シグブラ
第18回:富士・宝永山のクレーターをブラブラ

富士・宝永山のクレーターをブラブラ

October 11, 2013

涼しくなったり暑くなったりと安定しない天候が続いているが、徐々に季節は秋めいてきたようだ。しかし東京に久しぶりの夏日予報が出たので、「ちょっと高いところに涼みに行くか」と富士山方面に出かけてきた。目指したのは富士の側火山となる宝永山である。

富士山には毎年幾度となく訪れる。7月には久しぶりに最高峰の剣ヶ峰まで登ったが、たいていは山麓で撮影したり、アウトドアスポーツを楽しんだりしている。今回訪れた宝永山とは富士山最新の噴火口である。標高は2693メートル。宝永4年(1707年)の大噴火でできたクレーターだ。富士宮口五合目駐車場に車を停めて、雲海の中ハイキングに出発した。足元では植物が紅葉している。

登山口から入山し、約30分で六合目に到着。山小屋と閉鎖されている富士山頂へのルートを過ぎて約10分ほどで宝永山の第一火口の縁に立った。目の前には広大なクレーターがドーンと拡がる。残念ながら雲が直下で湧き上がっていて、その全貌を確認することはできない。ここまでは五合目にドライブに来た一般の観光客でも気軽に来られる範囲で、アップダウンも少なく足元も比較的しっかりしている。ここからはザクザクとした砂礫の中、ジグザクに急勾配を登らないといけないので登山の装備が必要となる。

縁から第一火口の底へと降りていく。黒い溶岩と軽石状の砂礫が混じったルートを一歩一歩進んでいくと、突然霧というか雲というか真っ白い気体に包み込まれる。それはとても水分を含んでいて、睫毛に水滴が付着しウェアがしっとりと濡れた。火口の底にはおびただしく落石(というか岩だ)ゴロゴロとしている。休憩スペースには木製のテーブルとチェアがあるが、ここで休んでいて直撃を受けたらひとたまりもないな、と思った。底から宝永山山頂に向けて登り出す。ここからは約1時間ちょっと登りのみだ。踏ん張りが効かない砂礫なので歩くのに難儀する。途中火口底を振り返ると一瞬青空が覗いた。

山頂に着いた。雲海で下界の様子は真っ白だが、富士山頂方面は雲が切れて雄大な山体が姿を現した。風は冷たいが日光が暖かい。また地面からの輻射熱がかなりあって暖かく感じた。上空を横切る飛行機がクッキリと見える。どこ行きだろうか。

しばらく山頂に逗まったが下界の景色が望めそうにないので戻ることに。稜線で数名の登山者と行き交い、馬の背と呼ばれる分岐点から火口の底に向かって降りていくことにした。

馬の背から下降中、火口内に乾いた音が響いた。落石だ。音の方を見て、砂埃が上がっているのを確認する。距離がだいぶあるので定かではないが、50センチクラスの石がいくつか猛スピードで転がっている。石が石に当たりさらに事態が大きくなっていく。しかし程なくそれは収まった。これがもっと大きな岩だったらそう簡単には止まらず、また巻き込まれる石も相当な数になって大規模な落石になるかもしれない。足元に転がっている石と、ルート上を歩く登山者を見て道中の安全を祈った。落石を警戒しながら第一火口縁に戻ると、雲がキレイに消えて宝永山火口が美しく見えた。

撤収を終え、山中湖畔に降りてきた。夕焼けを撮影しようと三脚に望遠ズームレンズを装着して待機。ファインダーを覗くと山頂の鳥居がいくつか確認できた。しかしながら富士山は湧き上がる雲に埋没してしまった。残念。その直前の撮影結果を見ながら次のブラブラはどうしようかと考えを巡らせたのであった。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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