第118回:イースタン・シエラ(Eastern Sierra)の紅葉(後編)
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第118回:イースタン・シエラ(Eastern Sierra)の紅葉(後編)

シエラネバダ山脈東の斜面、イースタン・シエラのマギー・クリーク(McGee Creek)沿いが黄色に染まっていた。黄葉した森の向こうの尾根には1本の木がポツンと立っている。秋を撮りに来た私は、黄葉した森ではなく色を変えない1本の木に惹かれて構図を決め、コンパクトな常用レンズで秋の風景を切りとった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:63mm

ランディー・キャニオンを登って行くと渓谷が見下ろせる大きな岩の上に立っていた。強い陽光が当る場所と山の陰になった場所のコントラストはとても強く、光と闇の世界の差ほどに見える。黄葉したアスペンが陽光に照らし出されて輝く渓谷で、まだ強い陽光を全身に浴び、透き通るような空気の中で大きく息を吸い込む。朝から大した物も食べていないのに、頭のてっぺんからつま先までエネルギーが満ちてくる。このまま登り続けたかったが、太陽が西の山に隠れてしまう前に、熊によく出会うトレイルを引き返すことにした。

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西の山に隠れようとしている陽光を背にして渓谷のトレイルを下る。コントラストの強い渓谷を大きく写しこもうと、超広角ズームレンズを手にした。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:8.57MB

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まだ陽のあたる場所にある草木は、生き生きとして輝いていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:11mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:13.37MB

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枝も落ちた1本の枯れた木が沼に立っていた。日中は目にもとめない枯れた木だが、陰になった山を背景にし、陽光を真横から受けるこの時間帯は存在感を強めていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:9.38MB

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ランディー湖まで下りてくると湖面は光を失っていたが、黄葉した木々の色が反射して湖面は黄金色に染まっていた。高性能望遠ズームをしっかりとホールドし、話し声が風に乗って聞こえてくる男3人が乗るボートにフォーカスした。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:120mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:15.07MB

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ランディー湖南岸の斜面に、この日最後の光が微かに残っていた。斜面に見える白い1本の横線は、湖の対岸を歩く別のルートのトレイルだが、肉眼では気がつかず、後で自分の撮った写真によって知らされた。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:16.36MB

シエラネバダ山脈の標高3,200 m付近から流れ落ちてくるミル・クリークと共にランディー・キャニオンを車でゆっくりと下りて行き、クリークが流れ込むモノ湖に立ち寄る。モノ湖の北西岸は、西の空の色が反射した湖と周辺の草が、昼間見た色鮮やかな秋の色とは違う落ち着いた光景をつくりだしている。静まり返った湖岸にある公園のテーブルで夕食を取った後、南岸に移動した。南岸の駐車場に車を停め車内でじっとしていると眠気に襲われる。陽が落ちた標高2,000 mの秋の夜は冷え込み、寒さで目覚める。ダウンジャケットを着込もうと車から外に出ると、数日前に皆既月食だった月が東の山から昇ってきた。私は寒くて湖岸に出るつもりはなかったが、月灯りに誘われて湖岸に出た。

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モノ湖の北西岸のトゥファ・タワー(TUFA TOWER)と呼ばれる石灰石も、湖岸の秋を感じ取っているように見えた。カメラを三脚に据えて数枚の写真を撮ると、小気味よいシャッター音が湖に吸い込まれていく。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/13 秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424×3616 | ファイルサイズ:17.33MB

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ロサンゼルス市の水道局が水を引いたため湖面が低下したが、昔はこのトゥファ・タワー群は湖面の下にあったと思われる。カメラをしっかりと三脚に据え、月灯りで湖岸のトゥファ・タワーを撮る。付属の現像ソフトでモノクロームにし調色に青を選ぶと、この夜のイメージにピッタリと合った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス: | | シャッター速度:15 秒 | 絞り値:F2.5 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:9.94MB

