第99回:冬のアムボーイ・クレーター(Amboy Crater)周辺
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第99回:冬のアムボーイ・クレーター(Amboy Crater)周辺

冬の日、傾いたトレイルサインに従い、1973年にナショナル・ナチュラル・ランドマークに指定された黒い噴石丘のアムボーイ・クレーターを目指し、溶岩がゴロゴロ転がる砂漠地帯を歩く。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:22 mm

1月の終わり、バストー(Barstow)からインターステート40号(I-40)を東へ向う。天気予報の「晴れマーク」を確認しまだ暗い早朝に家を出るが、夜が明けても眩しい朝陽はなく、東の空は厚い雲に覆われていた。砂漠地帯では日の出と同時に塗る日焼け止めクリームにこの朝は手を触れず、サングラスもかけず先へ進む。19世紀の終わりごろ鉄道会社の水補給のためのストップとしてスタートし、今はゴーストタウン化している集落ラッドロー(Ludlow)でハイウェイを下り、旧国道66号線である「Historic Route 66」を東へ走る。

thumbnail-02

ハイウェイを下り、通る車のない道(Hidden Springs Rd)の行き止まりまで行くと、雲の切れ目から差した陽光に黄色いサインが光っていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.70 MB

thumbnail-03

タンク貨物列車が、ようやく顔を出した太陽に輝き、快晴を期待する。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.04 MB

thumbnail-04

ゴーストタウン化しているラッドローでは、時間をかけて朽ちてきた建物の間を飛ぶ黒いカラスを多く見かけた。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.90 MB

thumbnail-05

ラッドローから4キロほど東へ行った辺りの踏み切り。BNSF鉄道(Burlington Northern Santa Fe Railway)の貨物列車が、私を追うように西から走ってきた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1600秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:206 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.91 MB

国道として廃線となり、この日すれ違う車がほとんどないルート66を東へ走ると次第に風が強くなった。乾燥した地面からは砂が舞い、遠くの山が霞んで見える。砂ぼこりの中、平坦な土地にどっしりと構えるアムボーイ・クレーターが近づいてきて、ルート66からサインに従い進み1台の車もない駐車場に到着する。駐車場に立つボードには、アムボーイ・クレーターの底まで往復3時間は見ておくようにと書かれている。私は2度ほどここを訪れたが、近くに見えるクレーターまでは、暑さと時間がなく歩くことを断念していたので、暑くない時季に必ずクレーターの底まで行きたいと思っていた。この日は冷たい風が吹き暑さの心配はまったくなく、ポケットに水筒を入れたカメラバックを背負い、愛犬のシロと共に砂漠地帯をさっそうと歩き出した。

thumbnail-06

ルート66を東へ走ると砂嵐が舞う砂漠地帯に黒い溶岩が見えてくる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/4000秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:206 mm (120-300)
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.92 MB

thumbnail-07

高さ80m近いアムボーイ・クレーターまでのトレイルを歩く。黒い溶岩が転がる砂地に一輪の黄色い花が強風に逆らわず激しく揺れていた。風が弱くなった一瞬をしばらく待ち、シャッターを押した。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.41 MB

thumbnail-08

クレーターを少し登りはじめ歩いてきたトレイルを振り返る。雄大な風景の中、長い貨物列車が走ってゆくのが遠くに見える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:25 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:15.35 MB

大地を吹き抜ける冷たい風は心地良く感じ、シロも嬉しそうに歩きクレーターまでは順調なハイキングだった。クレーターを登りはじめると風は強くなりクレーターの淵まで登ると、シロと私も飛ばされそうな強風が吹き抜け、地面から約80m登っただけだが、風の強さはまったく違っていた。クレーターの東側の淵は低くなった部分があり、そこからクレーター内に出入りするのが普通のようだが、私とシロは、クレーターの淵から溶岩を渡り歩いて底まで下り、淵が低くなった部分から出て引き返した。

thumbnail-09

フイルムグレインの大きさと粗さを最大にしたモノクローム写真は、私にとって冬のアムボーイ・クレーターのイメージだった。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:16.39 MB

thumbnail-10

強風で吹き飛ばされそうなクレーターの淵に立ち、風の力強いエネルギーを全身で吸収し、クレーターの底と周辺の風景を超広角ズームレンズで写しこむ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.52 MB

thumbnail-11

クレーターの淵から黒い溶岩に覆われたクレーターの南方向を見下ろす。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.69 MB

thumbnail-12

クレーターの底は無風だったが、クレーター内から出る部分には強風は吹き込み、風の通り道を感じた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:25 mm (18-35)
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.08 MB

thumbnail-13

砂ぼこりで少し茶色になったシロは、常に私より先に歩いた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:18 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.53 MB

強風のクレーターから少し東に位置するかつてルート66で栄えたタウン、アムボーイに立ち寄り、何度か通り過ぎたカフェ内にこの日はじめて入る。店には50歳前後に見える1人の白人男性がレジの前に座り、ウェイトレスもコックもいない。コーヒーをオーダーすると、早口だが必要以上に口を開かず笑顔もない男性は素早くコーヒーを入れた。モーテルは相変わらず再オープンする気配がなく、立ち寄る人は写真だけ撮って去って行く。

thumbnail-14

廃虚になったように見える建物の屋根に吹流しがあり、一定方向から吹く風にほとんど動かなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.91 MB

thumbnail-16

写真を撮る人のカメラがデジタルに変わった以外、昔とほとんど変わらない光景。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1600秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.65 MB

thumbnail-15

ルート66沿いの沢山の靴が吊るされた木に行って見ると木の株部分だけが残されていたが、2010年に倒れたようだ。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.18 MB

アムボーイからは、アムボーイ・ロードを南に向う。乾燥湖である「Bristol Lake」の間を走って行くと塩田があり、空はどんよりとしてきて、塩田を抜けてさらに南に走ると冬の砂漠地帯らしく気温は急激に下がった。

thumbnail-17

こぶのように盛り上げられた小山が幾つも続く風景は塩田の一部。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 30mm F1.4 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:15.63 MB

thumbnail-18

アムボーイ・クレーターから南東へ行った辺りの風景。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.35 MB

thumbnail-19

モノクロームにするとひび割れた塩田が強調された。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.31 MB

thumbnail-20

色が少ない風景の中、風で揺れる緑色の水面は特別な存在に見えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.59 MB

thumbnail-21

岩にペイントされた落書に違和感は感じなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.56 MB

thumbnail-22

走ってきたアムボーイ・ロードを振り返る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:300 mm (120-300)
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:10.62 MB

午後になると西の空には厚い雲がかかり、期待した夕焼けは見られそうもなかったので、アムボーイ・クレーター周辺から予定より早めに引き上げた。クレーターから帰宅した夜は身も体もとても軽く感じ、どこかに飛んで行けそうな気がしていたが、噴石丘を吹き抜けていた風に特別なエネルギーでもある のだろうか。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

Page Top