畳みかけたテントに朝陽が差し込む光景にカメラを向ける。あまりにも鮮明に描写されたテントの生地の質感と微妙な色に、前夜、テント内で過ごした記憶も鮮明に思い出される。
使用機材:SIGMA dp2 Quattro | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 x 3616 | ファイルサイズ:14.90MB
押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。
オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/
シエラネバダ山脈東の斜面を水源とするビック・パイン・クリークの下流は水が少なく、大きな石に覆い尽くされた川原は強い陽射しの照り返しで非常に暑く、正に真夏日だった。
使用機材:SIGMA DP1 Merrill | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:19mm
7月中旬,日本からの来客を連れ、景色がよくて夏でも過ごしやすい場所でキャンプをしたいと思い、頭に浮んだのは、シエラネバダ山脈東の斜面を流れるビック・パイン・クリーク沿いだった。朝のラッシュが終わった後、キャンプ道具を車に積み込み自宅を出る。ゆっくりと北へ2時間半ほどドライブして到着したモハーヴェ(Mojave)で、旅に同行した息子の好きなサンドイッチ店でランチを取る。腹ごしらえをして給油を済ませた後、USルート395号線に入りさらに北上して行くと、左手に雄大なカリフォルニア州東部を縦貫するシエラネバダ山脈が迫り、右手には火山活動によりできた風景が広がっている。日本から訪問した友人は、車から出て記念写真を数枚撮ると暑さから逃れてすぐに車の中に戻った。
この付近を通る度に気になっていたRed Hill(赤い丘)と呼ばれる噴石丘。この日はとても暑くて周囲を散策する気にはなれなかったが、暑さが落ち着いたら地質学的にユニークなこの地をゆっくりと歩いてみたい。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:25mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.66MB
標高4,418mのマウント・ホイットニー(Mount Whitney)を左手に確認し、第二次世界大戦中、日系アメリカ人が収容されたマンザナー強制収容所跡を通り過ぎ、標高1,216mの集落ビック・パインに到着し、スーパーマーケットで薪等のキャンプに欠かせない物を補充する。ビック・パインからはシエラネバダ山脈に向い、ビック・パイン・クリーク沿いをひたすら上って行くと、ついさっきまで快晴だった空は次第に雲に覆われてきた。クリーク沿いの道のほぼ行き止まり地点にあるキャンプ場に到着すると、天気予報では晴れ時々曇だったが、いつ雨が降ってもおかしくない雲行きになっていた。キャンプホストが、昨夜も雷雨があり今夜も雨が降る可能性は高いと言うので、急いでテントを張り夕食の支度を始めた。
シエラネバダ山脈に向い、ビック・パイン・クリーク沿いを上ってゆく。彩度を落とし、雲行きが怪しくなってきた山と自分自身の不安な気持ちも強調した。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.50MB
テントを張り終えると、どこからともなく鳥がテントの脇を歩いて通り過ぎた。
使用機材:SIGMA dp2 Quattro | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 x 3616 | ファイルサイズ:21.61MB
テントを張ったキャンプ場は、北と南のクリークが合流するビック・パイン・クリークの始まる付近にあった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/15 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:119mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.36MB
キャンプ場の側にあった池で釣りをする人々。標高4,225mであるノーマン・ クライド ・ピーク(Norman Clyde Peak)が背景に聳え立つ。
使用機材:SIGMA dp2 Quattro | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 x 3616 | ファイルサイズ:17.19MB
釣れたばかりのニジマスにレンズを向ける。
使用機材:SIGMA dp2 Quattro | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 x 3616 | ファイルサイズ:14.74MB
キャンプ場の周りを少しだけ散策した後、薪に火をつけ夕食を早めに食べ終わり、いつ降るか分らない雨に備えた。家族連れや本格的な登山をするグループでキャンプ場には空きがほとんどなく、日が暮れてしばらくしても人々の笑い声が響いていた。結局、雨も降らず風も吹かない快適な夜になり、私と友人はワイングラスを息子はスマートフォン方手に夜更けまでテントに入らず、木の香りがする森の夜を楽しんだ。
焚火が燃え尽きて皆が寝静まった夜遅く、気が付くと月が出ていた。真っ暗な森から見る月の周辺はとても明るく、神秘的な光景にしばらく釘付けになる。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | シャッター速度:2 秒 | 絞り値:F2.8 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:2.85MB
陽が昇る随分前に目覚めテントから外に出ると、キャンプ場は静まり返りまだ誰も起きている様子はなかった。私は静かに池まで歩いて陽が昇るのを待った。朝陽が昇るとキャンプ場からは人々の元気な声が聞こえはじめ、また新たな一日が始まったなと感じた。
左奥の標高4,225mのノーマン・ クライド ・ピーク(登山家のNorman Clydeに由来)から朝陽が当たり始め、その周辺も次第に明るくなってくるドラマは、神聖な儀式を見ているようだった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.11MB
陽が差し始めて30分もすると、池に映り込む山も明るく見えた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:7.66MB
草花が朝陽に輝く美しい朝を、空気感と共に大口径標準レンズで切りとる。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.95MB
朝食後、早々にテントを畳みキャンプ場からすぐ近くの登山口に車を停める。登山目的でこの地に来た訳ではなかったが、少しだけトレイルを歩くことにした。同じキャンプ場に宿泊した10人ほどのグループが、本格的な格好で我々の前を通り過ぎてゆく。早朝は薄手のジャケット無しでは肌寒かったが、陽が昇って一日が始まると気温が急激に上がり、晴天下を登り歩くのはかなりのエネルギーを消耗し、さっそうと登ってゆく人々がとても逞しく見えた。
テントを背負って山奥に登るグループの一人の背中に、とても敵わないスタミナを感じた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:16.53MB
日陰に入り水の流れを見ていると一時暑さも忘れる。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/10 秒 | 絞り値:F16 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:7.69MB
渡って来たノースフォーク・ビックパイン・クリークに架かる橋を見下す。
使用機材:SIGMA dp2 Quattro | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 x 3616 | ファイルサイズ:17.97MB
滝の側まで近づくと、ひんやりとした空気に包まれた空間があった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.62MB
サウスフォーク・ビックパイン・クリークが流れてくる方向の雄大な景色。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:23mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.42MB
クリーク沿いで見つけた花。「Rockfringe 」と呼ばれているようだ。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.98MB
木々に囲まれたトレイルを登って行くと平坦な部分に出て、日陰が少なくなった。私たちは登って来たトレイルを引き返し、日陰でランチブレイクを取り山を下りた。
長さ約20kmのビック・パイン・クリークの下流の川原に出る。東の山の上の雲が大きな帽子のように見え、その下の雲から雨が降っているようだった。夏の一日をモノクロにし、調色は温黒色を選択した。
使用機材:SIGMA DP1 Merrill | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | 露出モード:M-マニュアル露出 | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.88MB
夏の暑さを避けて楽しいキャンプをするためにビック・パイン・クリークの上流まで上ったが、その先を登って行く人々の後姿を見て、私はもう少し上まで登りたくなった。63kgほどの体で、34kg、ある時は43kgまでの荷を背負いシエラネバダ山脈を登り歩いたノーマン・ クライドは、登山家でガイド、そして沢山の機材を持ち歩いた写真家でもあった。彼に因んだ標高4,225mのノーマン・ クライド・ピークは無理としても、その途中にある幾つかの湖までは、近いうちに登りたいとの願望が沸いてきた。雪に閉ざされる前、年内にチャレンジしたいものだ。
※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。