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楽屋でもステージでも
活躍する20mm

ART
20mm F1.4 DG DN
Special Impression

by ディーン・シャーウッド|Dean Sherwood

自分のキャリアについて覚え得る限り、私はいつも広角単焦点レンズをズームよりも好んで使用してきました。ズームレンズは重く、退屈なものだと私は思っています。ズームレンズでは、カメラを手に取ろうという気にはなれません。ちょっと変わった被写体であれ、平凡な被写体であれ、それを撮影しようという意欲が湧かないのです。単焦点レンズは、一見つまらなそうに見える被写体であっても、撮影してみようという意欲を与えてくれます。自分の脚で被写体との距離を調整しようという意欲をかき立て、新しいものに挑戦してみたいという気持ちが私のなかにあることを教えてくれます。特に重要なのが、さまざまな構成が可能ということです。広角ズームレンズは、私を怠け者にしてしまいます。その原因は、ズームが出来てしまうということにあると私は思っています。単焦点レンズを使用すれば、より想像力のあるフォトグラファーになるだけではありません。より「フォトグラファーらしい」フォトグラファーになることができると感じるのです! 長い間、私は28mmという焦点距離を好んで使用してきました。24mmの焦点距離も好きで使用してきましたが、ほとんど28mmとの差が感じられず、私にとっては若干広いものの、どこか物足りないという中途半端な存在でした。14mmに関していえば、持ってはいるものの、ほとんど使っていません。14mmは、私のようにステージ上やツアー中のバンドを撮影する者にとっては、極めて稀な状況に限って使用するレンズという位置づけでした。おわかりのように、私が好む焦点距離と、私が持っている最も広いレンズとの間にはギャップがありました。しかし、そのギャップが存在したのも昔の話となり、いまそれが解消されます。

SIGMAは長きにわたり、素晴らしくシャープな画を生み出すSIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Artによって焦点距離20mmの市場を独占してきました。このレンズは素晴らしい製品ですが、個人的には2つの要素が改善されればと願っていました。1つ目は、ねじ込み式フィルターを取り付けるオプション。私はグリマーグラスフィルターやNDフィルターなどをレンズに取り付けて撮影することに魅力を感じています。そうすれば、開放絞りでも遅いシャッタースピードで撮影することができるからです。2つ目は、レンズフードを固定式にしないことで、これはフレアの愛好者にとっても嬉しいことです。そのため、ミラーレスカメラ専用に新たに開発されたSIGMA 20mm F1.4 DG DN | Artを試すチャンスを得たとき、私が「もちろん試します」と返答したのは当然のことでした。レンズが手元に届き、箱を開けた瞬間に、私はこのレンズを間違いなく、これから何年も使うことになるだろうと感じました。フードは固定式ではなく、ねじ込み式フィルターを取り付けるオプションを搭載し、しかも大幅に軽量化され、小型化されたレンズだったからです。さらに調べていくと、次第に私の職業病が働きはじめ、レンズを眺めるのさえ楽しくなってきました。レンズには絞りデクリック機構が搭載されており、クリックをOFFにするオプションも備えられています。

※ 撮影データの記載なき写真はSIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art
以外のレンズで撮影されています。

20mmというのは、楽しい焦点距離です。ほとんどの人は、超広角レンズは風景撮影用レンズだと思っています。したがって、一般的には、目の前に広がる美しい情景を撮影する際にこのレンズをバッグから引っ張り出すことになるのでしょう。しかし私の場合、小さな空間で20mmを使用することが多いです。楽屋やスタジオで撮影したり、ドラマーとステージ背景の間で身動きできない状態で撮影したりします。超広角レンズを必要とする環境での撮影を多く経験していますが、時には、超広角レンズが手元にないことがあります。私が持っている14mmレンズは重く、バッグの中の大部分を占める大きさで、F2.8というのも、それを使って「撮影」しようという気になりません。その点、SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Artは、まだ実際の性能を見る前から、まさに全ての条件を満たすレンズです。このレンズを、愛用のLeica SL2に取り付けたときのバランスは素晴らしいものでした。私はまず自宅で撮影し、AFをテストしました。次にいくつかの動画を撮影し、さらにマニュアルでピントを合わせた写真を何枚か撮影しました。撮影はとても上手くいきました。軽量ながらもおもちゃのような感じはなく、丈夫で、信頼できるレンズです。
ボケ味は素晴らしく、穏やかで、賑やかすぎることも、俗っぽすぎることもありません。レンズは隅々まで信じられないほどシャープです。私は開放での撮影を好むため、普段は絞って撮影することはありませんが、当然ながら必要に迫られる場面も生じます。しかし、このレンズがそのような場面にも対応できることは、非常に心強いものです。

このレンズを使用して初めて撮影したのは、ロンドンのスタジオで録音しているピアニストでした。その撮影は、レンズフードが付いていないおかげでとても満足のいくものとなりました。レンズのフレアはとても自然で、求める人にとって本物のフレアを生み出すことができます。もちろん、着脱式フードを使用してフレアをコントロールすることも可能です。コントロールルームに立ち入ったときには、Duncanの後ろ約1.2メートルの場所から撮影しました。数日後、ショーに出演しているHarryを撮影したときも、ほぼ同じ状況でした。SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Artを使用すれば、歪みは最小限に抑えられ、被写体は素晴らしく引き立てられ、ピントもしっかりと合わせることができます。目の前の被写体との距離をコントロールできないとき、例えば近すぎて被写体からそれ以上後ろに引けないときでも、背景を含めたり、被写体を引き立たせたりしたいとき、そんな時に頼れるレンズです。

結局のところ、このレンズはほぼ常に私のカメラに取り付けられています。それはただこのレンズが新しいからかもしれません。しかし私はそれ以上に、このレンズの素晴らしさこそがその理由だと思っています。

ABOUT

ディーン・シャーウッド

シネマトグラファー兼フォトグラファー

ロンドン北部を拠点に活動する写真家/シネマトグラファー。
一見シンプルに見えるものも、視覚的に印象的な作品とすること、予算に関係なく美しい画を作ることをポリシーとする。映像制作はドキュメンタリーからミュージックビデオまでジャンルを問わない。スチル撮影については音楽業界での活動を中心に、世界中を旅しながらアルバム・シングルのカバーやツアー写真、グッズに至るまで撮影。幅広く活躍している。