていたが、少し逸れると砂の中に埋もれてしまいそうな大きな砂場のような土地だった。イザベラ・ダムまで戻ると陽は山に隠れたが、山に遮られない平野部ではまだ陽の光は届き、空も明るかった。

thumbnail-21

カーン盆地を見下ろす。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:17.25 MB

thumbnail-22

カーン盆地を流れるカーン・リバー。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.62 MB

thumbnail-23

カーン・リバー付近の砂地に生息する木の間を通り抜ける。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:17.73 MB

イザベラ・ダムからのカーン・リバーの川幅は狭くなり、岩場を流れていた。

thumbnail-24

岩場に流れるカーン・リバー。陽は山に隠れたが、空はまだ明るく川には空の青が写り込んでいた。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/4秒 | 絞り値:F16.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.89 MB

カーン・リバーは、シエラネヴァダ山脈を水源として南へ流れる唯一の大きな川である。長さは約265kmで、ベーカーズフィールドの少し西の乾燥平野地帯で消滅している。標高4,421mのマウント・ホイットニー付近の雪解け水が北から南へ流れているカーン・リバー沿いを走ると、その水源付近の風景を想像し一目見たくなった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

Page Top