本文へ移動

星景写真の撮影に適した
夢のレンズ

ART
20mm F1.4 DG DN
Special Impression

by ジャック・フスコ|Jack Fusco

夜空の写真を専門に撮影する人であれば、「明るい単焦点レンズ」は心地よい音楽のように、聞くと嬉しくなることばでしょう。全世界の星景写真家の多くが主力として使用している単焦点レンズは、私たちが写真に収めたいと願う遠く離れた星々の光を多く集光する能力を備えています。遙か彼方から宇宙を旅してきた星の光は、人工的な光による光害を避けながら、さらに地球上を旅しなければ私たちのもとには届きません。星々を撮影するためには、私たち自身も短い旅をする必要があります。そしてその作業はまさしく、撮影に必要な正しい機材を選ぶことから始まるのです。

※ 撮影データの記載なき写真はSIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art
以外のレンズで撮影されています。

スペックだけ見れば、新たなSIGMA 20mm F1.4 DG DN | Artは星景写真家の夢そのものであるように思われます。新月をまもなく迎えようというころ、私はすぐにこのレンズをテストする方法について考えはじめました。
テストを始める前にまず気づいたのは、このミラーレスカメラ専用レンズがかなり小型に設計されているということです。そのため、アダプターを使用せずにフィルターをレンズの前面に取り付けることもできます。この機能が、このクラスの広角で明るいレンズに搭載されていることは滅多にありません! 夜間に使用する光害カットフィルターから、日中の風景やビデオの撮影に使用するNDフィルターまで、どのようなフィルターでも簡単に取り付けることができます。

旅の相棒、愛犬Kona

普段、私は星景写真の冒険に一人で出かけます。しかし今回の旅では、幸運にも4つ足の友と出かけることができました。愛犬のKonaと私は、暗い夜空が見られる、3つの撮影地に出かけました。このレンズをテストする完璧な条件が揃った場所だと考えていたからです。また、夜空のもとで一緒に撮影した写真のコレクションを増やしたいとも考えていました。

星々が照らす滝

まずは、ニューヨーク州イサカ近郊のタウアノック滝にあるキャンプ場を予約しました。残念ながら、夜にはキャンプ場の大部分が閉鎖されてしまいます。しかし私は自然保護官のひとりから、滝を見下ろせる見晴らしの良い場所から数枚の写真を撮影する許可を得ました。この新しいレンズを携えて出かける初めての散歩は、距離こそ短いものの、簡単なものではありません。光もほとんど届かない状況のなか、私はこのレンズの長所を活かし、F1.4での撮影を行い、目の前に広がる巨大な渓谷を細部まで捉えようとしました。同じ条件のもと、5回連続で露出し、後処理の際のノイズ軽減に使用する前景を繰り返し撮影しました。

今回の旅で撮影する最初の写真にKonaとともに映り込むチャンスを逃すわけにはいきません。私たちはカメラのセルフタイマーをセットすると、階段を駈け降りて撮影場所に向かい、最初の撮影の長い露出の間、立ったまま動かずにいました。その後、後処理によって細部を際立たせ、ノイズを減らすため、同じような方法による同じ露出での写真を繰り返し撮影しました。空にはまだわずかに光が残っていましたが、このような微光のもとでも得られる詳細な描写と色再現の素晴らしさには心から感銘を受けました。

レンズの前面にはねじ込み式フィルターを取り付けることができるだけでなく、レンズヒーターを装着する際に利用できるレンズヒーターリテーナーも付いています。ほとんどの星景写真家は、夜間の気温の変化とともにレンズに発生する曇りの問題を経験したことがあるでしょう。この星景写真家が心から待ち望んでいた機能が追加されたことをとても嬉しく思っています。それはほんの些細な機能ですが、このレンズを星空の下で撮影する人にとってまさに理想的なレンズに作り上げる過程で注ぎ込まれたアイデアのレベルの高さを示しています。

深夜の海辺

イサカを出発したKonaと私は、南にあるメリーランド州のアサティーグ島国立海浜公園に向かいました。公園の空の暗さはわずかに増しており、愛用の赤道儀を使うには絶好の場所といえます。北極に合わせて調整し、カメラを取り付ければ、レンズとカメラが地球の自転に合わせ、空の同じ方向を向いたまま移動し続けます。そのため、露出時間を短くする必要はなくなりますが、前景の露出を分ける必要が生じます。夜空に露出を合わせ、天の川を捉えると、スマートフォンをカメラのリモートモニターとして使用しながら、撮影の間にKonaと私が星空の下で座ることができる絶好の場所を見つけました。その写真を撮影したちょうどそのとき、不運にも霧と雲が現れて星を隠してしまい、そのまま朝を迎えることになりました。

