シグブラ
第57回:東北のネコ島ブラブラ

東北のネコ島ブラブラ

May 27, 2015

dp Quattro をカメラバッグに入れ、東北にあるネコの島に行くことにした。震災前年に訪れて以来になるが、島の様子はどうだろうか。珍しく新幹線(!)に乗って北を目指した。

仙台から高速バスに乗り換えて石巻に向かう。約一時間揺られていると石巻駅前だ。そこから港行きの路線バスに乗車。しばらくすると船着き場が見えてきた。さあ、乗船券を買って島に渡ろう。

ネコの島では岸壁に船が着くと、たいていは多くのネコが降りてくる乗客に集まってくる。しかし今日は違った。まるで夏のような日射しだったので、お出迎え担当のネコたちは、桟橋に停まっている軽トラックの日影でのんびりと寝そべっていた。

上陸した島は4年前の地震と津波で大きな被害を受けていた。多くの施設は改修されつつあるが、この付近一帯は約1.3メートルも地盤が沈下したそうで、海に面した作業場は大潮の日には海水に浸かってしまい、漁網の手入れ作業などに影響が出ているとのことだった。

島の人々にいろいろと近況を聞いてから島内をブラブラと撮影する。人間よりネコが多いので、どこにいってもシーンと静かだ。

ごくたまに人とすれ違うことがあるがお年寄りばかり。ネコの名前を呼びながら、杖をついたお婆さんが歩いて行く。

島の至る所にネコがいるが、多く集まるところは決まっている。そんな場所を見つけると、リーダーのオスが「なんだ、お前?」とばかり挨拶にやってきてくれる。

一日中多くのネコと一緒に過ごすとネコになった気分になれる。道端に座って休んでいると周囲のネコが集まってきて足元で眠り始めた。「のんびり一緒に寝転ぼうぜ」と言われているようで、仕方なく一緒に寝転ぶことに。

こんな感じでネコの島をブラブラしていると、遠くから帰りの船の汽笛が聞こえてきた。残念ながら帰る時間のようだ。わらわらと集まってきたネコたちに「またブラブラしに来るからな」とお別れの挨拶をして、桟橋に早足で向かった。振り返るとネコたちがしっぽをピンと立てて見送ってくれていた。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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