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ニューヨーク・エニグマ

THE SIGMA BF
Impression
Shot on BF

by サラ・ファン・ライ & デヴィッド・ファン・デル・レーウ|Sarah van Rij & David van der Leeuw

オランダ出身の写真家サラ・ファン・ライと同じく写真家でパートナーのデヴィッド・ファン・デル・レーウは、シュールリアリズムの系譜を受け継ぎつつ、他に類のない独自のスタイルで、夢のような世界感を確立しています。洗練された映画のワンシーンかのような彼らの作品は、ミステリアスな雰囲気を帯びています。

彼らの作品は、反射面に歪んで映る物体を捉えたり、自身の影を重ねて風景を曖昧にしたり歪めたりすることで生まれる、アナモルフィックでコラージュのような質感を呈しています。彼らは作品において、大都市が持つ視覚的な密度に惹きつけられ、最近2冊の本を出版しました。1冊は彼ら自身によるプロジェクトでニューヨークに焦点を当てたもの、もう1冊はルイ・ヴィトンからの依頼でソウルで撮影したものです。

ここで紹介する作品は、2024年12月にニューヨークで撮影され、カメラ内現像だけで作成されています。

「私たちのストリート写真では、ただシャッターを切るだけではありません。」とデヴィッドは説明します。「私たちは人とは違う、人生における超現実的な側面を浮き彫りにするようなものを生み出そうとしています。」

サラとデヴィッドにとって、写真とは情緒であり、見る人の想像力をかき立てる余地を残すものです。「私が写真を始めた頃は、色に夢中でした。今でもそうです。色彩は本当に雰囲気を左右してしまうからです。」とサラは付け加え、彼女にとっての芸術とは「部屋に入った瞬間、色や形、あるいは顔が目に飛び込んでくる、その感覚」だと説明しています。

彼らの作品を興味深いものにしているのは、機材やテクニックといったものを超越した何かです。「技術的なことは私たちにとっては重要ではありません。」とデヴィッドは指摘します。「私たちはトリックを一切使いません。」とサラは言い、「私たちの作品が二重露光によって作られていると思っている人もいますが、決してそうではありません。私たちの写真はすべてカメラ内で完結しています。」と付け加えました。

「私たちの作品の多くはまったくの即興です。」とデヴィッドは言います。Sigma BFで撮影した作品では、2人はニューヨークに出かけ、互いに近くにいながらも、まったく同じ場所では撮らないようにしました。そして1日の終わりに、撮りためた写真を見返し、選んだ結果を組み合わせ、ひとつの作品に仕上げていきました。

ニューヨークは彼らがよく知り、何度も戻ってくる街であり、2年にわたって6ヶ月間暮らした街でもあります。彼らの最新刊『Metropolitan Melancholia』は、この街での滞在から生まれました。「私たちはこの街では自然体でいられます。」とデヴィッドは言い、「ニューヨークは街全体がアート作品のようで、特にその色彩がとても美しいのです。」と付け加えた。

また、「ニューヨークは、多くの人々がアメリカ人やニューヨーカーになるためにやって来て新たな人生を始めるユニークな都市です。街にあふれるその感情が、私たちにとって非常に興味深い感覚をもたらしてくれます。」とサラは言います。

サラとデヴィッドの写真に対する取り組みに欠かせないニューヨークの要素のひとつは、この街のシネマティックな質感です。2人は映画を愛し、アルフレッド・ヒッチコック、ジョン・カサヴェテス、ロマン・ポランスキー、ミケランジェロ・アントニオーニなど、多くの映画監督から影響を受けています。彼らの作品には、このこだわりが反映されており、1枚の写真でストーリーを語る能力にそれが表れています。

サラとデヴィッドは独学で写真を学びました。「私たちは2人とも、きちんとした写真学校や美術学校に通ったことはありません。」とサラは言う。「私たちはそれぞれ独自の道を歩んできました。」

子供の頃、サラは映画に囲まれて育ちました。彼女の母親は、特に彼女を古典作品に触れさせるように気を配っていたと言います。デヴィッドの父親は画家で、彼もまたアートに満ちた家庭で育ちました。

2人とも1990年代から2000年代初頭、つまりデジタル時代の到来と、TumblrやFlickrを通じて画像に触れる機会が格段に増えた、写真にとって激動の時代に育ちました。「私にとって本当に重要な時期でした。」とサラは言います。彼女が視覚的な世界で自分の居場所を見つけ始めたのはその頃です。「私たちは初めてカメラ付きの小さな携帯電話を手に入れ、目に映るものをなんでも撮影していました。それが私たちにとって、全ての始まりだったのです。」

ABOUT

サラ・ファン・ライ
デヴィッド・ファン・デル・レーウ

フォトグラファー

サラ・ファン・ライとデヴィッド・ファン・デル・レーウは、アムステルダムとパリを拠点に活動するオランダ出身の写真家。 2人はパートナーであり、デュオとしても個人としても活動している。 The New York Times、The New Yorker、Vogueなどのエディトリアルや、シャネル、ジャックムス、ルイ・ヴィトンからの依頼によるクライアントワークを手がけている。 2023年に『Metropolitan Melancholia』をKOMINEKより出版。サラにとって初となる美術館での個展は、2025年12月11日よりパリのラ・メゾン・ヨーロッパン・ド・ラ・フォトグラフィで開催される予定。2人は共同で、綿密に計算されたフレーミングと構図によって、シュールレアリスムの領域に迫る作品を創り出している。