シグブラ
第22回:露天風呂目指して八ヶ岳ブラブラ

露天風呂目指して八ヶ岳ブラブラ

December 13, 2013

国道沿いの気温計がマイナス9℃を示している。時は11月最後の日。時間は朝6時頃。場所は長野県の八ヶ岳付近。深夜に東京を発ちクルマで仲間と共に登山道入り口に向かってるところだ。ようやく明るくなってきた空に、冠雪した八ヶ岳の峰がくっきりと見え始めた。しかし今日はそのピークを踏まない登山である。目指すは日本で最高地点にあるという露天風呂なのだ。

クルマを登山道入り口にデポしてトレイルを歩き始める。その傍らには温泉の看板が。積もった雪がガチガチに凍り付いていた。吐く息が白い。

緩やかな勾配を登り、硫黄岳がよく見えるようになってくる頃には日差しが強くなってきた。気温もグングンと上昇し0℃以上になっているように感じた。汗ばんできたのでジャケットを脱いでバックパックに仕舞い込む。

ピークを目指さない登山なのでのんびりと写真を撮りながら歩く。大阪から八ヶ岳周辺に通っているという、男性2人のパーティーを追い越したり追い越されたりして進む。途中の富士見平では針葉樹の向こうに富士が見えた。山小屋の人がキャタピラの運搬車で薪を運んでいくのを見送った。

トレイルの積雪は深いところで30センチ程度だが、登山者が歩いた部分は地面が露出している部分もあった。しかしところどころ渡渉部分は川がコチコチに分厚く凍っているのでアイゼンなしでは慎重に歩く必要がある。

頭上には雲一つない青空が拡がる。標高が高いので紫外線が強い。バラクラバを外した顔がヒリヒリとしてきた。風もなく静かで穏やかな山歩きを楽しむ。そろそろ目的地に到着だ。

目的地・本沢温泉の小屋で入湯料を払い、露天風呂「雲上の湯」に向かう。小屋から10分ほど歩いて雄大な景色の中にある湯船に浸かった。ここは爆裂加工で有名な硫黄岳の麓にあるのだが、まさに野っ原にある野天風呂だ。脱衣所もないのでお天道様の見守る中、裸になって入ることになる。同行した女性もはじめは躊躇したようだったが、あまりの開放感に最後はリラックスしてお湯を楽しんでいた。秋の台風で流され、再建した湯船から山々を見るのは実に爽快!大阪から来た2人といろいろ話しながら身体を温める。彼らは DP1 Merrill を持って山の写真を撮っているとのこと。

40度近いお湯の中から0度の外気に肌をさらし服を着込む。温泉のお陰でそんなに寒くは感じなかった。さて、名残惜しいが冬は日が短いので迅速な行動が求められる。夕方はトレイルが凍結するので、念のため軽アイゼンを装着しての下山だ。残念ながら雪を期待して背負ってきたスノーシューの出番は次回以降に持ち越し決定。「どこをスノーシュー履いてブラブラしようかな」と考えながらゆっくりとトレイルを下り、帰りにも温泉に立ち寄って八ヶ岳をあとにした。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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