シグブラ
第97回:大森の線路沿いをブラブラ

大森の線路沿いをブラブラ

February 1, 2017

新しいSIGMA sd Quattro Hがなかなか良い。ボディサイズなどはSIGMA sd Quattroと変わらないが、APS-CからAPS-Hと大型化されたセンサーのおかげで高画素になったのはもちろん、感覚的に被写体との距離感やボケ味が身体にしっくりくるのだ。なので最近は”H”専門である。そんなわけで正月気分が抜けた街へカメラを提げてブラブラと出かけてみた。

寒波で猛烈に冷え込んだ大森の街に降り立った。まずは大正13年創業という洋食屋で腹ごしらえ。JRと京急の間に位置するその店で絶品のランチを頂いたあと、冷たい風が吹く線路の狭間を歩き出す。この街の顔とも呼べるオフィスビルを覗くが、かつての活気は薄れて淋しい空気感が漂っていた。

レトロな雰囲気溢れるアーケードやガードそばの商店をチェックしながら、SIGMA sd Quattro Hのシャッターを切る。新しいセンサーは約5100万画素相当で克明に街の風景を写しとってくれる。「この先階段注意」と書かれた斜路と階段が同居する、電車の往来がひっきりなしの歩行者専用踏切がなかなかいい雰囲気だった。

JRの車窓からいつも眺めていて気になっていた公園に立ち寄る。蒸気機関車と消防車、そして交通教育をするコースがある小さな公園だ。子ども連れのお母さんたちで結構賑わっていたのには驚いたが、こちらの目的は展示されている車両である。この寂れ具合が実にいい。いわゆる「Foveon物件」なのだ。

Foveonは金属や濡れた石畳などの描写に定評があるが、使い込まれて”やれた”重厚感ある物件ほど、その威力を発揮するのは皆さんご承知の通り。蒸気機関車内にある圧力計の煤け具合とか、厚く黒くペイントされたメタルボディなどのベコベコ感とか本当に堪らない。

このために思わず往年のマクロレンズを防湿庫から引っ張り出してきたほどで、親子連れの不審者を見るような視線をものともせず(あ、シグマユーザーだから!?)、「Foveon物件」を黙々とSIGMA sd Quattro Hで収集していく。

しかしこの日はとても寒く、シャッターを切っていると身体が芯から冷え切ってしまった。ブラブラせずに同じ公園にずっといたので当然である。駅の賑やかな方に出て、チョイと身体にガソリンを入れようかと思ったが、さすがにまだこの時間ではどこも店は開いていなかった。残念。

というわけで身体を温めるべくブラブラを再開。日本中の人が小学校で習ったであろう、あの大森貝塚に向かう。見るべき貝塚遺構は2カ所あって、まずはオフィスビルの傍らにある小さい方へ。こちらは「大森貝墟」。石碑を撮影していると通り過ぎるJRの車両に乗っている人と目が合った。

次は大きい貝塚へ。途中にある神社にも立ち寄る。ここはイヌとタバコは禁止だそうだ。寒すぎて誰もいない境内をグルリと歩く。

大きい方は「大森貝塚」と書かれた石碑があって、あのモース氏の石像が立っている。なぜ2つ貝塚があるのかはいろいろ理由があるそうなのだが、こちらは広い公園になっていて散策が楽しめるようになっている。土器を持つモース氏の石像を、SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Artの絞り開放で狙う。

日も陰り風も強くなって、ますます気温が低くなってきた。そろそろ退散して一杯やって帰ることにしよう。この公園には蒸気がときおり立ち上る仕掛けがあるのだが、こういう寒い日にはちょっと辛い演出に感じた。蒸気の向こうのモース氏に別れを告げて、池上通りをブラブラと歩いて駅に向かうことにした。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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