シグブラ
第71回:温暖な沼津ブラブラ

温暖な沼津ブラブラ

December 22, 2015

気がついたら今年もそろそろ終わりだ。ディーラーで車検が終わった愛車を受け取り、あまりの天気の良さに東名高速に滑り込んだ。本当は年末進行の原稿を家で書く予定だったのだが、SIGMA dp0 Quattroを持って家を出た時点でこうなるのは明白だった。

かなり昔、自動車や二輪車メーカー、雑誌の撮影をしていたため、富士スピードウェイや箱根にアクセスがいい東名高速や第三京浜の起点近くに移り住んだ。なので高速と言ったらやはり東名だ。年末だが快適な交通の流れに身を任せているとあっという間に御殿場を過ぎていた。空いている東名は実に快適だ。久しぶりに沼津インターで下り、そばを食べてから浜に出た。防風林の松が冬支度をして立ち並ぶ。

まだ午後早い時間なのに陽光が色づき始めている。幸い風は暖かく、春のような柔らかさだ。さすが静岡。窓全開で走っていて心地よいくらいだ。街中を抜けクルマを降りてブラリと御用邸記念公園に入ってみる。素晴らしく手入れされた邸内は実に見事。平日にも関わらず団体客で賑わうのが納得できる。室内も調度品も庭園も見応えがあり、とても居心地がいい。

邸内から浜に向かう。暖かかった空気が、日が傾くにつれ徐々に力を失っていくのを感じる。少しずつ闇が近づいているようだ。波の音を聞きながら遊歩道を進む。

松の林を抜けて堤防に出る。斜面には蔦が絡まったボートが放置されていた。どうやらしばらく海の上には浮かんでいないようだった。草を踏みしめて堤防の上に立つ。残念ながら眼の前は工事が行われていて雑然としていた。SIGMA dp0 Quattroのシャッターを数回切って来た道を戻ることにした。

太陽を背にすると自分の影が長く伸びていた。林の中を歩きながら2015年を振り返る。「自分はこの一年間、何をしたのだろうか」と。同時に「来年はどこをブラブラしようか」と。

来年はどんなカメラとレンズを使っているのだろうか。今のものも使い続けるだろうが、新しく登場してくる機材も楽しみで心が躍る。何よりもそれらを持って、いろいろな所に行くのが今から待ち遠しい。

と考えながら歩いていると、すっかり日が傾いてしまった。温暖であまりに居心地がいいので一泊したくなってきた。しかし、残念ながら放ってきた仕事を片付けに戻らねばならない。iPhoneで道路情報をチェックすると、東名は夕方のラッシュで大渋滞のようだ。ならばと海沿いをブラブラと帰るとしよう。次回この辺りに来るのは2016年になってからかな、と考えながら。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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