シグブラ
第51回:モノレールに乗ってブラブラ

モノレールに乗ってブラブラ

February 25, 2015

CP+2015 が終わり、完成版のSIGMA dp3 Quattroを持って出かけた。素晴らしく晴れていたので、高い場所を走るモノレールに乗り、眺望を楽しみながら丘陵地帯を抜ける。川を渡る手前でモノレールを降りて気になっていた公園を訪れた。しかし目当ての被写体は残念ながら少し前に手を入れられて、だいぶイメージとは違う印象になってしまっていた。ならば、と次なる場所へと川を渡ることにした。

モノレールから見た進行方向の視界は美しい青空だったが、やってきた方向を振り返ると暗雲が立ちこめている。ほど近く見える山々はうっすらと雪化粧をし、ダイナミックなコントラストを見せてくれていた。

雪の積もった山を見ると寒々しいが、歩いていると春が近づいてきているのを感じる。徐々に寒さが和らいでいるのだ。風もどことなく湿り気を帯びてきている。この日は風も弱く、川の真ん中の橋上でも寒いとは思わなかった。

次の目的地に着いた。途中いろいろと寄り道をしたのでだいぶ日が傾いてきているが、まだまだこのカメラでも撮影できる明るさだ。嬉しい季節がようやくやってくる。しかし、目の前にある被写体は戦争の悲しい歴史を遺す建物だ。戦闘機による2回の機銃掃射と爆撃機による空襲によってできた傷跡が今でもはっきりと残っている。

戦時中は軍需工場へ送電する変電所として稼働していたので攻撃の対象になったらしい。戦後は自動車関連会社の変電所として、つい20年ほど前まで稼働していたようだ。

この変電所は現在は公園となった敷地に戦跡として遺されている。建物の周りには関連するケーブルやパーツなどがオブジェとして埋められているが、公園を行き交う人たちで気に留める者は殆どいない。

公園で遊ぶ多くの家族連れや子どもたちの声を聞きながら、建物の周りをゆっくりと観察して歩く。痕跡をまじまじと見ると当時の過酷な状況が伝わってくる。建物は爆弾の直撃を逃れ奇跡的に崩壊を免れたが、3回の攻撃で多くの人々が亡くなったようだ。

こういう悲しいことが再び起きないといいな、と考えながら傷だらけの変電所をあとにした。「日が長くなったな」と思って振り返ると、団地の間から差し込む僅かな光が変電所を浮かび上がらせていた。さて、次はどこをブラブラしようか。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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