かけがえのない人々の営みと風土の美を紡ぐ
ART
28-45mm F1.8 DG DN
Impression
by 藤代雄一朗 |Yuichiro Fujishiro
Special Thanks 弘前こぎん研究所
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私は映像作家として、約10年ほど活動してきました。MusicVideoや広告映像を中心に制作してきましたが、最近はドキュメンタリー撮影を多く行うようになりました。
自分が育まれた環境とは違う土地・文化で生きる人たちと出会い、その方々の仕事・習慣・考え方などあらゆる日常に触れて、その生き様を知ること。
映像や写真を撮ること以上に、むしろその出会いこそが私を惹きつけているように思います。
今回は、ドキュメンタリー撮影でこの10年何度も通ってきた日本の青森県津軽地方へ向かい、その地で受け継がれてきた伝統的な刺し子(手刺繍)の様子を撮影しました。
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普段私は、目の前で起こっている物事に対して主体的な視点で追いかけたいのか、客観的な視点で残したいのかを、場面ごとに考えながら撮影をしています。
SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art を手にした時、私はこのレンズがその主体的な視点を大きく広げてくれる存在になることを確信しました。
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*撮影データの記載なき写真はSIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 以外のレンズで撮影されています。
私はもともと大口径の単焦点レンズが持つ描写力に大きな魅力を感じていたので、これまでの撮影では標準域のズームレンズを使用しませんでした。
ただ、単焦点レンズだけでドキュメンタリー映像を撮影するのはリスクもあり、レンズ交換のタイミングを見誤ると、ときに大事な瞬間を撮り逃がしてしまうことも少なくありません。
このレンズは28-45mmという標準域の画角を自由に選ぶことができるうえに、開放F1.8による美しいボケの描写を両立させた、まったく新しいレンズでした。
このレンズ一本あれば、やり直しの効かないものづくりの現場を機敏に撮影することができるのではと考えました。
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かつて麻の着物しか着ることが許されなかった津軽の農民たちが、厳しく長い冬を少しでも快適にやり過ごすため、麻布に木綿の糸で刺し子を施すようになり「津軽こぎん刺し」が生まれました。縦の織り目に対して奇数目を数えて刺すという大変細かい技法ながら、ここで働く女性たちの手にかかればあっという間に完成していきます。
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撮影してまずはじめに、単焦点レンズのような描写力に驚きました。なめらかな美しいボケは、そこで働く方々の姿や手仕事の手元を立体的に浮かび上がらせます。
そして、最短撮影距離が短いことも大きな魅力のひとつです。
編み込まれる糸や、生地に縫い付けられて表現される細かな模様に対して、レンズを接近させて撮影することができます。たとえば身動きがとりずらい場所から撮影する場合でも、最短撮影距離が短ければその分多くのアングルに挑戦することができます。
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また、レンズの画角を変えるためにズームリングを回しても、レンズ筐体が伸びることはありません。ジンバルを用いた撮影において、ズームさせてもカメラのバランスを取り直す必要がないこともこのレンズの映像撮影における優位点だと思いました。
このレンズをつけたfp Lは三脚に乗せてもとても撮り回しが良く、瞬間を逃さないように動き回れる軽快さが私にとっては新鮮な撮影体験でした。
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土地に根ざす手仕事には、その土地の歴史や風土が深く関係しています。 直接的な成り立ちだけでなく、その景色や立ちこめる香りも、きっとその地のものづくりに影響を与えているはずです。
私はよく、撮影する土地の夜明けを撮りに行きます。
町が目覚める時に、どんな匂いがしてどんな鳥が鳴いているか。
その後撮影した写真や映像を編集していると、日の出から撮影したさまざまな景色と、そこで暮らす人々の営みの関係性が見えてくる瞬間があります。
明確な言葉で表せるものではない、この不確かな関係性を見つけて繋いでいくことが、編集の面白さなのかもしれません。
そしてまた、こうした一瞬の景色を逃さないためにも、SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art はとても心強いレンズでした。
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これまでの撮影では、敢えてレンズの選択肢を限定することにより映像の視点を明確にしていたのですが、この新しいレンズの持つ自由さをもって、自分の映像がこれからどのように変化するかとても楽しみです。
二度と繰り返されない目の前の出来事が、いかに美しく愛おしいものなのか。
そのことを忘れないように、これからも大好きなSIGMAの愛機とともにいろいろな土地や人と出会いたいと思います。
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ABOUT
藤代雄一朗 |Yuichiro Fujishiro
映像作家 / 撮影監督
東京を拠点に活動。広告映像やMusicVideoを中心に制作しながら、日本各地の地域を取り上げたドキュメンタリー映像を制作し、人々の営みと風土の美を映し出す作品作りに取り組んでいる。日常の情景が持つ普遍的な美しさや、そこに暮らす人々の想いを捉えた映像を目指している。
Special Thanks
弘前こぎん研究所
https://tsugaru-kogin.jp/