シグブラ
第10回:昭和を感じる神奈川ブラブラ

昭和を感じる神奈川ブラブラ

June 14, 2013

何も予定がない日曜の午後はあてもなく電車に乗って出かける。そして車窓からの景色が気になった駅でフラリと下車。歩いて行く方向を決めるのは改札を出て周囲を見渡してから。今日は昭和の雰囲気が色濃く残る商店街がスタート地点になった。

戦後の闇市が原点だという商店街を歩く。木造のアーケード内に入るとそれを実感できた。時の流れを刻んだ壁や柱、意匠が目を引く。こういう雰囲気を求めてなのか、アーケード内はそこそこの人出だ。梅雨だというのにいい天気で暑いのもあるのだろう。人々が日陰に逃げ込んでいるのだ。

アーケードを幾度となく往復したあと一軒の喫茶店に入った。サイホン式珈琲の店だ。近頃はチェーンのカフェに入ることが多かったので、カウンターに並ぶサイホンが新鮮だ。マスターが淹れる珈琲の技を撮らせてもらってから、その珈琲を楽しむ。深みがあって柔らかい味だった。

昭和な商店街を離れて海の方へ歩き始める。ガードをくぐり大通りを渡る。ここら辺は昔、路面電車が走っていたらしい。街全体がどこか懐かしい雰囲気を醸し出している。通りに面した商店もしっかりと営業していて「シャッター通り」とは無縁のようだ。

国道を2本渡って海に出た。海、といっても運河である。工場と米軍施設、それとマリーナが混在する面白いエリアだ。この辺りまで来ると人が少ない。いるのは釣り人だけ。その向こうには横浜みなとみらい地区が見えた。あちらは人でごった返しているに違いない。

貨物の廃線跡を越え歩く。海沿いは風があって心地よい。何気ない風景を撮影していると、信号待ちで停まったクルマの助手席から「この人は一体何を撮っているんだ?」という視線を浴びる。端から見ると不審人物だろうな、と思う。

子供の頃から湾岸地帯が好きだった。広い空と真っ直ぐ延びる道路、誰もいない空間、夜の工業地帯など、数々のシーンを銀塩カメラで撮影した。この辺りも数十年前に撮った記憶がある。印象は当時とあまり変わらないが、水がだいぶキレイになったと感じる。

運河を渡る。橋の上から係留されている船舶を覗いたり、水底にうごめく生き物を見つけて観察して楽しむ。再び国道に近くなるにつれ民家が現れてきた。どこからか味噌汁の香りが漂ってくる。そろそろ夕食の時間のようだ。何の味噌汁だろう?ふと、まだまだ十分に写真を撮れる明るさがあるのに気づいた。日が随分と長くなったものだ。

通りを渡り丘に登る。緑地帯を歩いて駅に向かった。道ばたの草むらにネコが夕涼みに出てきていたのでしゃがんで撮影した。ネコには蚊が群がっている。夏が近いことを知る。「おいおい、蚊に食われちゃうぞ」と話しかけながら、次は山をブラブラしようかなあと考えた。そしてネコにお別れを言ってから、昭和な商店街を駅に向かった。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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