瞬間を捉え、感性を研ぎ澄ませる
SPORTS
SIGMA 300-600mm F4 DG OS
Impression
by アダム・クリンティエグ|Adam Klingeteg
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今回は、Sigmaが新たに生み出した、これまでにない全く新しい超望遠ズームレンズを使うという素晴らしい機会に恵まれました。どんなレンズなのか、どんな性能を備えているのか、事前にはあまり把握していませんでした。実物を手にした時、まずその大きさとずっしりとした重さに強いインパクトを感じました。ただ、それは300mmから600mm、すべての焦点距離でF4通しを実現するために使用されているガラスの量を考えると当然のことです。しかし、そんなにかさばる感じはしませんでした。隅から隅まで非常にしっかりとしたつくりで、よく作りこまれているという印象を受けました。
Sigma 300-600mm F4 DG OS | Sportsの動きやスイッチの切り換えはすべてとてもスムーズで、安定感がありました。これは私が常にレンズに求める条件のひとつです。往々にして、作りのよいレンズは優れたレンズだと言えます。そして、このレンズも例外ではありませんでした。三脚座の配置は絶妙で、持ち運ぶ際の持ち手としても、手持ち撮影時に重量のバランスを取るのにも最適です。今回は、ほぼすべて手持ちで撮影をしましたが、パワフルな手ブレ補正OS(Optical Stabilizer)機構が搭載されており、問題なく撮影できました。私は三脚を使うのがあまり好きではありません。三脚での撮影は動きを制限される気がするからです。それよりも、私は自由に動き回って、撮る場所やフレーミングを変えながら撮影する方が断然好きです。
今回も、そんな自由なスタイルで撮影に取り組みました。ロケーションはスウェーデンのオーレで、スキー選手のウィリアム・ラーションに被写体になってもらいました。オーレは天気が変わりやすいことで知られており、撮影の日も例外ではありませんでした。山の上では、陽が射したかと思えば雪が降ったり、風速30m/秒の強風が吹き荒れたり、あるいは雨が降ったりと、目まぐるしく変化しました。このレンズの力を試すにはうってつけのシチュエーションでした。
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雪質の良い場所を探しながらスキーを滑らせている時も、シャッターチャンスに素早く対応できるように、私はほぼずっとカメラにレンズを装着し、それを手にしたまま過ごしていましたが、Sigma 300-600mm F4 DG OS | Sportsはこの厳しい天候条件も軽々とクリアしてくれました。必要な時に能力を発揮してくれる頼もしい存在で、まさにアウトドア撮影のためにつくられたレンズといえます。また、大型のレンズフードのおかげで、レンズの前玉は常に完璧にきれいな状態をキープできました。
私は普段、望遠レンズはあまり使用しません。スキーの撮影においてもです。そのため、今回の撮影は全体像を収めるというよりも、ディテールをより強く意識した撮影となり、私にとっては難しくも楽しい挑戦の機会でした。
一歩引いて全体像を収めながら、ターンやトリックの瞬間に素早くズームできるということは、シーン全体を把握しながら、ただ被写体に寄るだけでは見逃してしまうかもしれない、新たな発見をするのに素晴らしい方法です。
高速AFのおかげで、山を滑り降りるスキーヤーのターンの動きも、スキーヤーと併走している場合でも、スキーヤーがカメラに向かってくる時も遠ざかっていく時も、フォーカスがぴたりと決まります。今回の撮影旅行は短い時間でしたが、とても充実したものになりました。このレンズを使ってもっといろいろな撮影を試してみたいと思っています。
私にとって、写真との出会いはすべての歯車がカチッと噛み合うような出来事でした。15年くらい前、学校の仲間たちと一緒にスキー写真の撮影に取り組みはじめたことが出発点でしたが、すぐに「写真表現を通じてなら自分の求めることが何でもできる」と感じるようになりました。自分が見たままの世界を写真で創造し、表現できることに気付いたのです。
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私はすぐに自分の撮影スタイルを見つけ、それ以来、自分のビジョンを信じながら、さまざまなシナリオを試し始めました。撮影スタイルは少しずつ変化してきましたが、基本はほとんど変わっていません──大がかりなファッション撮影でも、アルプスで友人たちと一緒に楽しむスキーの撮影でも。ひとつひとつの瞬間を捉えること、「完璧な瞬間」の合間に訪れる何気ない瞬間を、美しく表現すること。
今の私の生活は、写真を中心に構築されています。様々な撮影プロジェクトを通じて様々な人々と出会い、そうした人々から多くのインスピレーションを得ています。彼らの存在が、自分もさらに上を目指そう、より向上していこうという刺激になっています。それは競争心によるものではなく、ただ単に誰かが(写真に限らず、一般的に)何か並外れたことに取り組んでいる姿を見ると、私ももっと努力して、もっと創造したい、という気持ちにさせられるのです。
Sigma 300-600mm F4 DG OS | Sportsは、スポーツフォトやネイチャーフォトから、クリエイティブな視点での撮影まで、さらに一歩前に(文字通り)踏み出したい、完璧な瞬間を捉えたいと思っている人に最適なレンズです。持ち運び可能なサイズでありながら、300-600mmという超望遠ズーム、そして大口径F4通しである唯一無二のレンズが、新しい撮影手法にトライしたり、今までの撮影をさらに研ぎ澄ませたりする絶好のチャンスを提供してくれるはずです。
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about
アダム・クリンティエグ
フリーランス・フォトグラファー
スウェーデン南部の森林地帯に生まれ、広い世界を探訪したいという思いを常に胸に抱いて育つ。カメラとの出会いによってその夢を実現。12年前からエクストリームスポーツの撮影に携わり、気温マイナス50度のスヴァールバル諸島でのスキーから、西オーストラリア州の40度を超える酷暑の中でのサーフィンまで、極端な気候条件での撮影を数多く手がける。現在はスウェーデンのストックホルム在住。近年は自動車業界を中心にコマーシャルフォトの仕事を多く手がけているが、そのクリエイティブなアプローチはエクストリームスポーツの撮影経験がベースとなっている。ありふれた瞬間の合間に訪れる特別な瞬間を捉え、自然な光の中にフレーミングすることを旨としている。