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インスピレーションの秘訣:
日常の中に非日常を見出すこと

CONTEMPORARY
10-18mm F2.8 DC DN
Impression

by ウェストリー・ウォン|Westley Wong

私はブランディング・デザイナーで、香港理工大学の講師でもあり、オンラインマガジンの編集者でもあり、展覧会を企画するキュレーターでもあります。とはいえ、肩書きはさして重要ではありません。創造という行為そのものこそが重要なのです。職業が何であれ、写真は私のクリエイティブな活動において替えのきかない媒体です。写真は創造の器にもなりますし、その他の作品の記録にも役立ちます。私の目に映っている世界を他の人たちに提示する手段でもあります。


写真は記録媒体です──私は小さい頃からそう認識してきました。私の父は、私が生まれるずっと前から、ローライフレックスで母の写真を撮り続けていました。だから実家には私の成長の過程を記録した写真が数多く残っています。父はよくこんなジョークを口にしていました。本物の男は3つの「C」を持っていなければならない、それはすなわちCash(現金)、Car(自動車)、Camera(カメラ)である、と。ちょっと笑ってしまいますよね。

私が初めて本格的に写真を学んだのは、大学のデザイン学部の1年生の時でした。写真の授業では構図と視覚言語という考え方に触れ、写真というものが少しずつ理解できるようになりました。レンズを通して自分が見た世界を共有するうちに、写真への理解も深まっていきました。写真は、撮影者が持つ視点や世界に対する姿勢を忠実に反映することができるものだと私は考えています。写真は誠実で、なおかつユニークなものです。

*撮影データの記載なき写真はSIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary以外のレンズで撮影されています。

インスピレーションはどこから来るのですか、と学生からよく訊かれます。これに関しては、勘違いをしている人が多いようです。デザイナーでもアーティストでも、誰か他の人の作品からインスピレーションを得ようとするべきではありません。心を開いて、自分の身の回りの物事からインスピレーションを見出すこと、世界とコミュニケーションを取ることが重要です。歴史上の偉大な音楽家や芸術家たちは誰しも、自らの人生からインスピレーションを得ていました。「興味深い人間であろうと努力すること」あるいは「常に好奇心を持つこと」、それが私を衝き動かすモットーです。自分の周囲に注意深く目を向けることができるようになれば、一粒の砂ぼこりにさえも魅力を見出せるようになるはずです。おそらく、それこそがまさに、自然が私たちに与えてくれるインスピレーションなのです。

私は、自分が満ち足りた家庭に生まれ育ったことをいつも感謝しています。私が子供の頃から、私たち家族は毎週のように祖父母の家に集まっていました。それは私の子供時代を豊かなものにしてくれました。これらの写真は祖父母が住む団地で撮影したものです。家族団欒の楽しい思い出や、大好きな香港の記憶がここにはあります。「ツインタワー」の建築デザインは香港の公営住宅の特徴的な構造で、香港映画にもよく登場しています。私は祖父母の家だけでなく、その近所の団地「祖堯邨(Cho Yiu Chuen)」もよく訪れていました。ここにもツインタワーがたくさん見られます。こうした建築的特徴は、ここ30年ほどの間に新たに建設された公営住宅ではもう見られなくなっています。これはとても寂しいことです。コミュニティを訪れて写真を撮ると、古き良き時代が懐かしく思えるようになります。こうした記憶も、私にとってはインスピレーションの源になっています。

SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary は、かなり特殊なレンズです。軽量なので、ジンバルを使った撮影にぴったりです。風景撮影の際には、安定感のある、映画的なカメラの動きを簡単に実現することができます。カメラボディ側の収差補正にも対応しており、広角でも歪曲収差を気にせず撮影できます。焦点距離が18mmの場合、レンズの長さはたったの62mmで、レンズを最も長く伸ばした10mmの状態でもコンパクトさと機動性は失われません。フードも、環境に合わせてより簡単に着脱ができるように設計が刷新されています。また、このレンズの広角端の最短撮影距離は11.6cmと非常に短いため、被写界深度も簡単にコントロール可能で、映画的なイメージを作り上げることができます。

このレンズは、屋外での撮影や日常的な携帯にもぴったりの軽量レンズだ、というのが私の結論になりますね。

ABOUT

ウェストリー・ウォン

デザイナー/大学講師

Wholly Wholly(圓融)クリエイティブ・ディレクター、@nowllloading編集長、香港理工大学デザイン学部客員講師。

「総合的デザイン」の重要性が今後ますます高まるという予測のもと、チームメンバーとともに伝統と革新の両面の探究に力を入れている。2018年からは50年以上の歴史を持つ香港のブランド20社以上とコラボレーションを展開。その仕事は様々なメディアで取り上げられ、数多くの賞を受賞している。

研究者としては、著書に『Experiential Branding: Before, Now, and Then』(2023年 Cup刊)があり、現在は香港の書家の巨匠たちを取り上げた研究論文『Ink and the City』に取り組んでいる(2023年中に刊行予定)。