月夜のモノ湖で一夜を過ごした翌朝南に下り、リゾート地として有名なマンモスレイクスに向う。私は何か謂れがありそうなオールド・マンモス・ロードという道の周辺を散策した。

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オールド・マンモス・ロードを上っていくと、昇ったばかりの朝陽が山を赤く染め、西の空には月が浮いていた。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424×3616 | ファイルサイズ:19.90MB

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山の陰の向こうにアスペンが見え、木々の間にうねった短い木道が敷かれ、黄色いアスペンが立つ辺りには何かありそうな気がする光景。木道を渡るとそこには特別なものはなかったが、期待感を持って写真を撮る。この辺りは鉱山があったようで、人が切り開いた跡が残っている。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/13 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:10.95MB

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斜め後ろから差し込む朝陽が黄葉したアスペンを浮き上がらせ、陰になった背景の山に映える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:13.46MB

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常緑樹の森の中、朝陽が差し込み、数本の黄葉した木が輝くトレイルの真ん中に立ち、ここから歩いて行く気持ちになって撮った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:53mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:14.29MB

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朝陽がリゾート地のゴルフ場を美しく描写する秋の朝。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424×3616 | ファイルサイズ:28.52MB

マンモスレイクスからは、ハイウェイ395号線を少し南下すると、マンモス・ヨセミテ空港があり、平らな大地が続いているので飛行場を作ったのもうなずける。乾燥した大地にどこまでも立ち並んでいるように見える電信柱を撮ろうと、ハイウェイから逸れて電線の下に立つ。遠くに黄葉した木々が霞んで見え、人の手で何かを囲むように植えられた木のようなので、何だか知りたくなって近づいてみることにした。

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渓谷を旅して来ると、開けた大地が新鮮に見えた。電信柱を撮るつもりが、遠くに霞んで見える黄葉した木々に引かれて構図を決める。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:182mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:6.73MB

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黄葉した木々に近づく途中に見かけた教会。見事に黄葉したコットンウッドを手前に大きく入れる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136×4704 | ファイルサイズ:16.77MB

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黄葉した木々に囲まれたのは小さな墓地だった。秋晴れの日、幼くして天国へ旅立った子供のお墓の天使に、黄葉したコットンウッドの木漏れ日が優しく差し込む。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424×3616 | ファイルサイズ:21.72MB

黄葉したコットンウッドに囲まれた小さな墓地は、天国に近い場所に思えた。冷え込んだ朝から気温もかなり上がり、ジャケットを脱いで、墓地から少し南下してマギー・クリーク・キャニオンに入る。明るい黄色に染まった渓谷は、イースタン・シエラの秋そのものだった。

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マギー・クリーク・キャニオン入口付近のRVキャンプ場。この渓谷も秋の色が期待できそうだと感じた光景。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: 晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:15.49MB

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小さな枝についた黄葉した葉がクリークに落ちた枝に引っかかり、流れずに水に揺れていた。大口径中望遠マクロレンズを装填したカメラを三脚に据え、スローシャッターで葉の動きとクリークの流れを強調した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: | オート | シャッター速度:1/8 秒 | 絞り値:F22 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:10.83MB

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明るい黄色に染まったクリーク沿いのキャンプ場。来年の秋はここにテントを張りたいと思った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:25.85MB

秋の色を十分に楽しませてもらった私は家路につこうと思い、ハイウエイを南下し始めたが、所々に点在する秋の色に魅せられハイウェイから逸れてローカルな道を走った。

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まだ緑の葉が残るコットンウッド越しに、毛艶の良い馬が見えた。大口径標準ズームレンズで無駄のない構図を決める。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:31mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136×4704 | ファイルサイズ:26.41MB

10月の第2週目、紅葉前線のレポートで「Go Now」と書かれた情報を信じて、イースタン・シエラと呼ばれるシエラネバダ山脈東の斜面に秋の色「Fall Color」を撮りに来たが大正解だった。私は来秋のイースタン・シエラの光景をイメージしながら家路についた。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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