シグブラ
第68回:初冬の八ヶ岳ブラブラ

初冬の八ヶ岳ブラブラ

November 11, 2015

今年はあまり山に行っていない。以前は毎月のようにどこかの山に入っていたものだが近年は里山や低山を徘徊することが多かった。ならば、ということで八ヶ岳に向かうことにした。久しぶりに山小屋に泊まろうと、SIGMA dp0 Quattroをバックパックに入れてまだ暗い東京をあとにした。

すっかり明るくなった山道を歩き出す。ハイカットのトレイルランニングシューズで、岩と土、そして木の根っこなどを足裏に感じながら進む。ソールの固い登山靴もいいが、大地の凸凹を足裏で感じながら歩くのが好きだ。

いくつかの橋を渡り川を越える。ところどころ抉られたような箇所があったが、先の大雨の影響だろうか。山肌が崩落しているところもあり、慎重に歩を進める。

今晩は山小屋に泊まるのでバックパックが軽い。SIGMA dp0 Quattroで写真を撮りながらゆっくりと登ったが、コースマップのタイムとほぼ変わらないペースであった。荷物が軽いと疲労も少ないし歩く速度も落ちない。楽チンである。八ヶ岳の美しい森を味わいながら高度を稼いでいく。

2時間ほど歩いて山小屋に着いた。午前中であったが本日の行動はこれにて終了である。あとは風呂(自家水力発電設備があるので風呂があるのだ)と晩ご飯(桜鍋である!)までのんびりと過ごす。小屋にほど近いテン場(テントを張っていいエリア)を見に行ったり、広間にある山の本を読んだりした。夜は他の登山者と一緒に薪ストーブを囲んで酒を飲み交わした。山小屋の夜はこれが楽しいのである。

翌朝は5時起床だ。朝食を食べ、装備を調えてから登山道を歩き出す。まだ風はなく、それほど寒くはない。耳を澄ますと遠く稜線上を吹く風の音が聞こえてきた。森林限界を越えると冷たい風が吹き荒れそうだ。ふと見上げると小さな月が浮かんでいた。

峠を越えて木々が姿を消す高度になると、なかなかの風が出迎えてくれた。山頂から斜面に沿って吹き下ろすような風だ。たしかに冷たくてパワーがあるが、それが心地いい。山に来たという実感が湧いてくる。

ガレた斜面を越えると広々としたピークに到達した。硫黄岳山頂である。いつ来てもここの開放感が堪らない。相変わらずの風が吹くが、太陽の力はすごいもので、グングンと身体が温まっていくのを感じる。

爆裂火口周辺をブラブラと撮影する。このダイナミックな景色は本当に素晴らしい。そういえば、以前訪れた本沢温泉はこの真下にある。またあの露天風呂にも行きたいものである。

本当は八ヶ岳を南に縦走したかったのだが、翌日から天候が崩れるとのことだったので、今回は山小屋一泊の楽々登山となった。久しぶりだったのでこのくらいがちょうどいいのかもしれない。雄大な景色を撮りながら下山を開始した。

樹林帯に入り山小屋に着いた。小屋は明日で冬季閉鎖となるようで、スタッフや常連客が総出で片付けの準備をしているところであった。「お世話になりました。また来年!」と挨拶をして登山口に向かって歩き出す。「次回はいつこの山をブラブラできるかなあ」と考えながら、八ヶ岳をあとにしたのであった。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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