第113回:ジューン・レイク・ループ(June Lake Loop)の夏の終わり
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第113回:ジューン・レイク・ループ(June Lake Loop)の夏の終わり

シエラネバダ山脈の東、標高2,323mのジューン・レイク(June Lake)は、高い山に囲まれ朝陽が届くのが遅かった。湖面が明るく輝きだしても湖の南岸は最後まで朝陽が届かず、釣人がシルエットになった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:300mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×1733 | ファイルサイズ:4.34MB

8月最後の週末、LAの自宅から約550km北へドライブしたカリフォルニア州モノ郡のシエラネバダ山脈東にあるジューン・レイクへ向った。2泊3日の家族旅行は、車に荷物を詰め込むのに手間取り、予定より遅れて自宅を出発。雄大なシエラネバダ山脈の東側(Eastern Sierra)の景色が美しいハイウェイ395号線に入り北上していくと、陽射しは強く気温は38℃まで上がった。リゾート地として有名なマンモス レイクス (Mammoth Lakes)付近まで上って気温が10度ほど下がり、ハイウェイ395号線から州道158号線に入り南南西に少し進み、さわやかな風が吹く青いジューン・レイクが現れる。湖岸の州道を少し走って湖南岸のタウンに到着し、予約をしていた宿にチェックインをした後、すぐに湖北岸へ車で移動した。キャンプ場を抜けて湖岸に出ると、高い山で湖の半分は既に山陰になっていた。

large
thumbnail-02

州道158号線沿いの松越しにジューン・レイクを眺める。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424×3616 | ファイルサイズ:22.46MB

large
thumbnail-03

湖の北岸でこの日最後の陽射しを浴びて遊ぶ人々。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:11.50MB

large
thumbnail-04

山陰になった湖岸に置かれたボート。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/60 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424×3616 | ファイルサイズ:22.50MB

北岸から南岸に建つ宿に戻り、小さな宿が数軒建つ静かな道をマリーナまで歩いていく。湖岸はすでに暗くなり、西の高い山の上には雲がかかっていた。肌寒くなってきた暗い湖岸にしばらくいると、西の山に沈んだ太陽が雲を下から照らし、雲はオレンジ色に染まって湖面に映り込んだ。

large
thumbnail-05

湖南岸のマリーナには鴨がたくさん集まっていた。三脚をボート内に立てスローシャッターで撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/4 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:25mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:9.79MB

large
thumbnail-06

少し前まで暗かった湖面がオレンジ色に染まり輝いた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F3.5 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:13.86MB

宿はキッチン付きのコテージでけっして新しくはなかったが、釣好きな人が喜びそうな魚の絵や置物がセンスよく置かれ、宿は満室だと聞いていたわりに夜は静かになるのが早く、宿で一番の夜更かしは私だったかもしれない。翌朝、目覚めるとまだ外は薄暗かったが、カメラ1台を首からぶら下げ、愛犬を連れてマリーナまで歩いた。マリーナはまだ薄暗かったが、西に聳えるカーソン・ピーク(Carson Peak)に朝陽が当たり始めていた。湖面にはボートが浮き、マリーナはすでに活気があった。私は宿に戻り愛犬を家族に任せ、カメラバックを担いで再び湖岸まで歩いた。高い山に囲まれている湖にはなかなか朝陽が届かず気温も低く、「もうすぐ夏も終わりだな」と思いながら朝陽を待った。ようやく朝陽が湖岸に届くと気温は一気に上がった。

large
thumbnail-07

朝陽は最初に標高3,312mのカーソン・ピーク(Carson Peak)を照らし始め、陽が当たる範囲は見る見るうちに広がった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:45mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136×4704 | ファイルサイズ:11.54MB

large
thumbnail-08

湖南岸の湿地帯部分の草むらで朝陽を待った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:19.22MB

large
thumbnail-09

朝陽を受けて色鮮やかだった鴨は一際目を引いた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:150mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:7.75MB

large
thumbnail-10

朝陽に輝くスチール製のボートの質感はモノクロームにするとより強調され、原寸大で見る画像には、ボートを留めておくロックに刻まれた文字がシャープに刻まれていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:150mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:4.60MB

ハイウェイ395号線からジューン・レイクまで西へ入ってきた州道158号線は、ジューン・レイク・ループと呼ばれ、南北に走るハイウェイの西側を膨らんでループのように繋がっている。私のように南から入って来ると、ジューン・レイク、ガル・レイク、シルバー・レイク、グラント・レイクを右手に見て、再びハイウェイに戻っていく。陽が昇って快晴となったこの日、私はジューン・レイク・ループをゆっくりとドライブすることにし、宿泊したジューン・レイク南岸から僅かな距離にあるガル・レイクにまず最初に立ち寄った。

large
thumbnail-11

地図上ではジューン・レイクの三分の一以下の大きさに見えるガル・レイク。湖面が反射する一艇の小さなボートに乗る4人は、それぞれに好きなことをしていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 50-150mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:150mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:12.44MB

large
thumbnail-12

ガル・レイクのマリーナには堤防のような仕切りがあり、塗装が剥げ落ちた古いボートが静かな湖に似合う。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:12.98MB

large
thumbnail-13

ガル・レイクの湖岸には堤防のような仕切りのためボートが立てる波が押し寄せず、穏やかな湖面に鴨が浮きその下をマスがゆっくりと泳ぐのがよく見えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:13.45MB

