SIGMA dp Quattro Photo Gallery | 大野 雅人

屋久島に旅にでた。世界遺産登録地であり、世界中の旅人を魅了し続ける屋久島は、海、山、川、滝が身近にあり、大地が育む水の循環が1つの島で行われている様がみてとれる。日本一の雨量(山地では年間10000mmに達する)を誇る地ということからか、雲の動きが刻一刻と変化する。それは大地を照らす太陽のライティングに反映され、私の写欲を駆り立てる。

台風一過と重なった屋久島は、復旧作業に追われる大変な時期だった。そして、ちょうど宿の修理に来ていた電気技師の方と知り合いになり、その娘さんに島の案内とモデルを頼むことになった。島育ちのその娘さんは、化粧の経験すらなく髪は自分でカットしているという、とても純朴な顔立ちをしている女の子。島のどんな場所にもなじみ、プロのモデルでは得られない感覚が新鮮だった。屋久島の女性は、通年湿度の高い環境と美味しい水の影響か、赤ちゃんからご高齢の方々まで肌つやがいい。

山から里へ、いろいろな場所をQuattroを片手に撮り歩く。初めて出会う人々に声をかけおしゃべりしながら撮らせてもらう。島っ娘を連れた旅人に警戒する人はいない。変わったカタチをしたカメラに興味を示す子供たち。Quattroのデザインは、どこへ行っても話題の中心になって場を和ませてくれる。神々しく雄大な島に育まれた娘さんの手助けと、潔く直感的な構図が得られる単焦点レンズを装備したQuattroが、私の旅と撮影をより充実させてくれた。

旅の終わりに、電気技師の親父さんから、娘さんの幼き頃の写真アルバムを見せてもらう。そこにはたくさんの愛情がつまっていた。作品だろうと記録であろうと、写真は記憶を呼び起こし気分を高揚させてくれる大切な宝物ではないだろうか。両親や、そのまた両親の撮った写真は心ときめく。そんな家族のアルバムのなかに、ふらりと現れた旅人が撮った写真が加わることができたなら、写真家としてこんな嬉しいことはない。

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