第106回:イースト・アナカパ島(East Anacapa Island)へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第106回:イースト・アナカパ島(East Anacapa Island)へ

朝霧に覆われていた島は、夕方、島を離れる時刻になると晴れ渡り、太陽に反射した海面が眩しくカモメがいつまでも船を追いかけて来た。カリフォルニア州ベンチュラ群の海岸からわずか18 kmの沖に位置する小さなイースト・アナカパ島への船旅は、どこか遠くの世界に行った気がした。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24 mm

5月下旬、チャネル諸島国立公園に指定されている五つの島のひとつであるアナカパ島へ向った。ロサンゼルスから西北西に走り、出港時間(9時半)の1時間前、チャネル・アイランズ港に到着し、ネットで既に支払い済みの乗船券を船会社の小さなデスクで受け取る。この日は晴れて気温は20℃まで上がるとの天気予報。持参した洋服の中から何を着るか少し悩むが、冬支度の乗船客も見かけたので、甲板にいる1時間半の船旅に秋用のジャケットを着込んで船に乗り込んだ。チャネル諸島国立公園の中で一番大きな島であるサンタクルス島へ渡った時の船と比べると、船は随分小さくかなりの揺れを覚悟するが、沖に出ても海は穏やかで揺れはさほど気にならなかった。約10kmに渡り、イースト、ミドル、ウエストの島々が連なるアナカパ島は霧に包まれていて、すぐそばへ近づくまで姿を現さなかった。上陸するイースト・アナカパ島へは最短距離では近づかず、ウエスト・アナカパ島からミドル・アナカパ島の北岸を遊覧しながらゆっくりとイース ト・アナカパ島に到着した。

large
thumbnail-21

ようやく見えたアナカパ島。霧に包まれていた穏やかな海だったが、船はそれなりに揺れ、カメラを水平に保つのはやさしくはなかった。船の上では、コンパクトな高倍率標準ズームレンズを着けたカメラ1台を持ち、時より撮影した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:6.48 MB

large
thumbnail-21

イースト・アナカパ島の船の発着場は小さな入り江にあり、その入り江に入ると、カリフォルニア・アシカ(California sea lion)が出迎えてくれた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:200 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:10.42 MB

large
thumbnail-22

船会社の案内に「訪問者は、数段のはしごを登って船から木製のデッキに出ます。木製のデッキからは、150段の廻り階段が、あなたをすばらしい海岸の景色が広がる海抜61mの島の台地へ導きます」とあるが、船が入り江に入り、階段を登るのは感動的な上陸の仕方だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:10 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:3136 x 4704ファイルサイズ:8.59 MB

島に着く寸前、若い乗組員が私のそばにきて、島での規則について簡単に説明をした。この朝、50人ほどの乗客中、島に降り立ったのは私を入れて6人だけで、船は島の周りを遊覧して戻って行ったようだった。ひとり旅の東洋人の男は私だけだったので、乗客リストの名前から私のことが簡単に分ったのだろうと、150段の廻り階段を登り船を見下ろしながら思った。階段を登り切り島を歩きはじめると島全体から鳥の鳴き声が聞こえてきて、船の事も離れた陸の事も全て忘れた。アナカパ島は、アメリカ・オオセグロカモメ(Western Gull)の繁殖を保護し、5月から7月の繁殖シーズンには1万羽が集まる。私は、繁殖期が始まったカモメの鳴き声の中に溶け込んでいった。

large
thumbnail-21

アメリカ・オオセグロカモメ (Western Gull)が、近づいても逃げずに鳴いていた。この時まだ何が起こっているのか分らなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:14.88 MB

large
thumbnail-21

生まれた雛が、白と灰色のカモメになるには4年かかり、平均で25年生きる。脅かしたくなかったので、遠くから高倍率超望遠ズームレンズで捉えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:500 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:8.85 MB

large
thumbnail-21

アメリカ・オオセグロカモメだけでなく、大きなカリフォルニア・ブラウン・ペリカンもよく見かけた。カリフォルニア・ブラウン・ペリカンは、イースト・アナカパ島を繁殖の地とはせず、近くではウエスト・アナカパ島とサンタバーバラ島で繁殖する。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:373 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:9.32 MB