最も暗い夜空でのテスト

このレンズの第一印象は間違いなく良いものでしたが、最も暗い夜空でのテストはまだ行っていませんでした。私たちは内陸へと戻り、星空保護区であるペンシルベニア州北西部のチェリースプリングス州立公園へと向かいました。このボートルスケールクラス2の夜空が見られる場所で、私はフレームの隅々まで輝く星々を撮影したいと考えていました。

このレンズが本当に星景撮影用レンズになり得るかは周辺の性能にかかっています。開放F値で撮影しながら隅々まで高い性能を求められる撮影ジャンルは星景写真だけでしょう。無数の星が輝く満天の星空と、風景を照らす蛍が飛び交うこの公園は、まさしくその性能のテストにふさわしい場所でした。

頭上に広がる星々の光のみをF1.4で撮影しながら、私は隅々まで発揮されるこのレンズの光学性能に強い感動を覚えていました。星々は非常に小さな光の点として、そのまま映し出されていました。それは星景写真家にとって夢のような光景でした。

天の川を気長に待つ

私はKonaの写真を何枚か撮影すると、数日に及んだ冒険の旅の記念として、天の川が絶好の位置まで移動するのを待ちました。Konaは赤色灯ヘッドランプを付けていたため、F1.4でレンズを使用しながら簡単に焦点を合わせ、さらにミラーレスカメラのライブビューを利用することができました。またこの長い露出時間の間、動かずに待っていることを学んだKonaの賢さにも驚かされました。今回の撮影では、Konaではなく、私が動いて台無しにしてしまった写真の方が多いに違いありません。

暗い夜空と蛍

ついに天の川が地平線から十分な高さまで昇ると、私たちはさまざまな構図での撮影を開始しました。私は一晩中、レンズのMFLスイッチを利用していました。この機能を使用すれば、ピントを合わせた状態でフォーカスリング操作を無効にすることができます。そのため、最初にピントを合わせてしまえば、移動しても焦点のずれを心配する必要はなく、またフォーカスリングが動かないように祈りながらテープで固定する必要もなくなります。最初に撮影する写真の焦点を合わせた後、チェックするのを忘れてしまい、焦点のずれた写真を山ほど撮影してしまったことに夜も遅くなるまで気づかずにいるほど最悪なことはありません。

私は天の川の新しい写真を撮影するたびに、カメラの液晶画面を確認し、満面の笑みを浮かべていました。最も暗い夜空の下で外に出かけ、これほどの詳細な画像を撮影することができるというのは、とても信じられないような感覚でした。

天の川の写真を撮影する間、周囲の野原にはこれまで見たことのないほどの数の蛍が舞っていました。絶景に魅入ってしまいそうになりながらも、その夜の仕事を終える前に数枚の写真を忘れずに撮影することができました。

疑問の余地のない品質

Konaとともに暗い夜空と蛍を追いかけた今回の長旅を終えた後、まさに明らかになったのは、このレンズが備えている星景撮影に最適な機能に勝るものは、このレンズの性能以外にはないということです。このレンズは、私にとって、バッグに入れておくべき必需品となるだけではなく、星空の下で撮影する際に最初に選ぶレンズとしての地位を争うものになることは間違いありません。このレンズが作りあげられた過程を考えると、品質について議論する余地は残されていません。美しい星々の写真を撮影するためのレンズを探しているのであれば、このレンズ以外に探す必要はないのです。

MORE PHOTO

ABOUT

ジャック・フスコ

風景天体写真家/タイムラプスフォトグラファー

ツアーミュージシャンとしての旅の記録撮影をきっかけに写真家に転身。星景写真を通じてその神秘と美しさ、静謐さ、冒険の楽しさを伝える。天文学と風景写真の知識を合わせた作品作りを行っており、作品は非常に綿密な計画のもと長期にわたって撮影される。作品はナショナルジオグラフィック、TEDx、ロサンゼルス・タイムズ、NASA APOD、BBC、フォーブスなど多数のメディア提供。