シグブラ
第50回:山あいの廃校ブラブラ

山あいの廃校ブラブラ

February 9, 2015

都内でも雪が降った翌日、ふと思い立って山間部にある廃校を訪ねた。まるで時間が止まったように丁寧に保存されたその場所は、どこか懐かしくてほっとするような空間であった。

バス停から急な坂を登ると、太陽の光を反射して輝く校舎が見えてきた。その校舎の前にはサッカーとバスケットのゴールが一緒になったものが。朽ちかけてはいるが、まだまだ現役といった印象を受ける。

校庭にはうっすらと雪が積もっていた。すでに融けてしまった都心部の湿ったそれと違ってサラサラとした雪質だ。照り返しでカラフルな遊具が鮮やかに見える。

記帳をして校舎内に入る。地元の方が管理しているので、今でも使われているかのような状態だ。とてもいい雰囲気である。その方から詳しい解説を拝聴しながら撮影をさせてもらう。

思わず「懐かしい!」と思ってしまう教室内。もちろん自分が通った小学校とは全然違うのだが、小さな机や椅子、それと久しぶりの黒板やチョークにそう感じてしまう。黒板には来訪者からの感謝のメッセージなどが書かれていた。その多くはキレイに保存されていることに対するものだ。

校舎内には当時授業で使われていたものや、地元にゆかりのあるものが展示されている。昭和に作られたそれらはどれもしっかりとしていて、きちんと使えるものが殆どだ。当時の「モノ」の設計や品質は素晴らしかったと感じる。

別の教室には、この学校最後の板書がそのまま残されている。まるで今さっき書かれたような状態だ。これによると最後の生徒数は7名だったことがわかる。

2020年にオリンピックが東京で開催される予定だが、前大会で聖火リレーを務めた地元少年の写真と感謝状が飾ってあった。彼は5年後の大会をどんな思いで見つめるのだろう。

暖かい日射しが差し込む窓辺には本棚が。自分も昔読んだことがある本がたくさん並んでいた。小さな椅子に腰掛けて、思わず何冊も読み耽ってしまった。童話から伝記、生き物の本などを手に取り小学校時代を思い出した。

本を読み耽り、管理の方とジックリとお話ししていたら、あっという間に時間が過ぎていた。そろそろ下校しなければいけない時間だ(笑)。とても心地よい空間だったのでブラブラと再訪したい。次回は新緑の季節がいいかなあと考えながら、急な坂を下ってバス停に向かった。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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