写真を生業とするカメラマンには、主にふた通りの人種がいる。片方は仕事以外ではシャッターを切らず、そもそもカメラも持ち歩かないという職業家タイプ。もう片方は常にカメラを携行し、気になったものはとにかくシャッターを切る永遠の写真少年(あるいは写真少女)タイプだ。
どちらが偉いとか偉くないというつもりはないが、僕の周囲には後者のタイプが多く、そして僕自身もその仲間だ。財布やケータイは忘れても、不思議とカメラは絶対に忘れない。
プライベートで持ち歩くカメラはこれまで行き先や時間帯、その日の気分などで選んでいたが、2014年6月にSIGMA dp2 Quattroが発売されてから、そのポジションは完全にこの不思議なかたちのカメラに固定された。晴れた日も、雨の日も、歩き回る日も、スタジオや会議室に缶詰の日も、とにかくカバンにはdp2 Quattroがあった。
最初は奇抜に思えたものの、使えば使うほど愛着のわくデザインもたしかに持ち歩く理由のひとつ。でも一番はやはりその表現力にあると思う。よく写るというだけでなく、SIGMA Photo Pro(SPP)を使ったRAW現像で、自分の印象を的確に仕上げることができる。先代のMerrillでもそれは同じだったが、より解像力がアップし、RAW現像も自分のイメージへ追い込みやすくなった。
最近は生まれ育った東京と、日本で一番人口の少ない町・山梨県早川町との間を往復する日々が続いている。早川町には僕が2010年に写真集として纏めた霊峰・七面山がある。その縁で町の人々や風景を撮るようになり、2016年には町民全員の姿を収めた写真集を上梓する予定だ。その日々の中で出会った光景を、QuattroとSPPで表現してみた。