島に降り立つと、雲が切れて青空も見えてきた。私は誰もいない小さなビジターセンターのテーブルで持参したランチを食べ終えると、島の東側に建つ高さ12mの灯台方向へ歩いたが、灯台側の霧笛の音から耳を守るため、灯台に近寄ることは禁じられていた。イースト・アナカパ島は、長さ1.6km、幅は最大で400mと小さな島で、トレイル以外は立ち入り禁止区域になっている。島のトレイルは平坦で、海風が気持ちがよく、ボディ2台とレンズ6本を入れたカメラバックを背負って楽しく歩いた。

large
thumbnail-21

島中央南の岸壁から島の東を見ると、サンタバーバラ海峡東の入口であるイースト・アナカパ島に建つ灯台の存在の大きさを感じる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:15.84 MB

large
thumbnail-21

ひとつのテントが張ってあった島中央のキャンプ場付近から東を見る。キャンプ場と灯台の間には、ビジターセンターやレンジャーの家等が建っているが、この日はレンジャーの姿はなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:17.36 MB

large
thumbnail-22

トレイル沿いにも沢山のカモメが抱卵し、私を威嚇するカモメもいた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:3136 x 4704ファイルサイズ:14.87 MB

large
thumbnail-21

トレイルに転がっていた卵の殻をそのまま大口径中望遠マクロレンズで捉える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F13.0 | 焦点距離:105 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:9.64 MB

large
thumbnail-21

乾燥に強く耐塩性が高い塩生植物のアイスプラントが、カモメに負けず目を引いた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:20.14 MB

トレイルを歩いて行ける島の西(Inspiration Point)まで来ると、切り立ったような細長いイースト・アナカパ島が西へ伸びていた。長さ1.6㎞の島の最西端には行けず少し残念だったが、気持ち良さそうに羽を広げて空に浮かぶカモメを見ながら、きれいなものは離れた所から眺めるのがいいのかもしれないと思い、しばらく西へ伸びたアナカパ島を眺めていた。

large
thumbnail-21

トレイルで行ける島の西(Inspiration Point)から、イースト・アナカパ島、ミドル・アナカパ島、ウエスト・アナカパ島をしばし眺める。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:15.13 MB

large
thumbnail-21

青い海を背景に岸壁に咲く赤い花が色鮮やかだった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:13.19 MB

large
thumbnail-21

東から西へ飛ぶ2羽のペリカンを高倍率超望遠ズームレンズで追うと、自分も飛べそうな気になった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:373 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:7.34 MB

large
thumbnail-21

島に降り立った6人中の2人の若者を島の西側に見かける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:413 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:10.12 MB

チャネル・アイランズ港を朝9時半に出港し、船から降りて島を歩きだしたのは午前11時半。島を離れる午後5時まで小さな島では時間がありすぎると思っていた私は、島の西端で時間を気にせずのんびりと過ごしたが、時の経つのはやく、時計を見ると結構な時間になっていた。島の北岸に立ち寄りながらも、それまでとは違うペースで少し急いで歩き島の東へ戻った。

large
thumbnail-21

島の西から島の東へ戻りかけると、島はすっかり晴れ上がった。高倍率超望遠ズームレンズで、島の東に建つ灯台を眺めると、陽炎に揺れていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:500 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:9.04 MB

large
thumbnail-21

島の北岸(Cathedral Cove)から、晴れ渡った島の東を見る。柵のない岸壁付近は危険を伴うが、冒険心をそそられ、立ち入り禁止でなければ、もっと島の端まで動き回りたかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:9.90 MB

large
thumbnail-21

カモメの抜けた白い羽に大口径中望遠マクロレンズを向ける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:105 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:11.71 MB

large
thumbnail-21

帰り際に立ち寄った無人のビジターセンター。灯台はこの島のランドマークだ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 30mm F1.4 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/8秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:10.67 MB

large
thumbnail-21

パークレンジャーの郵便受けらしき箱には鳥避けがあるが、効き目はあるだろうか?

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 30mm F1.4 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:5.71 MB

小さな入り江につくられた船の発着場へ30分前に戻ると、乗り込む船が入り江付近に浮んでいた。島へ到着した霧に包まれた朝とは違い、空と海は青く、島からのきれいな夕焼けも期待できそうだった。船は時間通りに島を出て、島の東端周辺を少し寄り道するように巡航してから港に向った。

large
thumbnail-21

快晴になった午後は、島から離れたくなくなる気持ちにさせた。潮風に包まれたさわやかな入り江を超広角ズームレンズで写しこみ、家路に向った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:10.83 MB

large
thumbnail-21

島から離れてゆく際、島の東端に浮ぶアーチロック周辺を廻った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F13.0 | 焦点距離:33 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:8.04 MB

large
thumbnail-21

コンパクトな高倍率標準ズームレンズで、船を追って来るカモメをシャープに捉える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:125 mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 x 3136ファイルサイズ:5.51 MB

チャネル諸島の夏は、晴れの日でも朝夕霧に包まれることが多く、日の出と日没を見られるとは限らないが、冬は夏より霧の出る日が少ないので、冷たい海風に負けずテントを張り夜を過ごすと、日帰りの訪問者には見られない光景に出会う可能性は高いはずだ。
食料と宿泊道具を船から運ぶ体力と気力があれば、この島ですばらしい朝陽と夕陽を浴びられる機会が増すだろう。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

Page Top