ソルトン湖の最新の様子 / Latest updates on the Salton Sea
押本龍一「私の出会う光景」|第334回
押本龍一「私の出会う光景」
December 13, 2023
炭鉱夫に見える人形が眺めるこの地は、カリフォルニア州南端にあるソルトン湖東岸のボンベイビーチだ。近年様々なアート作品が誕生し独自の光景が広がり、破壊的なダメージを受けた戦禍の跡か、大災害の跡にも見える不思議な場所だ。
【使用機材】 fp L , 17mm F4 DG DN | Contemporary
アフリカ系アメリカ人が自由に生きることを目指して設立されたコミュニティの中心人物に興味を持ち訪問したカーネル・アレンズワース州立歴史公園では、カリフォルニア州が直面している様々な水問題を再確認させられた。そして、水といえば先ず頭に浮かぶソルトン湖東岸と南東岸周辺へその翌週に行ってみた。
1905年の冬、雪解け水がコロラド川から流れ込んだ水が水路から溢れ出し、18ヶ月間に及び低い土地に流れ込んで誕生したソルトン湖との出会いは、このフォトエッセイのために変わったストーリーのある被写体を探して知り、初訪問は2010年春だった。
それ以来、昨年を除き毎年この湖へ足を運んで来たのは、1940年代から50年代にかけ、ハリウッドスターや政界の大物も訪れるリゾート地として知られるようになった後、洪水と湖の汚染で廃墟化した不思議な光景と、地下熱等この地帯の持つ計り知れない地球のエネルギーに惹かれたからだった。
雲が多い朝、柔らかい朝陽が差すボンベイビーチ。水際が後退し、かつて湖底だった場所に車を停め独り歩き回った。
【使用機材】 fp L , 17mm F4 DG DN | Contemporary
2020年の2月に初めて見た時は完全に水に浸っていたブランコ。作者は水に浮かぶように見せたくてここに置いたと思うが、陸の上にあるブランコになりつつある。
【使用機材】 fp L , 90mm F2.8 DG DN | Contemporary
20世紀初頭に出現したソルトン湖には水の出口はなく、湖は周辺の土に含まれる塩分を吸い込み、農業排水が流れ込んで汚染されてきた。二つの河川から湖に流れ込む水と雨より、蒸発する水量の方が多く、湖の水位が下がり塩分濃度が年々増している。私が訪れた最初の頃は、塩分濃度が高くても生存出来るテラピアを次々と釣り上げる人が湖岸にいて、北岸のマリーナから湖へ出て行くボートも目撃したが、2016年頃から釣り人の姿は消えた。そして、湖底だった地面からは毒性の粉塵が舞い、地元の高校生には喘息持ちが多く湖岸は悪臭が漂っている。
この辺りも10年ほど前は水に浸っていたと思われる。湖面が輝く湖は汚染されているようには見えず、悪臭さえなければここで半日過ごしたくなるような開放的な場所だ。
【使用機材】 fp L , 90mm F2.8 DG DN | Contemporary
広大な農場に大量の水を引くために作られた農業水路が決壊して誕生した湖。告白する事が沢山あるというメッセージだと思うのは考えすぎだろうか。
【使用機材】 fp L , 90mm F2.8 DG DN | Contemporary
ボンベイビーチから湖の南東へ移動した。ソルトン湖の南東には太平洋岸沿いに北北西から南南東に走る長さ1000km以上のサンアンドレアス断層の南端部があり、アクティブな泥火山を見ることができ、地質学者には興味深い土地だ。
ボンベイビーチから湖の南東へ移動中、農業用の水路上を飛び交うダイサギの群れを捉えた。湖周辺の水路と湿地帯には多種の鳥が見られるが、年々バードウォッチャーの数も減っているように思う。
【使用機材】 fp L , 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports
ソルトン湖の南東にある泥火山。後方に見えるのは地熱発電所。
【使用機材】 fp L , 35mm F2 DG DN | Contemporary
何か新しいプロジェクトが始まるのだろうか。辺りは干上がり、パイプが置いてあった。私の立つ場所から後方はレッド・ヒルと呼ばれる丘で、かつては湖へ突き出た小さな岬だったのだろう。
【使用機材】 fp L , 50mm F2 DG DN | Contemporary
南東岸にあったレッド・ヒル・マリーナから最後のボートが出て行ったのは何年前だろうか。もうここに水は戻って来ないだろう。
【使用機材】 fp L , 50mm F2 DG DN | Contemporary
湖の南東は広大な農場地帯で、乾草を牧場へ運搬する作業が行われていた。
【使用機材】 fp L , 50mm F2 DG DN | Contemporary
畑なのか湿地帯に生えた雑草なのか分からなかったが、背丈の高い草の横を走る道路ですれ違う車はなかった。
【使用機材】 fp L , 50mm F2 DG DN | Contemporary
湖の南東岸から東岸へ戻り北上して、週末だけオープンしているビジターセンターに立ち寄った。大きな窓からの外光でとても明るい部屋に入ると、ネイティブ・アメリカンの血を引くと思われる若い女性のパークレンジャーが出迎えてくれた。数年前に来た時も白人女性のパークレンジャーが一人だったので、このビジターセンターは訪問者が極端に少ないのだろう。私は品数の少ない土産品からTシャツを選んで購入し、「湖を救うための新しいプロジェクトは聞いていますか?それから最近釣り人は来ますか?」とパークレンジャーに尋ねた。「水位とは関係ないけど、ボンベイビーチの以前キャンプ場だった辺りに、汚れた空気を浄化する力がある乾草を並べて置いたことぐらいしか知らないです。それから、釣り人は全然見てないですね。」と笑みを浮かべて答えた。
