第107回:シルバーウッド・レイク(Silverwood Lake)周辺の夏の訪れ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第107回:シルバーウッド・レイク(Silverwood Lake)周辺の夏の訪れ

6月初旬、カリフォルニア州サンバーナディーノ山脈の西に位置する大きな貯水湖には、夏の到来を告げる光景が待ち受け、陽光をまぶしく反射する青い湖面は「来た甲斐があった」と思わせる美しい色をしていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm

ロサンゼルスからラスベガス方面に向う際に通るカホン峠 (Cajon Pass)付近は、ただ通り過ぎるだけの場所だったが、この日はインターステート・フリーウェイ15号線を下り、シルバーウッド・レイクに向けて州道138号線を東へ走った。曲がりくねった道を上って行くと路肩が広く車が停めやすい場所に出たので車を停める。州道のすぐ前には線路、北西の山の斜面にはフリーウェイを走る沢山の車が小さく見える。地図ではこの辺りがカホン峠と記されているが、一般的にはフリーウェイ15号線の方までを入れ広範囲に渡りカホン峠と呼んでいるようだ。しばらく峠からの景色を眺め峠を下って行くと貨物列車とすれ違った。私は車をUターンさせて峠まで戻り、貨物列車のある光景をカメラに収めた。東のサンバーナディーノ山脈と西のサンガブリエル山脈の間に位置するカホン峠は、手元の水を手放せない夏の強い陽射しが照りつけていた。

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フリーウェイから出てすぐの州道138号線は殺風景な景色が広がり、サングラスなしでは陽光の照り返しで目が眩みそうだった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:137 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.58 MB

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カホン峠にて、目の前を通り過ぎた貨物列車が右へ曲がりそして左に曲がり先端が見えてきた。遠くの山の斜面には、インターステート・フリーウェイ15号線が見える。上って行く車線はラスベガス方面に向い、下って行く車線はロサンゼルス方面に向う。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:80 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:16.94 MB

カホン峠を下ると州道はしばらく平坦な道が続いた。近くに大きな断層が走り、おうとつの激しい地形が広がる地域にしては退屈な土地だったので、道端に見かけた花や木の葉に目を惹かれレンズを向けた。この近辺で車を停める人は珍しいようで、通り過ぎる車のドライバーは「大丈夫かな?」という顔をして私を見るが、写真を撮っているのが分ると皆手を上げてそのまま通り過ぎた。その先をさらに東へ走り山を上り、フリーウェイを出てから約20km付近で青いシルバーウッド・レイクが見えてきた。

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乾燥する土地では、生きてる花もドライフラワーかと思うぐらい乾燥しているようだ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + MACRO 70mm F2.8 EX DG | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:70 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.89 MB

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ほこりっぽい道端に咲いていた白い花(Datura wrightii)に大口径望遠マクロレンズを向ける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:180 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.38 MB

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白く塗装された十字架は、夜ライトアップされるのだろうか。大口径標準レンズでフォーカスした十字架のディテールが、手で触れているかのように写し出されていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:10.94 MB

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州道からは見えない牧場までの私道沿いの木の葉が、キラキラと光って見えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.25 MB

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少し先の展望台から湖がもっとよく見渡せたが、緩やかな山々に囲まれたシルバーウッド・レイクの湖底に沈んだ村をイメージしやすかったここからの風景を気に入った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.93 MB

1971年にシーダースプリングス・ダム(Cedar Springs Dam)の建設により誕生した現在のシルバーウッド・レイクは、かつて、シーダースプリングスという約100世帯の集落が存在し、谷の小さな村には、人々がイチゴジャムを求めてやって来たと州立保養地区のサイトに書かれている。私は湖底に沈んだシーダースプリングスを、母方の祖母の生まれ故郷である奥多摩湖に沈んだ小河内村とダブらせて湖に到着したが、目に飛び込んで来る青い湖面と風の音と共に聞こえてくる湖で遊ぶ人々の笑い声に、祖母のことを想う気持ちが薄れて快晴の湖岸を散策した。湖を囲む低山も少し登ってみると、アメリカとメキシコの国境からアメリカとカナダの国境までアメリカ西海岸を南北に縦走する「パシフィック・クレスト・トレイル」に出会った。

