自然に寄り添って生きていく。そんな景色にレンズを向けてみます。山国である日本。多くの地域で、人々は山あいに肩を寄せ合うようにして暮らしています。山から海までの距離は短く、そこに家や田畑、さらに港があるという、圧縮された光景が広がります。だからこそ、その景色は万華鏡のように表情を変え、見る人の心を打つのでしょう。21mmの画角で日本の景色を覗き、あらためて感じたことは、「人々はその土地に寄り添って生きている」というあたりまえの事実です。それにしても日本が織りなすその景色は美しい。そう感じずにはいられませんでした。

超広角なら、目の前の光景を自分の眼で見た通りにキャプチャーできますが、同時にそこには様々なモノやコトが入り込んで来ます。その雑多な画面を丹念に整理していると、次第に物事の本質が浮かび上がって来るのが分かります。日本の原風景を捉えるテストであらためて感じたのは、超広角レンズにもかかわらず、その「圧縮感」です。車がすれ違うことすら難しい細い道。山肌にへばりつくように建てられた家々。そのすぐ側に、傾斜地を階段のように切り拓いた田畑がある。生活と生産行為が極めて密接に一体化しているのです。風景の一部分を切り取る標準や望遠では、こんなことをあらためて感じる機会はなかったかもしれません。21mmの眼でシーンと対峙することは、いままでにない視点を養ってくれたと思います。