第77回:ヴァスケス・ロックス(Vasquez Rocks)を歩く
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

ヴァスケス・ロックス(Vasquez Rocks)を歩く

2500万年の地震活動で形成された地質学的な奇跡ヴァスケス・ロックス。そのギザギザした岩の上を少年が飛び歩いていた。高倍率超望遠ズームレンズを左手でホールドし、恐れを知らない少年にフォーカスすると、歳を忘れて岩の上を飛び跳ねたくなった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:244 mm

先日、メキシコとの国境からカナダとの国境間を縦走するパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)の南端に立った私は、PCTが通るエリアに興味を持った。地図でPCTを南端から追うと、何度か訪れたことがあるロサンゼルス・カウンティー北部に位置するヴァスケス・ロックス・ナチュラル・エリア・パークにもPCTが通っている。ヴァスケス・ロックスでは多くの映画等の撮影に使われた岩山を登り周辺を歩くことは考えもしなかったが、マップをよく見るとPCT以外にもいくつかのトレールがあり、ヴァスケス・ロックス周辺を歩くことにした。
朝6時にパークに到着すると入り口のゲートは8時にオープンと書かれている。パークのウェブサイトには、パークアワーはサンライズからサンセット。9月16日から3月9日は8時AMから5時PMまでとあるのでレンジャーステーションは閉まっていてもパークに入れると思ったのだが、2時間も待たなくてはならなかった。しかし、ゲートは閉まっていても歩いてパーク内に入れるので、ゲートから少し入った岩の上に登り日の出を迎えた。

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パーク入り口付近から夜が明けてきたヴァスケス・ロックスを撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:138 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:6.40 MB

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東の空に雲ひとつなかった日の出とヴァスケス・ロックス周辺を超広角ズームレンズに写しこむ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:5.91 MB

この朝は冷え込み、日の出を迎えるとすぐに車に戻り、暖房の風量を最大にして冷たくなった手の指を温める。間もなく、1台の車が私の車の横に停まり、大学生と思われるアジア系の女性が窓から顔を出しパークについて尋ねてきた。女性は週末を実家で過ごしサンディエゴに戻る途中で、フリーウェイから見える尖った岩山がいつも気になり、この朝は時間があるので見に来たという。独りで時間を潰していた私にとって、女性はいい話し相手になってくれた。
8時少し前になると真っ赤なジープに乗った女性レンジャーがさっそうと現れゲートが開いた。今日はトレールを歩くつもりだと伝えると、「それはいいわ、パシフィック・クレスト・トレイルもあるし」と言い、レンジャーステーションでパークとPCTのマップを私に手渡し、私の住む周辺の幾つかのトレールも紙に書いてくれた。
パークを訪れるほとんどの人はパークの奥にある大きなフィールドに車を停め岩山を登って遊ぶが、私はパークの入り口に近い小さなパーキングスポットに車を停めトレールを歩いた。女性独りで勇気があるなーと思ったアジア系の女性も私と同じ場所に車を停め、ジョギングをするような格好で岩山の方へ歩いて行った。

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標高670mから1200mぐらいの土地に生息するジュニパー・ツリー(Juniper Tree)がパーク内に多く見られる。朝陽を浴びた実にフォーカスすると、後方の美しくボケた岩の存在も強く感じる写真となった。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill + Close-up Lens AML-2 | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 × 4704) | ファイルサイズ:9.68 MB

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陽が昇ると気温の急激な変化のためか、ほんの短い間だったが霧が発生して神秘的な光景が見られた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:203 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:4.55 MB

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コケ植物に似ているが植物ではなく菌類であるLichen(地衣類・ちいるい)が、周囲のいたるところに転がる岩の表面に見られる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:150 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:18.48 MB

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霧も消え、気温も上がってきたトレール。歩く人はほとんどいなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:10.29 MB

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周辺に住んでいた先住民族(Tataviam)が描いたピクトグラフ。
この辺りによく見かけるRattlesnakes(ガラガラヘビ)だろうか。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/50秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 × 4704) | ファイルサイズ:23.11 MB

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先住民族(Tataviam)が、あらゆる部分を利用して生活に役立てたユッカ(Yucca)。この時期に乳白色の花がなくても独特の存在感を感じた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 × 4704) | ファイルサイズ:7.46 MB

パークの裏道のようなトレールを歩いて行くと大きな岩が近くに見えてくる。トレールから少し離れ岩山に近づくと、2つの岩山に挟まれた道を通り、パーク奥のフィールドに車を停めた人達が岩山に登っている。再びトレールに戻り歩いて行くと急な上りになり、気がつくと私は人々が登る有名な岩山より高い位置に立っていた。

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トレールから離れて岩山に近寄る。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:11.28 MB

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岩山の上の方までは特別な道具がなくても登れるが、下りるほうが怖い。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:167 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:11.85 MB

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多くの映画に登場した岩山と周囲を見下ろせるポイントがあるとは知らなかった。
この角度からだとギザギザした岩山の様子がよく分からないが、岩山を見下ろす優越感があった。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 × 4704) | ファイルサイズ:17.73 MB

マップではトレールを下って行くとPCTに繋がるはずだが、辺りはサインもなくトレールらしい跡がいくつかあり、どこを歩いていいのか分らなくなる。大きなフィールドまで行くとPCTを見つけられそうなので、距離的には少し戻ることになるが大きなフィールドに向かった。途中、2人連れの若い女性とすれ違ったので、「パシフィック・クレスト・トレイルはどこですか?」と尋ねると背の高い方の女性が、「知らないわ、私たちプロフェショナルじゃないから」と、屈託のない笑顔を浮かべて答えた。