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湖の中州のような部分で釣りをする少年とその妹らしき少女。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:200 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.55 MB

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この日は風が強く、カヤックを漕ぐ人も大変そうで、海抜1,023mの湖岸には風でできた波が寄せていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:200 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:15.84 MB

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シルバーウッド・レイク南西の低山を歩くパシフィック・クレスト・トレイル。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.59 MB

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釣人もいた湖南部にあるシルバーウッド・レイク・マリーナ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:168 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.67 MB

シルバーウッド・レイクにボートを運んで来て遊ぶ人で賑わっていたマリーナに立ち寄った後、ダムのある湖の北側に向った。シルバーウッド・レイクは、北と南にある湖をむりやり繋げたような変則的な形をしている。雨水や雪解け水が、北カリフォルニアから湖や水路を流れ、湖北部へ注ぎ込み、水力発電用のタービンが設置された湖南部の放水口から水が放流されている。湖北部には、水の取り入れ口から僅かな距離に余水路が設置され、シルバーウッド・レイクは、壮大な水資源計画の一環としてつくられた貯水湖であることを、保養地区の入口でもらった案内書から理解したが、スケールが大きすぎて実際には把握できずに湖周辺を動いていた。

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貯水湖の余水路が、湖の北側を通る道から見えた。自然に挑んでいるのか共存を目指したのか分らないが、存在感は大きく圧迫感があった。肉眼にはただ白く見えたコンクリートの表面のディテールが、写された画像には克明に描写されている。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:19.46 MB

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余水路周辺に架かった橋の上から赤い魚が見えた。強風で体が揺れる橋の上から、大口径望遠ズームレンズを魚に向けると、水中に泳ぐ魚の眼が画像に写っていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:300 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.56 MB

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シダースプリングス・ダムから湖北部の景色。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:21 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.90 MB

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ダムから下りていく道に見つけたパシフィック・クレスト・トレイル。内蔵ストロボを発光させ、陰になったサインを起こした。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F13.0 | 焦点距離:18 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.85 MB

ダムからは貯水湖の北側を走る州道を北東に向った。しばらく走ると、道端に「これより先は除雪作業なし、個人責任で」とのサインが立ち、よく舗装された道路はデコボコ道になり、道はゲートが閉まり通行止めになっていた。道を引き返しかけると、サンドバギーに乗った年配の男性が手を振って私の前を通り過ぎて行った。周囲を見渡すと低山に囲まれていて盛土が見え、大雨の時は水が出て洪水に悩まされた土地だと感じた。車から愛犬と降りて周辺を歩くと、またしても長距離自然歩道であるパシフィック・クレスト・トレイルのサインを見かけた。

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地図上では川(West Fork Mojave River)になっていたが、水はまったくなかった周辺。遅い午後の陽射しを避けて木陰に入り、枝の間から太陽の存在を確認する。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:18 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.37 MB

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ゲートが閉まり、この先は行けなかった。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.69 MB

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気さくな男性は一度では上り切れず、2度目のチャレンジで急坂を上って消えて行った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:70 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:17.86 MB

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南北に縦走するパシフィック・クレスト・トレイルは、この辺りはくねくねと曲がりながら東西に縦走し、この写真は北に向かっているが、このまま歩いて行くと南へ向うことになる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:31 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.11 MB

ゲートが閉まりその先は行けなかったので来た道を引き返し、インターステート・フリーウェイ15号線に乗ると、太陽は山の向こうに隠れた。

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帰り道は太陽が大きく傾き、コントラストの強いドラマチックな光景が見られた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:11.05 MB

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沈んでゆく太陽で、貨物列車の屋根と線路が輝くカホン峠付近。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:5.77 MB

シルバーウッド・レイクの湖面は、青い空に負けないぐらい青く、そこで遊ぶ人々は皆夏の格好をしていた。ついこの間春が来たと思ったばかりだが、夏の到来を感じて、暗くなったフリーウェイを西へ向かった。帰宅して鏡を見ると、日焼け止めを持って行くのを忘れた私の顔は真っ赤だった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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