ガル・レイクからは、左手に誰もいないジューン・マウンテンスキー場を超え、ジューン・レイク・ループに戻り先へ走る。西へ向う道が急カーブして北に向かう辺りから、西の山の山腹に白い糸のような流れが2本見える。岩壁を流れ落ちる滝だった。トレイルの入口が近くにあり、これから登ろうとしていた数人のハイカーに滝の名前を訪ねたが誰も知らない。トレイルの入口から少し北へ行くと、小さなクリークが流れ、ラッシュ・クリーク(Rush Creek)と書かれた小さなサインが立っていた。私は路肩に車を停め、クリークが流れる道のない森の中に入ってみた。少し見上げると小さな滝が木々の隙間から見えたので、愛犬と家族を待たせて滝に近づいてみた。小さな滝に近づくには石が転がるクリークを渡り、生い茂る木々の枝の中を潜って登らなければならなかった。生い茂る木々を超えると、大きな岩が立ちはだかっていた。岩によじ登ると、岩壁を流れ落ちる滝が良く見えた。地図上で確認してもそこには滝はなく、その名の通り、流れが急なラッシュ・クリークの一部とされているようだった。そして私が前に見た大きな2本の滝は、さらに上にあるラッシュ・クリーク上のホーステール・フォールズ(Horsetail Falls)と呼ばれる滝だと後で知った。

large
thumbnail-14

雪解け水で流れ落ちる水量が多い春先に見たいホーステール・フォールズ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:300mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:21.64MB

large
thumbnail-15

ちょっとした冒険心を沸かせてくれたラッシュ・クリークを岩の上に立って見下ろす。強い陽射しを受けた岩の暖かさを温黒調で表現した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:10.81MB

large
thumbnail-16

私には立派に見えた滝。モノクロームにすると流れ落ちる水が強調された。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:29mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136×4704 | ファイルサイズ:8.90MB

水がとても速く流れ落ちることからラッシュ・クリークと呼ばれるクリークから北へ走り、冬場は交通止めになる部分のジューン・レイク・ループに差し掛かる。ループの右手のシルバー・レイク(Silver Lake)は、釣りはもちろんのこと、ボート遊びをする人々を多く見かけ近くに牧場があり、ジューン・レイクとガル・レイクと比べると開放的な雰囲気がしたので、愛犬を湖岸に放した。

large
thumbnail-17

シルバー・レイクの南。持ち込んだビニール製のボートで遊ぶ人と泳いて来た犬が湖岸に戻ってきた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:450mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:7.54MB

large
thumbnail-18

シルバー・レイクの南で、愛犬のシロが遠くで泳ぐ犬を見つめていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:14.74MB

large
thumbnail-19

シルバー・レイクを独り占めしているように見えた少年。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:17.45MB

シルバー・レイクからは北へ走りジューン・レイク・ループで最大のグラント・レイク(Grant Lake)を超えてハイウェイ395号線まで走り、ジューン・レイク・ループにいったん別れを告げてそのまま北へ行き、リー・バイニングでランチを取り少し北にあるゴーストタウンを見て、家族旅行らしくゆっくりとジューン・レイク湖岸の宿に戻った。翌朝、こじんまりして静かなガル・レイクまで歩き一時を過ごし、ジューン・レイク・ループを後にした。

large
thumbnail-20

グラント・レイク(Grant Lake)は水が少なめに見えたが、空が映り込む湖面の色はなんとも言えない濃いブルーだった。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424×3616 | ファイルサイズ:24.07MB

large
thumbnail-21

午後のジューン・レイクは、傾いた太陽の反射で湖面は眩しく長くは見ていられなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:500mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704×3136 | ファイルサイズ:13.45MB

large
thumbnail-22

朝のガル・レイク。ジューン・レイク・ループ最後の一枚はセピア調が似合った。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424×3616 | ファイルサイズ:16.99MB

ハイウェイ395号線の西に膨らんだジューン・レイク・ループは約36㎞。ハイウェイ395号線も含めてジューン・レイク・ループとする人もいて、その場合のループの長さは約56㎞になる。スキー場は、ジューン・レイクを少し超えたジューン・マウンテンの山腹にあり冬も人が訪れるが、訪問客は夏が一番多く、人口600人あまりのジューン・レイクは、夏は訪問者で2,500人のタウンになる。ジューン・レイク・ループ沿いにある幾つかの湖は、釣りやボート遊びをしないでただ湖岸にいるだけでも幸せな気分にさせてくれ、夏休み最後の家族旅行は満足度がかなり高かった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

Page Top