
灼熱の太陽が照りつけるモハーヴェ砂漠の丘に木製のワゴン車が置かれている。19世紀の終わりから銀鉱山で栄えたキャリコ(Calico)は、今日、キャリコ・ゴーストタウン(Calico Ghost Town)としてカリフォルニア州サンバーナーディーノ群のカウンティー・パーク・システムの一部になり保護されている。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
8月最後の週末、西はシエラネバダ山脈、東はインヨー山地とホワイト山地に挟まれたオーエンズヴァレーを北上し、カリフォルニア州モノ郡にあるジューン・レイクへ家族旅行に出かけた。その際、かつて金鉱山で栄え、今は州立歴史公園として保護されているゴーストタウンのボディー(Bodie)まで足を伸ばした。
西と東を標高4,300m以上に達する山脈に挟まれた標高1,200mのオーエンズヴァレーには、大きな牧場がいくつもある。エルクだと思われる白い頭蓋骨と馬の鞍が据え付けられた牧場のゲートは、濃いブルーの空をバックに広大な風景の中に溶け込んでいた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:53mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.36MB
標高2,554mのボディー州立歴史公園へは、ハイウェイ395号線から州道270号線を約20km、ひたすら東へ走る。ボディー・ロードと呼ばれる一本道は、ゴーストタウンまでの最後の5kmがダート道となり、車はホコリまみれになった。この日はレイバーデー・ウィークエンドともあって多くの人がゴーストタウンに訪れていて、タウンの入口手前の路肩にも車が停まっていた。ボディーは発音上(Bodie)となったが、1859年にモノ・レイク北の丘に少量の金を発見したウイリアム・ボディー(William Body)にちなんでいる。家族と別れてニュ-ヨーク州からやって来たボディーは金を発見した同年、吹雪に巻き込まれて死亡し、自身の名前が付いたタウンを見ることはなかった。ボディーは1876年にスタンダード社(The Standard Company)が埋蔵量の多い金鉱脈を発見すると急発展した。1879年までに人口は1万人に達したが、泥棒、喧嘩、殺人は日常茶飯事で、金より無法地帯としてその名が広まったようだ。ブームは1882年以降下火になり、その後何度かの火災もありゴーストタウンになった。
何かの店かと思ったが、タウンの主要な財産所有者となったジェームス•スチュアート・カイン(James Stuart Cain)という人の住居。ガラス越しに見る瓶は、年月が経ってさらに存在感を増したように見えた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:58mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.34MB
水を汲む井戸のバケツに大口径標準レンズでフォーカスする。背景の建物は同系色だったが、錆具合がなんとも言えないバケツが切れ味よく描写されている。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.15MB
タウンの東に位置する大きな製造工場と鉱山跡(Standard Mill)は、立ち入り禁止区域になっていた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
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大口径標準レンズでフォーカスした電信柱は新しいものに見えるが、グリーン・ストリート(Green Street)の奥まで立つ電信柱は、かなり昔から立っているように見える。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
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トタン屋根が午後の陽射しに光っていた。セピア調にして19世紀の終わりに栄えたタウンをイメージした。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
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ボディー・ロードから塩分濃度の高い塩湖であるモノ・レイク(Mono Lake)が見える。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:29mm
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帰宅してから、ロサンゼルスからラスベガスへ行く途中に何度か立ち寄ったことがあるキャリコ・ゴーストタウンを思い出した。キャリコへ最後に行ったのは14年ほど前だったので最近の様子も知りたくなり、9月中旬、キャリコへ向った。交通機関の中心地であるバーストー(Barstow)を超えて間もなくフリーウェイを下り、間違えようのない一本道のゴーストタウン・ロードを北に5分ほど走りキャリコに到着する。入口には「大人8ドル、子供5ドル、5歳以下フリー」とあり、小さな小屋にいる体格のいい若い女性に「私一人です」と告げると、「あなたから入場料は取りませんよ」と女性は言う。私は「そうなんですか?ありがとう」と言うと、カウンティー・パークになっているゴーストタウンに入った。ゴーストタウン内では、家族や友達同士、観光バスで来た15人ぐらいのヨーロッパ人のグループを見かけたが、駐車場はがら空きだった。この日単独でキャリコに来たのは私だけだと思うが、入場料を取られなかったのは、たまたま近くを通り過ぎ、ゴーストタウンに大して興味がなく長居はしない人間に見えたのかもしれない。