パークレンジャーに教えてもらったので、ビジターセンターから26km引き返しボンベイビーチに戻った。乾草はもう少し広範囲に置かれているかと思ったが、意外と小規模だった。
【使用機材】 fp L , 35mm F2 DG DN | Contemporary
カリフォルニア州エネルギー委員会は、ソルトン湖の湖底に米国の将来予測される需要すべてと世界需要の40%を満たす十分なリチウムがあると推定。従来、リチウムの抽出は露天掘りか蒸発池からリチウムを含む塩水を地表までポンプで汲み上げ、水が乾くのを待つ。 これらの方法は広大な土地と大量の水が必要になり、大量の汚染と廃棄物を発生する可能性もある。しかし、ソルトン湖の近くでは既に11の地熱発電所が稼働し、地熱施設では塩水を地表に汲み上げ、その塩水からの蒸気を利用してクリーンエネルギーを生成しているので、リチウムを手に入れるという点ではかなり近い位置にいる。
以上の内容のニュース記事を最近読んだが、年々水位が低くなっているソルトン湖の問題解決より、リチウム抽出が今後しばらくは話題なるかもしれない。いずれにしてもソルトン湖は不思議な場所にまだ存在していることは確かだ。ここしばらく見守っていきたい。
ボンベイビーチの夜明けと日の出。泥火山の様子と地下熱発電所。
ソルトン湖
撮影風景と機材
ボンベイビーチと泥火山での撮影風景。
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/200s
絞り値
F7.1
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
17mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/250s
絞り値
F5.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
17mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 90mm F2.8 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F6.3
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
90mm
カラーモード
スタンダード
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 90mm F2.8 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/2000s
絞り値
F5.6
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
90mm
カラーモード
ウォームゴールド
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 90mm F2.8 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/1600s
絞り値
F4.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
90mm
カラーモード
シネマ
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports
シャッタースピード
1/1000s
絞り値
F8.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
200
焦点距離
600mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F8.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
35mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F8.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
50mm
カラーモード
パウダーブルー
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/1000s
絞り値
F6.3
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
50mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F6.3
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
50mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F7.1
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
50mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
カメラ
SIGMA fp L
レンズ
SIGMA 35mm F2 DG DN| Contemporary
シャッタースピード
1/500s
絞り値
F9.0
露出モード
M-マニュアル露出
ISO感度
100
焦点距離
35mm
カラーモード
風景
ホワイトバランス
晴れ
押本 龍一
フォトグラファー
東京品川生まれ。1982年留学予定で渡米。1984年ニューヨークへ渡り広告写真スタジオで働き始める。1991年フォトグラファーとして独立。1995年ニューヨークからロサンゼルスへ移動。2018年より日本を拠点にし現在に至る。