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トレールを下るとどこにいるのか分らなくなる。この場所はすでにトレールから外れて歩いていたのかもしいれない。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:12.71 MB

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大きなフィールドには、馬を運んで来たトレーラーが数台停まっていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 × 4704) | ファイルサイズ:10.25 MB

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岩山に登る人がいなければ、馬にまたがるカウボーイがゆく映画のワンシーンのようだった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:113 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 × 4704) | ファイルサイズ:14.41 MB

フィールドに行くとPCTはすぐに見つかった。歩きやすいトレールには犬を連れた人もいたが、谷へ下って行く辺りから歩く人の姿はなくなり、トレールを独り占めした気分になる。

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PCTが下って行く地点から谷底を見る。馬に乗る人の姿が谷底に見えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:22.30 MB

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人影はまったくないPCT。この辺りはパークの外に出ていたと思われる。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 × 4704) | ファイルサイズ:18.18 MB

人を見ないPCTを歩いて行くと、この朝会ったアジア系の女性が、「フリーウェイから見える尖った岩山が気になった」というフリーウェイ(Antelope Valley Freeway)が通る丘の下に出た。そこには長さ150mほどのトンネルが通り、トンネルの中央部まで歩いて行くと、背後に冷たい空気を感じ後頭部がビリビリと張ってきた。トンネルを出ると何のためにあるの分らない錆びた鉄の柱が何本も建っている。
トンネルを出て200mほど歩くとフリーウェイを走る車が見え、そこから引き返してトンネルに入った。コンクリートのトンネル内は私の足音だけが響き、その他の音は全く聞えない。トンネルの中央部まで来ると再び冷たい空気を背後に感じ、足早にトンネルから抜け出した。トンネルからの帰り道も誰に会わなかったが、後方から何者かが付いて来るような気がして何度か後を振り返った。
大きなフィールドに戻ると何台もの車が停まり、楽しいそうにランチを食べている家族連れも見かけ、トンネル付近とは全く違う世界がそこにあり、腰を下ろして少し休む。

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トンネルに入り歩いて来たPCTを振り返る。南からPCTを歩いて来たハイカーはトンネルを出ると、トレイル左手に建つ道標に励まされ、さらに北へ歩いて行くのだろう。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:9.19 MB

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トンネルを出ると陽の光を浴びた草が暗いトンネルを背景に美しく見えた。
陽の光が届かないトンネルの真ん中辺りとは違った空気感だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:6.44 MB

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剥げたサインが錆びた鉄の柱に取り付けてある。
PCTだと知らない人には何のサインか分らないと思う。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:12.92 MB

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トンネルから離れるとフリーウェイを走るトラックが見える。
大きな柵のような鉄の柱の後はトンネル。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:21.17 MB

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岩に囲まれた谷を歩くと、大きな岩が大きく削られ洞穴のような空間になっていて、私はその中に入ってみた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:5.62 MB

パークに戻ると、「帰るときに声をかけてね」と言った女性レンジャーに挨拶をしてパークのゲートを出ると、1頭の馬が近づいてきて、馬に乗った若い女性が「トレールは見つかりました?」と話しかけてきた。女性は、私がパシフィック・クレスト・トレイルはどこかと尋ね、「知らないわ、私たちプロフェショナルじゃないから」と答えた女性で、週末は朝は散歩で昼間は馬に乗るのだそうだ。パークから北に出たPCTは、一部の区間舗装された道路を通りサインも建っているが、馬に乗った女性はPCTには関心がないようだった。

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ヴァスケス・ロックス周辺は牧場も多く、自宅に馬を飼っている人も多い地域で、パシフィック・クレスト・トレイルも牧場沿いを通っている。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:12.36 MB

女性レンジャーが、「一日かけてパシフィック・クレスト・トレイルを歩いて南のソルダット・キャニオン(Soledad Canyon)まで行って戻るのもいいわね」と話していたが、往復30km近いトレール歩きは出来なかったので、パークを後にした私は、車でソルダット・キャニオンまで走ってみた。

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ソルダット・キャニオン・ロード付近に建つブリキ張り家が売りに出ていた。ここからさほど遠くない場所には新しい住宅地もあるが、時間が止まったような光景もある不思議な場所だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:10 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 × 3136) | ファイルサイズ:6.86 MB

ソルダット・キャニオンは、カリフォルニアで最も悪名高い盗賊といわれたティブルシオ・ヴァスケス(Tiburcio Vásquez)が身を隠した地域で、ヴァスケス・ロックスも彼の名に因んでいる。祖父がサンホゼ(San Jose)の最初の市長(メキシコの管理下だった時代)だったヴァスケスは、良い家柄の出で教養もあった。ヴァスケスが10代の前半にメキシコとアメリカの間で戦いが起こり、生まれたカリフォルニアはアメリカのものとなった。1875年3月19日、2つの殺人罪で絞首刑になる前、「自分たちの社会的権利を不当に奪われ、憎しみと復讐の精神に包まれて自分と同胞の権利を守るために多くの戦いをした」というような声明をヴァスケスは残したが、ヴァスケスの起こした犯罪は不当な法律や差別に対する抵抗であると信じ、今でも英雄視するメキシコ系アメリカ人も少なくない。裁判を待つ間収監されていたモントレー刑務所(現在はミュージアム)で、ヴァスケスの幽霊を見た人が何人もいるという。トンネルで冷たい空気を感じたが、ヴァスケスはまだ言い残したかったことがあるのだろうか。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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