ゴーストタウン・ロードを走り始めるとキャリコ・ゴーストタウンの看板が立っている。青い空の下、遠くの山に白く書かれたキャリコのサインが見え、砂の路肩の所々にゴミを見かける。フリーウェイに近い典型的なモハーヴェ砂漠の空気感をカメラに収める。
使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
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1880年代の半ばに銀が発見され、1890年にはアメリカだけでなく中国、イギリス、アイルランド、ギリシャ、フランス、オランダから来た人々で、キャリコの人口は3,500人に達したが、銀の暴落により20世紀に入るとキャリコはゴーストタウンになった。タウンの建物の多くはバストーなどの周辺のタウンに移され、現在の建物はその後再建されたものだが、レイアウトは当時とほぼ同じなので、昔のタウンの生活を伺うのは難しいことではない。
この建物もオリジナルではないようだが、背景の山は19世紀の終わりから変わっていないはずだ。モノクロームに仕上げた写真は、19世紀の終わりに撮影されたように見えるから不思議だ。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.18MB
鉱山(Maggie Mining Company)を見上げる。木造の建物は木の温もりを感じ、温黒調に仕上げてみた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:23mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:6.44MB
1888 年から 1903年にかけて、キャリコから10㎞ほど南のエレファント・マウンテンまで銀を運んだキャリコ鉄道を再現した列車が、タウンの東側を走っている。線路幅の狭いオリジナルの線路は3ft(914mm)で、この線路はさらに狭くて2ft 6in(762mm)。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:147mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.69MB
タウン北の岩山の斜面を利用した建物。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F14 | 焦点距離:11mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:12.59MB
タウン北の岩山の上からタウンを見下ろす。キャリコ鉄道が銀を運んだエレファント・マウンテンも見える。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F13 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:15.01MB
タウンの北端に位置し、岩の下に埋め込まれるようにして建てられたハイエナ・ハウス・ホテル(The Hyena House)。オリジナルは4階建てだった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:15.55MB
1885年に建てられた学校は1995年に建てられたレプリカだが、橋越しに学校を眺めていると子供の声が聞こえてくるようだった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:21mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:15.18MB
建物とは違い道具は昔のままの物が見られた。何の道具か何か分らなかったが、錆びたボルトにフォーカスすると一瞬時間が止まったように思えた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.85MB
何かを運ぶ小さなワゴン車の一部だろうか。鉄と木をうまく使った道具を大口径望遠マクロレンズで切りとる。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.81MB
野外ステージがありその裏に回ってみた。温黒調にするとオリジナルの建て物でなくてもノスタルジックな雰囲気が強まった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.89MB
朝晩が涼しくなってきたと思った矢先、真夏の暑さが戻ったモハーヴェ砂漠のこの日の気温は40℃に達した。タウンを一通り歩いた後、私はキャリコ・ゴーストタウンから出て東にあるオデッサ・キャニオン(Odessa Canyon)に少し入り、銀が発見された当時と変わらない風景を眺めた後、帰路についた。
砂地の斜面を登り下りするだけで汗が出るタウンの東の丘陵地帯。夏の労働は過酷だったに違いない。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:14.05MB
キャリコから東にある谷、オデッサ・キャニオンには建物のベースのようなものがあった。ゴーストタウンで木で造られた建物を見た後だったので、コンクリートの持つ独自の存在感を強く感じカメラに収めた。
使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:10.71MB
保護されたゴーストタウンはきれいに修復され過ぎていてあまり興味がなかったが、昔と変わらない周囲の地形を眺め、乾燥した風に吹かれ、乾いた土の上に立ち、当時の人々の生活を感じる被写体にレンズを向ける時、多くの人々が夢を持って世界中から集まって来た19世紀終わりのアメリカンウエストへ容易にタイムトリップすることができた。
※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。